市民科学講 講演記録「監視社会の<現在(いま)>を考える~ビッグデータ、マイナンバー、AI…~」

投稿者: | 2020年9月9日

市民科学講座 実施報告:

監視社会の<現在(いま)>を考える ~ビッグデータ、マイナンバー、AI…~

講師:斎藤貴男さん(ジャーナリスト)

2020年3月13日、市民科学研究室事務所にて

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▶当日の講座全体の概要や斎藤さんのプロフィール・関連著書などについてはこちらのサイトに掲げた報告をご覧ください。

私は最初に学校を出て新聞社に入り、といっても大きな新聞社ではなく、産経新聞系の『日本工業新聞』という産業専門紙で鉄鋼業界担当記者を3年ほどやった。そのあと今をときめく文春砲の『週刊文春』とか、『PRESIDENT』とかで記者や編集者をやって、32歳の時からだいたい30年フリーでやっている。

監視社会の問題に取り組み始めて

この監視の問題というのは確か1998年ごろ、当時講談社が出していた『VIEWS(ビューズ)』という雑誌の編集者に、「斎藤さん、プライバシーものでなんかやってください」という、ちょっと私にとっても前代未聞のいい加減な頼まれ方をされたのが最初である。「何をどうやればいいんですか」というと「それはあんたが考えて」と。それで新聞の検索なんかでプライバシーっていうのをひいてやったところが、まあたいがいは、女子中学生が日記をお母さんに見られて、「プライバシーの侵害よ」って言ったとかね、そういうくだらない話ばっかりだったので、これはどうしたもんかなと思っているところにたまたま知ったのが当時、住基ネット、住民基本台帳ネットワークの話が政府部内で進んでいて、審議会があって、そこには新聞社の人がいっぱい参加していて、最初は反対してたんだけど、いつのまにかみんな賛成になっちゃったよねっていうのを見つけて、そのあたりから取材をし、翌99年には本も書き、ずっと監視社会の時代をおっかけている。

ただまあ、ここ何年かはネットの世界の話が中心になってきているので、私はテクニカルなことはよくわからないが、本質的には当時と基本的に変わっていないと思うのでお話していく。

――その本は、『プライバシー・クライシス』(文春新書)ですね。

それが99年だった。今はもうとにかく新型コロナウイルス。街中がそればかりで、私は花粉症だが、電車の中で咳をすると、皆ににらまれて、くしゃみでもしようもんならリンチにかけられるんじゃないかと街にでるのが怖い。なのでフリーであることをいいことにできるだけ外にでない、取材もしないというような感じがここ何日か続いている。そう思っていたら2,3日前の新聞の投書欄で中学生の男の子がやっぱり花粉症で、その子はマスクをちゃんとしていたようだが、バスに乗っていてくしゃみをしたら、おじさんにつかまってそこ病院だから行って来いと言って降ろされたという。皆さんそれぞれもう感じているかと思うが、単に感染症の問題というよりは――それはそれでもちろん大事だが――、社会の在り方の問題と関わってくるという感じがしている。

折も折というか、これの対策だというか、例えば都営地下鉄線は都庁前の駅にサーモグラフィーを設置して、乗客の顔の温度をはかる。一定の温度以上の人は電車に乗せないということをはじめました。サーモグラフィーは空港ではすでに導入されていたが、それが電車にも広がってきたと、そういう話である。

新型コロナウイルス感染症対策のなかでの監視

中国の対策というのはさらに徹底していて、これは共同通信の配信で2月20日付の新聞で載せていたが、ハイテクで感染を監視するという、中国でこういうことをやっているということである。中国だけではなく、日本でもアメリカでもイギリスでもそうだが、もう街中で監視カメラがついていて、その監視カメラには、これは中国とイギリスが一番進んでいるといわれているが、顔認識システムというのが連動している。つまり、顔写真のデータベースを運用側の、この場合政府だが、ひとりひとりの顔写真をデータベース化しておいて、監視カメラで映った人の顔と瞬時に照合してこれはどこの誰だということが全部わかってしまう。それがわかるので、さらに後で詳しく話すこともあると思うんですけど、スマートフォンなんかでキャッシュレスで買い物すると、両方合わせるとどこでどう動いたか、何を買ったか全部わかる。それを全部データ化して解析して、感染者のいるところに来た人がその後どこに移動したか、そういうのをすべて割り出して濃厚接触を追跡してという報道だった。

