「酵母であそび、酵母で学ぶ」第8回 実験!酵母の育て方比べ

投稿者: | 2005年4月4日

大塚典子(グラフィックデザイナー)
pdfはcsij01_otuka_08.pdf
 寒い時期の実験で、なかなか発酵がうまくいかず四苦八苦。しかも素人の家庭環境では完全な実験ではありませんが、ずっと気になっていた酵母の性質を実験してみました。
■酵母の育て方で、どう違う?
 以前、酵母の性質で「酸素があるときと、ないときでは酵母の働きが違う」ということが分
かりました。
 酸素がないとき酵母は、糖分をアルコールに分解する「発酵系代謝」をしています。酸素があるとき酵母は、どんどん出芽増殖して数を増やす「呼吸系代謝」をしています。お酒を作るときはもちろんアルコール発酵。ではパンは? パンに必要なのは、発酵力の強い酵母。酵母の数も多く必要なのでは?。
 そこで、アルコール発酵させた酵母だけではなく、呼吸系代謝をした酵母でパンを作ってみたら違いがでるかな?という実験をしてみました。
■実験
[準備]
○各50g ずつレーズンの入った瓶4 本。
○それぞれ水150cc と砂糖大さじ1 を入れる。
○5日間、同じ環境で育てる。
[酵母を育てる環境]
A)ずっと瓶の蓋を閉めて育てる。
B)2日間瓶の蓋を閉めて育てるが、3日目から蓋を外して布をかぶせ、空気が通るようにして育てる。
C)ずっと瓶に布をかぶせて、空気が通るようにして育てる。
D)2日間瓶に布をかぶせて、空気が通るようにして育てるが、3日目から蓋を閉めて空気を遮断して育てる。
 この4種類の酵母を同時に育ててみます。果たして違いは出るのでしょうか? それよりも、ちゃんと育てられるのかな?!
■それぞれの観察
[1 日目]
 レーズンの周りにあわが付いているが、変化なし。
[2 日目]
 少しレーズンが浮いてくる。水分の中間くらいの微妙な位置にぷかぷか。どれも同じくらい。
[3 日目]
 もう少し上にレーズンが浮いてくる。あわも少し出てきた。ここで、(B)は蓋を取り布をかぶせ空気を通し、(D)は布を取り蓋を閉める。
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★ここで、問題が★
 何度か同じ実験をしてみたのですが、途中で、カビが出てしまうものがありました。必ず(C)と(D)です。最初の実験を始めたばかりの時期に、常に空気に触れられる状態にすると、酵母の勢力が強くなる前に他の雑菌が繁殖してしまうようです。カビを取り除けば、その後はちゃんと発酵しますが、それだけリスクが高いのか。というわけで比較にならないので、ここからかびてしまった(C)と(D)は抜かし、(A)と(B)のみ実験を続けます。
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[4 日目]
 あわがたくさん出て、発酵してきた。あわに違いがある。
[5 日目] 完成。
■生地をつくって比べてみる
[分量]※共通
小麦粉200g、塩4g、砂糖10g、酵母液40ml、水80ml
・全部をこね(5 分)、発酵(6 時間)
 生地のふくらみ具合は、(B)のほうが力が強いと思う。気泡が縦に伸びている。
・型に入れて焼き(100℃ 10 分→ 180℃ 20 分)
 焼いてみると、残念ながらどちらも同じくらい良くふくらみました(涙)。もっと違いが出るかなあと思っていましたが、家庭環境での実験では、それほど差が出なかったようです。残念! 味は、どちらも美味しく頂きました。
■まとめ
 全てはうまくいきませんでしたが、確かに空気がある場合とない場合では、発酵の様子が違うことが分かりました。途中カビてしまいましたが、その後カビを取ったあとの(C)と(D)は、空気があってもちゃんと発酵(呼吸代謝)して、見事にパンになりました。(少しふくらみが悪かったですが、カビのせい?)
 今回は差をつけられずハッキリとした結果が出なくて残念でしたが、もしかしたら(A)のアルコール発酵の酵母よりも、(B)のように呼吸代謝も取り入れたほうがより強い酵母になったのでは?と感じました。断言はできませんが、実体験で判断できるように、またチャレンジしてみたいと思います。
(市民科学第1号 2005年4・5月)

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