食事と油

投稿者: | 2005年2月4日

食の総合科学プロジェクト
小島玲子
pdf版はfood_005.pdf
 プロジェクトで脂肪について勉強してからは、毎日の食生活での油とのつきあい方がとても難しいと感じています。ひとことで”あぶら”と言っても “油”と”脂”と言い分けることができ、動物性と植物性に分類され、脂肪を構成している脂肪酸の種類には細かい分類があります。脂肪酸は構造により、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸はさらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。この多価不飽和脂肪酸の一部が必須脂肪酸となります。脂肪は高エネルギーのため食生活には欠かすことのできない効率的なエネルギー源であり、もっとも重要な役割は人間が体内でつくることができない必須脂肪酸の供給源としてのはたらきです。しかし、脂肪は高エネルギーのため肥満の原因となり、ダイエットをしている人には目の敵にされ、食生活の変化に伴い脂肪摂取量が増えたことと心疾患やある種のがんによる死亡率の増加がかなり平行していることから、脂肪は健康に悪いというイメージが蔓延してしまっています。その一方で、脂肪は食事による摂取だけではなく飲み物やお菓子などから摂取する機会が多く、口に入れたら溶けるまろやかな口当たりなどの特性が好まれ、嗜好面でも欠かすことができません。
 では私たちは食事の中でどのような油をどのような食品からどれくらい摂っているのでしょう? 食事モデルを通してみていきたいと思います。朝食では食パンにマーガリンを塗ってトーストを焼き、インスタントのコーンスープを飲みました。昼食は外食のランチセットでスパゲッティカルボナーラ、ドレッシングのかかったサラダとコーヒー。夕食はご飯と味噌汁にお惣菜屋さんで買ってきた酢豚と野菜のごま和えを食べたとします。この一日の食事モデルでは摂取したエネルギーは2376kcal、脂肪は120gになります。脂質のエネルギー比は25%が理想とされていますが、この食事モデルでは45%にも上ります。食事の中ではマーガリンやドレッシングなどわかりやすい”見える油”と肉、卵、乳製品など食品にもともと含まれている”見えない油”から脂肪を摂取しています。食事モデルでは”見える油”からは29%、”見えない油”からは79%の割合で油を摂取しています、このことからも私たちは食事の中で知らないうちに油をたくさん摂取してしまっていることがわかります。
 次に日本の伝統的な食事をしていて、少しずつサラダ油が家庭で食べられ始めた40年前の食事モデルを用いて現在の食事と比較したいと思います。朝食ではご飯、味噌汁、焼き魚、野菜の煮物を食べ、昼食は今のように外食はほとんどなく、お弁当でご飯(このころのお弁当はご飯が多く占めていたと聞きました)、卵焼き、おひたし、ウィンナーを食べました。夕食はご飯、貝の味噌汁、刺身、切干大根の煮付け、ドレッシングのかかったサラダを食べたとします。このモデルで一日に摂取したエネルギーは2,614kcal、脂肪は55gになり、脂質エネルギー比は19%です。”見える油”からは11%、”見えない油”からは89%の割合で油を摂取しています。
 この2つの食事モデルから脂肪の摂取量が急激に増えたこと、脂質エネルギー比が高くなったこと、”見える油”からの摂取が増えたことがわかります。次に、脂肪の質、役割を変える脂肪酸の摂取の割合に目を向けて、飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸の摂取割合を比較します。理想の摂取割合は3:3:4とされていますが、現在の食事モデルでは4:1.8:4であり、40年前の食事モデルでは2.8:3.6:3.7です。このように、現在の食事モデルでは脂肪酸の摂取状態が理想かからかけ離れていることがわかります。これには、肉や乳製品の摂取が多く魚介類の摂取量が少なくなったことが影響しています。
 食生活の変化により脂肪の量だけでなく質にまで大きな影響を与えてしまっていることがわかります。さらに健康志向からか低エネルギーの油が普及していますが、これらは中脂肪酸で構成されており、必須脂肪酸であるリノール酸が摂取できなくなってしまいます。複雑に情報が氾濫している中、こうして新しい問題が出てくる可能性もあるのです。単に量だけではなく質にも意識を向け、なおかつ見えないところでいつの間にか摂ってしまっている”脂肪”との上手な付き合い方を食生活の中で見つけ、実行していくことは、なかなか難しそうです。
 油については、いるふぁが発行している雑誌『つぶつぶ』第3号(1月25日発売)で私たち「食の総合科学プロジェクト」が執筆している連載「食べ物はどこから来るの」の第2回「油・脂肪の話(その1)」で調査結果を報告しています。
(どよう便り 84号 2005年2月)

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