ワークショップ「科学技術と社会」 出前報告(2003年1月23日、東工大)

投稿者: | 2003年4月19日

ワークショップ「科学技術と社会」
出前報告(2003年1月23日、東工大)
薮玲子(ワークショップ「科学技術と社会」・マネージャー)
doyou63_yabu.pdf
私たちは科学技術と社会の問題を扱ったワークショップ・プログラムを考案し、出前をしています。このたび正式名称を「ワークショップ”科学技術と社会”」とすることに決定しました。どうぞよろしくお願いします。
●ワークショップ「21世紀の預言」の出前報告
*実施日 2003年1月22日(火)午後4:00~6:30
*対象 東工大環境サークルの学生9名(学部2年生が中心)
*出前者 小林一郎(ファシリテーター)、上田昌文(レクチャー担当)、薮玲子(記録)
*ワークショップ『21世紀の預言』の進め方
①今後100年間で起こりそうな事象、科学的発見、技術的成果等を「預言」する。(・思いついたものをできるだけたくさんポストイットに記入していく。/・グループごとにそれぞれの預言を系統づけて発表する。)
②100年前の「20世紀の預言」(1901年1月2・3日の報知新聞に掲載された)のカード13枚を配り、それを分析する。(・達成度・特徴などをグループごとに話し合い、まとめたものを発表する。)
③100年間の出来事をまとめた映像をみる。(・科学技術、産業、戦争、環境問題についての映像(NHK「世紀を越えて」より)
④最初に出した「21世紀の預言」を分類・評価する。(・横軸に達成度、縦軸に「望ましい・望ましくない」の評価をする。)
⑤まとめ(・20世紀の100年間に関するミニ・レクチャー。/・国や専門家が出している「21世紀予測アンケート結果」の紹介。)
●ワークショップの記録・感想(薮・小林)
・ 9名を2グループに分けて行なった。環境サークルに所属しているまじめな学生たちばかりで、とても熱心で楽しいワークショップができた。
・ 彼らが最初にあげた「21世紀の預言」の内容は、医療の進歩、バリアフリー、ゴミ問題解決、宇宙旅行など。科学技術の進歩を肯定的に捉えているのが印象的だった。理工系の東工大生らしいと思った。
・ 時間的にあまり余裕がなかったので、本来ならワークショップの導入部にアイスブレイクと呼ばれる雰囲気を和らげる時間を設けるのだが、今回はいきなりグループ分けをして、すぐに第1の作業に取りかかった。導入部にもう少し工夫をしていれば、より豊かな発想を導けたかもしれない。
・ 社会の中では、BSE牛の話題、遺伝子治療での失敗続出、原子炉ひび入りのまま運転再開、最先端の武器問題など、さまざまなトピックスが報じられているにも関わらず、これらについて危機感を持っていないように思えた。こうした社会の動向(技術開発動向)に強く興味を持つ環境にいないのではないか。これは、現在の日本の学生の多くに見られる傾向なのかもしれない。
・ 自分たちが書いた「21世紀の預言」について、「達成したら望ましいか、望ましくないか」の判断には意見が分かれたものがあった。たとえば、「クローン人間の人権が認められる」という預言をどう見るか。「クローン人間が生まれるのは望ましくないから、これは望ましくないことだ」とする意見に対して、「実際にはクローン人間が誕生するのは目に見えている。その場合、クローン人間が否定されるより、彼らを認めることのほうが望ましい」という意見が優勢だった・
・ ワークショップは途中の休憩も含めて、2時間30分(150分)かかったが、それでも時間が足りないくらいだった。作業の間にグループ内での議論が盛り上がり、あっという間に時間がたった。
・ 終了後、時間のある人たちと一緒に食事をしたが、その際には、社会や経済の問題も含めて、多くの話がでて、大変に充実した楽しいひとときが持てた。ワークショップの後に懇親会をすることで、ワークショップがさらに深められることを実感した。
●ワークショップに参加した学生さんの感想(要約)
自分たちで書いた「21世紀の預言」の傾向
・ 最初に「21世紀の預言を書いて」といきなり言われて、なかなか思いつかず、もう少し時間がほしいと思いながらも独創性があまりないなあと感じた。100年後は実感がわかず、これまでも「いつか可能になる」と言われているものが多くあがった。
・ 専門分野(地球惑星)の技術革新が多かった。これは自分の分野、技術については知識があるので予想しやすいため。「望ましい未来」が多かったのは、自分の専門分野を肯定的に思いたい気持ちの表れだと思う。
・ 未来予想について傾向はあまり見られなかった。あえて言えば、技術的な進歩ではなく通貨制度がなくなり物々交換になるとか、共通言語ができるというような予想が特徴的。
100年前の予想を分析して
・ 科学技術の恩恵を受けるのは誰か?日本は恩恵を受けているが、受けられない人も多い。
・ 技術が社会全体に広がるにはタイムログがある。
・ 成功するのは限られた人や国だけで、社会全体、全世界的なものは実現が難しい。
・ 自然は偉大だ。自然に影響を与えることは出来ても、コントロールするのは不可能だ。 7
・ 昔発見された技術は100年間で進歩して実現した。
・ 科学技術の特徴として、ある分野に火がつくと連鎖的にその分野が発達する。
・ 達成できたものは、大きく分けて通信技術と移動手段。企業の開発競争が大きい。
・ 実現できなかったものは、世界単位で行なわなければ地益、効果を追求できないもの。たとえば、環境、ごみ、エネルギー問題など。
自分たちの予想を分析して
・ 難しかった。善悪については意見がわかれ、もっとディスカッションしたかった。
・ 生物的なもの、人間に関するものは達成が難しいだろう。宇宙開発は達成できそう。
・ 100年後にはクローンや宇宙開発は進んでいると予想される。
・ 善悪で個人差がでた。科学技術は使い方に善悪がある。両方もっているものもある。
研究者の「21世紀予測アンケート結果」について
・ 何年にどの技術という風に細かく書かれていて驚いた。どの程度実現するのかは疑問。
・ アンケートは第7回ということなので、昔のも読んでみたい。
・ 30年前の予想で現在はどう描かれているのだろうか?
・ 具体的な技術については、非常に楽観的に書かれている気がした。
・ 人間の小型化や脳の操作など、一般人から見ると怪しいビジョンを持っていると思う。
これらは、科学技術の過信からきているのかもしれない。
ワークショップについて
・ 満足度は高い。時間的に少し厳しい気がした。時間を増やすか、どこかを削るかしたほうが、密度が高まったと思う。
・ ちょうどよい満足度。もう少し時間がほしかった。自分の勉強とは違った視点でみることができてよかった。書き込みノートとか、何か残るものを作ったらいいと思う。
その他
・ とても参考になった。私は土木工学を学んでいるが、持続可能な開発、発展はどういう形なのかを考えるきっかけになった。小さな経済活動を即していかない限り持続可能な発展は望めないという考えと、国単位で行なうインフラ整備がまだまだ足りてないという考えが私の中にはある。この2つをどのように融合させていくかが問題だと思う。いろんな意見があると思うが、私はさらに科学技術を駆使し、世界を変えてゆくことが善であると考えている。工学家を目指しているから、科学技術を信じずにはいられない。東工大の学生はみな科学技術に何らかの面で関わっていく人が多いと思うし、誰もが科学技術に対しての不安をもちながらもその道を極めてゆくのではないかと思う。科学技術に対しての問題提議となった。これから私たちの環境サークルで、理工学部の学生が科学技術を考える場を作っていけたらと思う。■

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