例えば、天津市のある百貨店ではビッグデータを使って店の利用者から感染の疑いのある2万人を割り出した。この記事では割り出してどうするのか、それ以上のことはそんなに書いていないが、ああいうあんまり人権が大切にされない国なので、感染の疑いがあるとどういうことになるのかなあと、そういうのが私の関心だ。で、これは中国だからやることが派手だが、似たようなことがすでに韓国でもやっているという報道もあった。
また、日本にしてもこういう話が出ると、たいがい日本の政権を支持するような人たちは、中国だからね、共産党だからね、という話で済ませたがるが、こういうことがやりたいということは、右も左も全然関係ない。中国もやれば韓国もやる。アメリカもやるし当然日本もやりたくてしょうがない。

ちなみに中国では新型コロナ以前からだが、昨年、毎日新聞がおもしろい記事をのっけてまして、今年に入って東京新聞の社説で後追いしていたが、交通違反者暴露台ね、上海だとか、主だった都市のおおきな交差点に暴露台っていうのが立っていて、そこには人の顔写真が時々うつる。どういう人かというと、交通違反をした人である。交通違反といっても、派手な大事故は起こさなくてもちょっと信号無視したとか、そういうのがあると全部それ監視カメラで撮っている。かつ顔認識システムがあって、あと車のナンバーとかがあって、というのを照合して、どこのだれかを特定する。そして捕まればいいんだけれど、捕まらず逃げた場合、そういうところに出して「こいつは交通違反をした悪党だ」ということでさらし者にする。そういうことがすでに行われていて、監視社会ではいまや中国がおそらくイギリスを抜いて世界最先端だと思うが、いま世界中のどこでもそれを目指して頑張っているということになってしまっている。

緊急事態宣言後の報道が政府の管理下におかれるということ

それと今日もインフルエンザ特措法の改正案が可決成立したようだが、これはもともと新型インフルエンザが流行った2009年の後、2012年にできた法律だが、これに新型コロナも追加された。これは内閣総理大臣がそれの感染症を憂いた場合に緊急事態宣言をおこなうと、国民の私権が制限される、場合によっては住宅などの接収を可能にする。で、当然、大規模な集会などは禁止という、かなり人権の制限というのが容易になるという法律である。

これに対する法律家の緊急声明というのがあって、そこにはだいたいこんなことが書いてある。特措法には緊急事態にかかわる特別な仕組みが用意されており、そこでは内閣総理大臣の緊急事態宣言のもとで行政権の権利の集中、市民の自由と人権の幅広い制限など日本国憲法を支える立憲主義の根幹が脅かされかねない危惧があるということと、これが宣言されると公共機関、役所は中央省庁はもちろんのこと、地方自治体だとか、そういうものがすべて指定公共機関ということになり、総理大臣の命令のもとに動き、かつそれぞれの指定公共機関が、市民に対して出す命令にもこれは市民は従わなければいけないということになっているが、その中にNHKも含まれる。なので、緊急事態宣言が行われた後のNHKというのは名実ともに政府の支配下に置かれ報道の自由というのがなくなるということです。もともと民放も追加される予定だったが、とりあえず民放はこの限りではないというふうに今回はなっている。まあ、自民党憲法改正草案が盛り込みたいとしている“緊急事態条項”の先取りというか、既成事実づくりみたいなものだ、という話ですね。

これはいろいろな考え方があるだろうし、この新型コロナウイルスというのがどの程度のものかまだよくわからない段階では、うかつなことは言えないが、例えば致死率90%のものすごい感染症が大流行すると、日本の1億1千万人のうち何千万人か単位で感染しかねないということであれば、ある程度はやむをえないかなという部分もあるが、現時点ではワクチンや特効薬ができていない未知のウイルスであるとはいうものの、一方でWHOはパンデミックとは言いましたけれども、感染力も致死率もそれほどのものではないという言い方をしていた。で、目下のところ公表された数字では世界の感染者数が10万ちょい、死亡者が数千人ということだが、インフルエンザの場合は例年死亡者だけで世界で20万人とか50万人とかで、日本だけでも1万人だから、そっちのほうが大変なんじゃないのと、どっちにしてもわからない。なんせ未知のウイルスなので、うかつなことはいえないけれども、その割にはやってることが大げさだなということ。

日本においては最初はとにかくオリンピックへの影響をおさえようと考えたのだろう。小さく小さく見せることばかりしていたのに、特に例えばロイター通信が“Where is Abe(安倍)?”って書いた。加藤厚労大臣ばかり前面に出して安倍さんは矢面に立たないから、安倍はどこにいるというからかった記事をだしたら、次の日にいきなり学校を休みだといいだした。要するにここぞとばかりにリーダーシップをアピールしはじめた。なので、何がどうなったかますますわからないわけである。単にこのウイルスの流行を奇貨として自分の権限を強化したいだけではないかという疑いも強いので、まったく現在の措置が妥当なのかはわからない。ただこれにともなって監視社会は一気に進むだろうということはいえると思われる。また、オリンピックをやるかどうかはまだわからないが、オリンピックとなればますます監視のきっかけになっていくだろうと思われる。これが新型コロナウイルスをめぐる現状で、どっちにしても監視社会という問題を考える上では今回のことが大きな転機というか、バネになるであろう、それをどう評価するかはそれぞれだが、そういうことだけは間違いないと思う。

