携帯電話電磁波の安全性に関する動向:2013年のレビュー
J.M.モスコヴィッチ
翻訳:上田昌文(NPO法人市民科学研究室)
pdfはこちらから→csijnewsletter_023_2014_ueda_20140227
2013年は携帯電話や無線周波数の電磁波についていかなる健康リスクがあるのかを探る研究や、それに関連してどんな政策が打ち出されたのかという点で、重要な進展がみられる年となった。主だった研究と政策には次のものがある。
・携帯電話やコードレス電話を25年以上使用することと脳腫瘍のリスクが3倍になることの相関が見出された。
・10年以上携帯電話を使用した女性は、聴神経腫瘍、すなわち脳と耳を結ぶ神経に腫瘍を発症する率が2倍半になる可能性が高いこと。
・第4世代携帯電話であるLTE(訳注1)に30分間曝露することでヒトの脳がどちらの側において活性の変化が生じること。
・血液の鉛濃度がわずかに高めである子どもでは、携帯電話を使用している子どもとそうでない子どもで比較すると、使用している子どもの方が注意欠陥多動性障害(ADHD)を発症するリスクが高くなることが判明した。携帯電話累積使用量からADHDの予測が可能である。
・17歳の青少年を対象に携帯電話電磁波の曝露について何らかの公的な規制を設けることに、米国連邦通信委員会(FCC)が関与しなければならないことになった。
・米国小児科学会はFCCに書簡を提出し、携帯電話やその他の無線機器から放射される電磁波から子どもの健康を守り安心して暮らしていくための規制を採用することを求めた。消費者が実際に携帯電話を購入する際に自身でしっかりと判断して意思決定できるよう、十分な情報を提供することもその一つである。
・米国政府は、 FCCの議長に代表に、携帯電話業界の元チーフロビイストであるトム•ウィーラーを任命したが、そのことで人々の間には、現在採用されている携帯電話電磁波に関する時代遅れで不十分な規制が、もっと強められるべきなのにFCCがそれをやらないのではないか、という懸念が高まってきている。
・ 471ページから成る世界保健機関(WHO)の報告書(※訳注2)が公表され、高周波とりわけ携帯電話からの電磁波がガンを引き起こすことについて、ヒトと実験動物の両方で現時点において「限定的ではあるもののそれを示す証拠が得られている」と結論付けた。
・欧州環境庁は報告書を発行して、携帯電話電磁波のために、脳や唾液腺の腫瘍のリスクを最も大きく被るだろう子どもや若年層に対して、その曝露を減らすよう働きかけることを各国政府に求めている。報告書では以下のことを推奨している。テキストメッセージ(メール)を主とすること、ハンズフリーセットの使用、(電磁波曝露を低減できるよう)デザインを改良すること。政府は現在の曝露規制値を見直す必要があり、携帯電話が持つ潜在的なリスクについて知らせるために効果的なラベリングや警告表示をすべきこと。「携帯電話や基地局の健康影響に関する緊急に必要とされる研究」への助成を行うべきこと。
・12名の保健分野の専門家が、現在の高周波の安全基準は時代遅れであり、生物影響に関する最近の文献に基づいていないため、より厳格な安全基準を採用するよう政府に求めている。Wi-Fiを公立学校や公共の場では禁止することを勧めている。
・ロサンゼルス統一学校区では、保健分野の専門家や米国小児科学会からの反対にもかかわらず、すべての教室でのWi-Fiをインストールして、ワイヤレスタブレットをすべての学生を提供するために 5億ドルの事業計画を採択した。
・ベルギーでは、子どもの携帯電話が禁止され、携帯電話端末を販売する際にはすべての端末の各々の比吸収率(SAR)データを提示して、顧客がより低いSARを持つ機器を選択できようにすること、そして適度な使用にとどめることやイヤホンを着用するように注意を促すことが求められるようになった。
・フランスの食品・環境•労働衛生庁は、携帯電話電磁波への曝露を減らすよう一般公衆への警告を発している。
【続きは上記pdfファイルをお読みください】