土のバーチャル博物館 その4 青森市森林博物館は懐かしい建物

投稿者: | 2005年4月4日

森 元之
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 青森市森林博物館(注1)は青森駅西口から徒歩 10分、駅裏に広がる静かな住宅地域の一角にあります。この博物館の大きな特徴は、建物自体が歴史的価値のある建物ということです。昭和 53年に青森営林局庁舎が新築されるのを機会に、旧庁舎を転用する計画が進められ昭和57年に開館したそうです。その旧庁舎は明治 41年に建てられた青森県産のヒバ材を主に利用したルネッサンス式 2階建ての木造建築です。外観は壁面の木の表面が白く塗装され、また屋根部分は深い緑色で統一されています。
 道路から入って植物の植えられた前庭から眺めると、左右に長く伸びる建物の、中央に玄関があり、また左右の角部屋部分は、すこし前面に飛び出した構造になっています。私が子供のころ通った小学校もやはり明治時代に建てられた木造の校舎で構造も似ていたので非常に親近感を覚えました。
■ぬくもりに満ちた展示内容
 第一展示室「森と仲間たち」では木の細部構造や仕組みの説明、第二展示室「木と暮らし」ではお椀やしゃもじ、まげわっぱなどの生活木製品が飾ってありました。また現物サイズで部屋が再現されその断面構造を見せながら、どのような木がどの部分に使われているか示していました。第三展示室「雪とスキー」では明治時代に日本に近代的スキーが導入されて以来のそれぞれの時代のスキーや金具などの現物が並べられています。第四展示室「青森とヒバ」では青森地域のヒバとその利用法の詳細が、また第五展示室「遊びと発見」では木製のおもちゃが現物展示されています。
 第六展示室「森を育てる」ではかつて盛んだった山仕事のときに使われていた幾種類もの金鎚やのこぎりなどの道具類、作業着などが飾られていました。中でも面白かったのは、二畳ほどの大きな立体模型があり、装置のスイッチを入れると、山で木を切り出し、それをワイヤーで吊り上げて集積場所に集め運び出すまでの一連の過程を電動装置の現物の動きの中で見ることできます。アニメや CG合成映像になれた眼で見ると、むしろこのような展示のほうがとても新鮮に感じられました。
 このほかに特別展示室がありました。そこは旧営林局長室で、映画「八甲田山」のロケにも使われた部屋だそうです。中にある大きな会議用のテーブルには、旧青森営林局が管轄していた地域の詳細が描かれていましたが、大きな地図はまさに圧巻でした。
■外観や展示空間が与える雰囲気の重要性
 最初に書いたような経緯の建造物なので内部の廊下や壁面なども全て木材です。展示物も木材関係の現物が多いのですが、表示に使われるパネル、展示物を支える架台などにもふんだんに材木が使われていて、この空間にいるだけでゆったりした気分になれました。個別の展示方法などに関しては最近の科学館のような目新しさは少なく、少々古い印象を持ちました。展示手法の学問的研究や実践もどんどん変化していますから、おそらく開館当時からほとんど変わっていないであろうと思われる青森市森林博物館の内部の展示スタイルに古い印象を持ったことは仕方のない部分もあるでしょう。
 しかし、同時に発見したのは、外観や展示空間自体が来訪者に与える印象・感覚というのも非常に大切なことだということです。今全国にある科学館や博物館・美術館というのは鉄筋コンクリートの建物がほとんどでしょう。そして多くの場合、そうした「箱物」と内部で展示される内容が切り離される関係にあります。それは前回紹介した三内丸山遺跡でも同様で、エントランス部分にあたる「縄文の丘 三内まほろばパーク 縄文時遊館」も縄文時代とは対極にあるようなモダンな構造物でした。しかしもし土に関する展示をするのなら、その箱物である建物自体も土のぬくもりなどを感じさせるのが理想的だろうと感じました。建物自体への干渉が無理なら、せめて展示室の内壁、展示室を結ぶ廊下、玄関ホールなどにも土をふんだんに使った空間構築ができればいいな、と感じました。
 次回はみちのく北方漁船博物館を紹介します。
注1
http://www.city.aomori.aomori.jp/koho/ksi/mp013.htmlなど。
参考文献 :青森市森林博物館のパンフレット
(市民科学第1号 2005年4・5月)

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