「酵母であそび、酵母で学ぶ」第7回 酵母の「香り」

投稿者: | 2005年2月4日

大塚典子(グラフィックデザイナー)
pdf版はdoyou_otuka_07.pdf
 あけましておめでとうございます。大塚です。
 あっ、もう2 月号だったんだっけ?! タイムリーじゃなくてすみません。先月言えば良かった!
 今年も酵母のパン作りを楽しみながら勉強していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
■季節を味わう楽しみ
 さて、この冬の楽しみといえば「柚子酵母」。もう皆さんもご存知の通り、酵母は色々なエサ(食べるもの)を変えて、おこせるわけですが(一部、小麦粉を溶かしてしまうエサもありますのでご注意! 詳しくは前号をご参照下さい)、よく使われるのがレーズン。これは季節を問わず、どこででも手にいれられることが、人気の理由のようです。でも、季節によって出回る果物も変わりますよね。その旬を酵母パンで味わうのもオツなもの。私は酵母に出会ってから、季節がめぐり来るのが楽しみになりました。
 春は何といっても、イチゴ。すごく香りが強くて「イチゴー!」と主張します。色もほんのりピンク色になって、イチゴのつぶつぶも楽しい食感。まさに乙女味! っていう感じです。夏ミカンやはっさくなどの柑橘類も充実します。パンにするとあまり主張はないけれど、グレープフルーツは苦味が残って、爽やかな味わい。そして、何と桜の花でも酵母がおこせます。桜の種類によっては香りがパンに残るものも……。「香りが残るのは八重桜だ」という噂を聞いて、あちこちの公園に桜を盗みに行ったものの、結果、できた桜酵母パンの香りは無臭……。どうやら桜の葉っぱも入れるのが香りをつける秘けつだ、とわかったころには、もう夏でした。残念……!
 夏はビワや桃、梅、メロン、さくらんぼ、スイカ……好きなものばかりだから酵母にするのにはもったいなくて、そのまま食べてしまうことのほうが多いけど、桃の酵母はパンにすると意外に香りが残って、上品な桃酵母パンになります。ビワはあまり香りが残らなかったかな? そういえば普通に食べても大人しい味ですものね。ハーブでも酵母をおこせます。レモンバームで酵母をおこしたら、本当にレモンの香りがした! 色もなぜか黄色……葉っぱなのに、どうして?!
 秋なら、なし、ぶどう、柿、リンゴ、みかん……。果物の時は香りが強いのに、意外にパンにすると香りはほんのり。でも、八百屋さんで安く売っていたりして、遠慮なく酵母にできます。パンにするなら、ちょっと食べそびれて古くなっちゃった果物でも充分。
 冬はみかん、意外なところでは大根。最初に書いた柚子は冬の酵母パンの代表として、毎年友人たちに楽しみにされています。香りを出すために皮を入れるのですが、そのままだと苦味が相当強く出てしまうので、皮だけ細かく刻んでジャム状にしたものを一緒にエサとして入れます。柚子の香りが口中に広がって、幸せな冬の味……。大根の酵母パンは、そのまま、本当に大根の味がします(笑)。面白いので色々な人に配ると「切り干し大根の味がした」とか「たくあんの味がした」とか……実は、意外に好評です。
■どうして、香りが違うの?
 こんな風に、季節によって色々な酵母パンを楽しんでいるのですが、どうして酵母によって香りが違うのでしょうか?
 酵母は発酵する時、エサになるものの糖類やアミノ酸、核酸類を食べて、炭酸ガス、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、有機酸類など数百かそれ以上の代謝物質を生成します(特に香りの良さを引き出すものはエステル類で、その生産量は酵母の違いや育った環境によっても変わるそう)。その代謝によって生まれたものが酵母の香りです。代謝と書くとわかりにくいですが、別の言い方をするなら「体臭」。……う~ん、ちょっと汗臭そうですが、その酵母の体臭が良い香りだったので、美味しいお酒やパンが生まれたのでしょう。そういえばブタ肉や牛肉、トリ肉は、同じ肉なのに味も香りも違いますね。酵母もそれと同じようです。育った環境、食べたエサによって香り(体臭)が変わる。だからパンも、酵母によって味わいが変わるのですね。
 今度は何で酵母をおこそうかな?  どんな味になるのかしら?  色々とチャレンジしてみたくなります。柚子を超える美味しい酵母に出会えるのが楽しみです。
(どよう便り 84号 2005年2月)

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