低線量放射線リスクの科学的根拠を問い直す 低線量被曝プロジェクト

投稿者: | 2004年4月12日

低線量放射線リスクの科学的根拠を問い直す
低線量被曝プロジェクト
文責:上田昌文
doyou82_uedda-2.pdf
 低線量被曝プロジェクトは、ここ数ヶ月をかけて、現行のリスクモデルを根底から見直した画期的な報告書『放射線リスク欧州委員会(ECRR)』2003年勧告 放射線防護のための低線量電離放射線被曝の健康影響』(以下『ECRR』と略記)を読み込んできた。全部で7名のメンバーで、必要な物理学、化学、生物学、統計学、疫学などの基礎知識を随時補強しながら、引用あるいは参照されている原著論文にも必要に応じてあたり、検討を加えてきた。
 その目的は、現在世界中で採用されているICRP(国際放射線防護委員会)が定めた放射線リスクに関する防護基準を批判的に見直すことで、放射線や原子力に対する市民として身につけるべき理解事項と科学上の未確定事項を整理していくことにある。チェルノブイリ原発やセラフィールド再処理工場周辺、あるいは原発労働者にみられる健康被害について、関係諸政府は現在の防護基準を根拠に「線量が低すぎる」とみなし、放射線との因果関係を否定してきたわけだが、これは考えてみれば、「では現実に生じている被害を、科学はいったいどう説明するのか?」という根本的な問題を提起していると言えるのではないか。放射線被曝の人体影響という問題は、科学上の問題として客観的な真理が確定しうるとみなされているが、核・原子力開発は国家が担う高度に政治的な営みである以上、誰が何を意図してどのようにデータを集めどう評価したかということ自体から洗い直さなくては、”科学的・客観的”という言説によってかえって現実を見る目が曇らされてしまうことになりかねない。低線量放射線被曝のリスクを明らかにする上で、科学的知見がいかに用いられてきたかをこれまでの被曝リスクの論争をふまえつつ専門的なレベルで把握し、現実の問題の真の解決に向けた規制や政策的な対応をなしていくのに、リスクに関する研究や議論はどう生かされるべきかを探らなくてはならない。
 『ECRR』読み込みの成果を、1月に行う「土曜講座」で発表する(今号表紙の「お知らせ」を参照のこと)。この講座では、 放射線に関する物理学や生物学の基礎知識を随所に織り込みながら、全体として私たちのプロジェクトで『ECRR』をどう読み解いてきたかを示せるようにしたいと考えている。また、「グループ現代」が制作した映画『ヒバクシャ』(監督・鎌仲ひとみ)のスタッフの方々などにもお声がけしており、低線量被曝に関心がある人々が集う有意義な集会になると思われる。参加を希望される方はぜひ市民科学研究室事務所にご一報ください。■

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です