長崎県五島列島赤島活性化プロジェクト

投稿者: | 2018年3月21日

長崎県五島列島赤島活性化プロジェクト
~ 雨まちづくりで目指す持続可能な離島振興 ~

笠井 利浩(福井工業大学)

1.はじめに

長崎県五島市赤島には、水道施設のみならず井戸や河川等の生活に利用できる一般的な淡水源が無く、長年雨水を使った生活が営まれてきた。しかしながら、近年問題となっているPM2.5等の大気汚染による貯留雨水の水質悪化の他、水量の面からも生活用水の確保が大きな問題となっている。

福井工業大学笠井研究室では、同大学デザイン学科近藤研究室と共働で、2017年度から「赤島活性化プロジェクト」を開始した。このプロジェクトでは、前述の生活用水問題を解決すべく、また国内では貴重な全生活用水を雨水に依存する雨水活用事例として赤島を取り上げ、赤島を舞台に雨水を水源とした小規模給水システムの構築を目指す。また本プロジェクトは、島民の生活用水に対する安心を満たすだけではなく、島の人口増加や経済活動に関する問題緩和をも目指すものである。

離島にとっての最大の問題は、島民減少による無人島化であり、そのためにはIターン者、特に若い年齢層の移住が望まれる。島に安心して使える給水システムが実現することで様々な施設等の営業が可能となり、現在皆無である島内における経済活動が可能となる。さらに、赤島の特色である雨水生活のブランディング化を行い、離島赤島が抱える持続可能な問題解決の糸口を探る。

本報では、2017年度から3ヶ年計画で始まった赤島活性化プロジェクトの概要紹介と2017年8月に、福井工業大学の教員と学生計8名が3週間をかけて赤島で実施した今年度の活動成果を紹介する。

2.赤島の概要とその魅力

赤島は、福江島にある福江港から南南東へ約13kmの海上に浮かぶ二次離島であり、面積0.52km2、最高点54mの東京ディズニーランド程の大きさの小火山島である(図1および図2)。島内には商店の他、自販機も無く、商品の購入は一切できない。よって島民は、渡海船に乗って福江島のスーパーなどで生活に必要な物資や食糧の調達を行っている。赤島の一番の魅力は豊かな自然と透き通った海(写真1)であるが、その他に島内にあまり物が無いことも挙げられ、普段物資やサービスに溢れた生活をしている現代人にとって、これも大きな魅力の一つである。さらに島内には光害の源となる光源が少ないことや、清浄な大気に恵まれていることから、夏の晴れた日には毎夜天の川が観察できる(写真2)。

また、赤島の横には二つの無人島(板部島、小板部島)があり、これらは赤島自治会の所有であることから周辺海域は伊勢エビ等の漁場となっており、夏の活動期間中には島民から獲れたての伊勢エビの他、ハイビスカスが添えられたお刺身の差し入れを何度も頂いた(写真3,4)。また、この島では「無人島生活」のテレビ番組のロケも行われており、島に上陸すると人の手が入らない自然が残っている(図2および写真5,6)。

一方インフラ面では、携帯電話はほぼ島内全域で繋がり、インターネットは場所によっては不安定ではあるもののLTE(モバイル通信向け高速通信:4G回線の一種)が利用可能である。電力は海底ケーブルで福江島から供給されているため、電気料金さえ支払えば不自由なく利用可能である。またガスは、プロパンガスが渡海船(朝夕2便/日)で運搬して供給されている。しかしながら水道施設は無く、また地下水源や湧水等の一般的な淡水源も無いことから、島内では全生活用水を雨水に頼った生活が昔から営まれている。現在、島内には18人、13世帯と飼い犬1匹(写真7)、猫十数匹が暮らし、その全戸に数~10m3規模の雨水貯留槽が備えられている(写真8)。

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