生命操作プロジェクト&電磁波プロジェクト

投稿者: | 2005年4月12日

生命操作プロジェクト&電磁波プロジェクト
人体発生学の基礎の基礎
文責:上田昌文
doyou83_ueda.pdf
 胎児・子どもの健康リスク問題を考える際に最も基礎になる科学的知見の一つが、人体の発生学です。現在「ベビーコム」ウェブサイトでおこなっている連載に、人体発生の最もラフなアウトラインをどう描けるかを試みた回がありますので、今月はそれを転載し、今後の議論に役立てたいと思います。
●人体発生学の重要性
 一口に子どもの発達といっても、受精から成人になるまでの期間の全体を指すわけですから、それらをすべて克明に追っていくことは大変です。そこには数え切れないほど多くの生化学的あるいは形態的な変化のプロセスが含まれていて、それらがうまく統合し調節されてはじめて、ヒトは健康な発達をとげることになります。ある程度安定した発達段階に入った大人と比べると、子どもには外的な影響を非常に受けやすい時期がいくつも存在するということがあり、それを「子どもに特異的な感受性」とか「脆弱性」という言葉で表現します。
 大人には影響をもたらさない環境中の暴露因子が、子どもの発達段階のどこかで悪い影響をもたらすことがある̶̶いったいそれはどの段階であり、どんな因子をどれくらい暴露することなのか、を探っていく必要があります。そのためにはまず、両親の身体の中で精子や卵子ができる段階から、受精、妊娠、出産、そして新生児や乳児や幼児、さらに学童期から第二次性徴を経て身体と脳が成人の段階に達するまでといった、人体の発生・発達の各段階の主だった特徴を、環境との関わりを念頭におきながら整理してみることが大切です。
 気をつけなければならないのは、各時期で様々な因子に対する感受性や脆弱性が異なること、そしてその影響はすぐに現れるものもあれば、大人になってから現れたり、本人には現れずに次の世代に現れたりすることがある、という点です。
●受精以前の時期
 生殖細胞である卵子と精子はそれぞれ、母親の卵巣と父親の精巣で作られますが、ここには子どもが両親から受け継ぐ遺伝情報(DNA)が含まれています。卵子の中のDNAと精子の中のDNAのユニークな組み合わせによって、世界で唯一その子ども自身しか持たない固有の遺伝情報が与えられるのです。もしこの生殖細胞が環境因子によってなんらかのダメージを受けるとすれば、それは親の側の生殖の障害として現れることもありますし(たとえば不妊)、子孫の方の健康の障害として現れることもあります。
 精子や卵子の元になる始原生殖細胞は、妊娠5週頃にある胎児の男の子や女の子の中に現れますが、この後男の子と女の子では大きな違いがあるのです。精子や卵子が、それ以外の体細胞が持っている染色体の数(人間なら46本)のちょうど半分のセット(23本)になっていることはご存知だと思いますが、半数セットを作るには減数分裂という、立て続けに2回の分裂を行う特別な細胞分裂が起きなくてはなりません。男の子では思春期になると初めて減数分裂が起こり精子が生産されるようになり、以後そうした分裂はずっと持続的に行われることになります(1日に約10億個の精子が生産される)。一方女の子では、減数分裂のうちの1回目の分裂を終えた状態の細胞を100万~200万個持ったまま女児として誕生します。思春期を迎えて初めて分裂を再開し卵子となるのですが、大多数の細胞は退化してしまって残るのはわずか約4万個。女性が一生のうちに排卵する卵子は、さらにそのうちたった400個ほどにすぎません。
 この卵子と精子のでき方の違いのために、受精に至る1個の精子と1個の卵子を比べれば、環境中の汚染物質などの悪影響は卵子の方に出やすいと言えるのかもしれません。
●受精卵から胎児まで
 精子と卵子が受精してできた受精卵は1個の細胞ですが、それがすごい勢いで分裂を繰り返し、いろいろな器官や組織になっていきます。非常に複雑でありながら実に見事に統制のとれたプロセスで、全体としてずんずんと大きくなりながらヒトの身体が出来上がってきます。妊娠中のお母さんの子宮の中で1個の胚が胎児にまで成長し出産を迎えるまでの時期は、以下に述べるように、環境中の因子に対してとりわけ影響を受けやすいと考えられるのです。
 この時期を大雑把に3つに分けてみてみましょう。一つは受精後2週目くらいまでの「受精卵期」、次は3週目から7週目くらいまでの「胎芽期」、そして8週目あたりから38週目までの「胎児期」です。(「妊娠の○週目」という言い方で使われる胎齢は最終月経の初日から数える月経齢です。受精を起点にして数える受精齢は、月経齢から2週間を引いて数えなければなりません。)
◆受精卵期
 まず、「受精卵期」。受精は卵管内で行われますが、受精卵はそのあと子宮腔内をおりていき、子宮内膜に着床するまで5、6日かかります。着床できた時点で妊娠が成立したことになります。受精卵は子宮内膜に穴をあけて潜り込み、子宮の組織も受精卵を被膜で覆うので、保護と固定が強化されていきます。着床した受精卵はさらに分裂を繰り返しながら、胎児のもとになる「胎芽」へと変化していきます。この時期にさらされた環境因子による悪影響は多くの場合、自然流産という形で現れると考えられます。
