【翻訳】 BPA作用メカニズムを考察する: c-Mycの役割

投稿者: | 2016年3月11日

BPA作用メカニズムを考察する: c-Mycの役割

Julia R.Barnett
『環境健康展望』(Environmental Health Perspectives) 123巻12号(2015年12月)より
翻訳: 五島廉輔・五島綾子・上田昌文
原題:Julia R.Barnett
“Examing BPA’s Mechanisms of Action: The Role of c-Myc”
Environmental Health Perspectives VOLUME 123 ISSUE 12 DECEMBER 2015 A304

著者について:Julia R. Barrett
サイエンスライター、編集者。The National Association of Science Writers and the Board of Editors in the Life Sciencesのメンバー。

pdfはこちらから→csijnewsletter_034_goto_03_20160311

ビスフェノールA(Bisphenol A)はヒトや動物を用いたモデル研究により内分泌情報伝達を破壊する能力があることが示され、乳癌を含めた内分泌性疾患の発生における因子であるかもしれないという疑いが高まってきた(文献1)。動物実験の研究はその疑いを支持するように思われる。しかしBPA暴露がヒトの癌化を誘導する正確な分子メカニズムについては十分に解明されていない(文献2,3)。これまでの研究ではBPA暴露による癌の発生の特徴を示す乳房細胞の分子レベルの事象と結びづけていた(文献4)。Environmental Health Perspectives(EHP)のこの号に報告された新しい研究は以前に実証されたメカニズムのさらに上流の遺伝子と関係づけている(文献5)。

BPAはポリカーボネートプラスチック、食物や飲料水の容器、コーティングした紙(例えば感熱紙)を含む多種の生産物に使用されている。BPAは多くの供給源があるので、その暴露はありふれており、そして多くのヒトは体内に低濃度(ナノモル濃度)のBPAを持っている。
しかしながら、ヒトに対するBPAの暴露効果を測定することは困難である。なぜなら比較のための暴露されていないヒトの集団が存在しないからである。またBPAはヒトの体内で一日以内にほとんど排泄され、その半減期は短い(文献7)。その結果、研究者は制限された方法でBPAの細胞レベルでの効果を調べるためにin vitro(試験管内)培養細胞システムに立ち返っていった(文献4)。

これらの研究はBPAが乳房組織を傷つけるメカニズムについて多くの仮説を導いたが、その結論はヒトで測定されたBPA濃度より高い濃度が実験にしばしば用いられるために注意深く考察されてきた(文献1)。in vitro(試験管内)研究の方法で、BPAは適切な場所と時間で作用して下流効果(流れに沿った効果)を誘導する特異な化学伝達物質を通常必要とする情報伝達系を破壊することを示した(文献8)。これらの破壊はシグナルやそれがコントロールする細胞過程(癌に関係する増殖、移動性、発育、プログラム細胞死を含む)を変えるかもしれない(文献8)。
【続きは上記PDFファイルでお読みください】

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