◆胎芽期
 次に「胎芽期」。この時期に多くの器官の原型が形成されますが、外的因子のダメージを特に受けやすい時期と言えます。この時期でほぼ完成される器官もありますが、多くは「胎児期」に相当する12週から16週目あたりで完成し、さらに脳などの中枢神経や生殖器官など思春期に至ってやっと完成するものもあります(歯も分かりやすい例ですね)。この時期にダメージを受ければ胎芽が死んでしまう(すなわち流産する)こともありますが、器官の原型が作られる時期だけに、いわゆる先天異常・奇形として現れてくることにもなるのです。ただしこれはあくまで大まかな話であり、たとえば耳が形成されるのは4週目から16週目あたりにかけてですが、耳の機能(聴覚機能)ができあがるのはもっと後の26週目あたりです。ですから耳の機能障害は何もこの胎芽期に受けるダメージだけで決まるとは言い切れません。
 タイミングが大きな意味を持つことは、妊娠初期に特に気をつけなければならない風疹の例でみると分かりやすいでしょう。妊娠中の女性が風疹ウイルスに感染し、それが胎芽・胎児へと移行すると、受精後9週目以前であれば、難聴に伴って先天性心疾患(心臓の奇形)などいくつかの奇形が現れることがあります。しかし11週目から14週目にかけての感染なら、難聴は起こっても心臓の奇形は普通現れませんし、14種目以降ならいかなる奇形も生じない、と言われています。またよく知られた例として、サリドマイド事件があります。妊娠初期のつわり防止薬として服用されたサリドマイドによって、”あざらし肢症”と呼ばれる四肢(手足)、とくに上肢(手)の長骨が欠如した特徴的な奇形をもった子どもがたくさん生まれました。胎芽がサリドマイドに最も敏感になるのは最終月経から34~50日(受精後20日~36日)であり、まさにこの時期は胎児の身体の原型が刻々と順序立った段階をへて作られる時期なのです。そのため、サリドマイド服用時期のちょっとした違いによって、障害を受けやすい部位、つまり奇形の発生する部位が異なってくることになったのです。
◆胎児期
 そして「胎児期」。外形的な変化は「胎芽期」が著しいのですが、この「胎児期」は小さな赤ちゃんの形をした胎児が子宮の中でずんずんと大きくなる時期だと言えるでしょう。胎盤が形成されるのもこの時期です(妊娠2ヶ月末に始まり妊娠4ヶ月頃すなわち受精後13週あたりに完成する)。胎児にとって、命綱といえるものが胎児のへその緒の先にある胎盤ですが、胎児は胎盤を通して母親から酸素や栄養をもらい、老廃物や二酸化炭素を母親に戻しています。さらに胎盤は胎児を守るために、母親の血液に含まれる有害な物質をシャットアウトするフィルターの働きまでします(胎盤血液関門)。しかし、胎児性水俣病やエイズ、先天梅毒の例からわかるように、ウイルスやある種の化学物質はそれを通過してしまうのです。それにこのバリアー(ほかにも脳の中にできる脳血液関門もあります)は、この時期になって徐々に出来上がってくることを忘れてはなりません。胎児期にさらされた環境因子による悪影響は、低体重児、未熟児、妊娠合併症、新生児死亡となって現れることがあります。奇形ではなく発育不全や機能的な障害がもたらされることが多いのです。
●赤ちゃんから思春期まで
 いくつかの器官は、新生児として誕生した後にも引き続いて形成されます。一番顕著なのは脳神経系でしょう。3歳ごろまでに爆発的な勢いで神経細胞が盛んに突起を出してシナプスを形成します。脳の80%ほどはその頃までに出来上がると言われていますが、完成には大人になるまでの長い時間が必要です。
 また免疫系も出生時には未完成です。胎児期のはじめに免疫の働きにとってなくてはならない器官が作られ、胎児期後期には、母親を介して食物やダニなど環境中の抗原に反応するしくみが作られます。そして生まれてまもない時期に環境中の抗原(食物も含む)に出会って、免疫系が発達していくのです。最終的に出来上がるのは思春期になって性ホルモンの分泌が始まってからです。したがって、新生児や幼児の時期に免疫系の発達が乱されると、たとえばアレルギーや喘息の体質になったりすることが考えられるのです。
 そしてもちろん、思春期に起こる第二次性徴の変化があります。環境ホルモンの中には、この時期に確立されるべき性ホルモンの正常な働き方を乱してしまう疑いがもたれているものがあります。女児の初経が早期化していることや、統計数字となっては出てきにくい、たとえば月経に何らかの異常が認められるケースが増えているといった兆候があるのであれば、これまで述べてきた「子どもの感受性」の考え方に即して、そうした事態をもっと憂慮すべきではないかと思います。■

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