監視社会に向けての日本での急激な動き

今度はコロナとは離れるが、もともとこの2010年代~2020年代の日本というのは監視社会化にむけて非常に急な動きがある時期だった。大きなきっかけは昨年10月の消費税増税である。消費税を増税すれば当然景気は悪くなる。消費者は買い控えるし、また、消費税というのは多くの方が誤解しているが、納税義務というのは消費者ではなく年商1千万円以上の事業者にある。で、商品サービスの価格というのは、公共料金ではないから、みんながコストプラス利益プラス消費税という値決めをできるわけじゃない。つまり市場原理の中だから、競争が激しければそんな消費税の分なんか上乗せした値段じゃ売れない。でも納税義務はあるからどうするか。みんな自腹きって納める。だから消費税が上がっていけば、確実に中小零細の商店だとか会社だとかはバタバタ倒産していく、これはもう折り込み済みというか、それは政府では当然視されている。一人ひとりにとっては命の問題だが。

まあそういうなかでポイント還元の対策がとられた。これは政府が補助金を出してキャッシュレスで買い物をすれば、つまりクレジットカードとかデビットカードとか、スマートフォンのQRコードによる、キャッシュレスで買い物をすると、5%のポイントが還元される。実質そうやって買い物をすれば、消費税分、増税分が安くなるとこういう仕組みをとって、ですから、キャッシュレスでの買い物はずいぶん増えてきた。いろんな調査があるが、もともと全体の18%くらいしかキャッシュレスでの買い物はなかったが、いまでは30%、40%、それぐらいになってるといわれる。

もちろん買い物する店にもよるが、相当高い。だからコンビニなんかのレジをのぞくと、ほとんどの人がキャッシュレスで買い物する。でもコンビニの場合はひとつひとつのお店は主に個人商店だが、大手セブンイレブンとかファミリーマートとかはフランチャイズチェーンだからちょっと扱いが違い、ここは2%くらいがポイントである。なので、消費者にとってはそれほどこれで有利になるわけではない。しかも安いものが多いわけだけど。それでもまあそこまでみんな使うようになっている。これをどう考えるか。対策で安くなるんだからいいんじゃないのと素直に考えていられるうちは幸せだがそうとばかりは言えない。そこでちょっと世耕さんの記事を取り上げる。

キャッシュレス化を国策に掲げる目的は何か?

2019年はキャッシュレス元年になるという記事が、『文芸春秋』の去年の2月号に載った。これは当時経済産業大臣だった世耕弘成さんが書いたもの。まあ実際に書いたのは経産省の役人でしょうが、これは確かすでに決まっていた(決まっていたのかな?)、その年の、その記事から10か月くらい先の消費税増税に伴うポイント還元を見越した記事である。その年をキャッシュレス元年にしたい。これはどういうことかというと、買い物のキャッシュレス化を進めるということは実は2017年ごろからの政府の国策であり、経産省がキャッシュレスビジョンというレポートを発表しまして、その中で2015年現在18%程度であった日本のキャッシュレス決済比率、これを2025年大阪万博の年までに40%に引き上げるということを国策としてすでに打ち出していた。で、もともとそれがあったところに消費税が増税で景気への影響を心配されたので、それを使ったという関係になる。なので消費税増税にともなう景気対策を大義名分に国策を進めようということである。ではなんで40%なのかというと、一つの目標に韓国とアメリカを挙げている。韓国はだいたい89%で、非常にキャッシュレス率が高い。アメリカは45%くらい。だからそれに追いつき追い越せということになるが、なんでそんなことをしなければならないのか、世耕さんはいろいろな理由を挙げている。

ひとつは消費者の利便性、それから事業者にとってはキャッシュレスによる買い物を進めさせることによって、消費行動のビッグデータ化をはかりマーケティングに活用することなどを挙げている。この記事を見ていると、そうとう乱暴というか、無茶苦茶な部分があり、ひとつは例えば韓国をお手本にしているというが、韓国は多分お手本にしてはいけない国である。なぜかいうと、もともと韓国がキャッシュレスを進めたのは、1990年代から2000年にかけてのアジア通貨危機、あれで経済がガタガタになり、それを何とかしようということでキャッシュレス化、当時はスマートフォンというよりはクレジットカードが主だったが、進めることによって消費を拡大する。単に現金がクレジットカードになっただけではそうならないが、クレジットカードで物を買うと、そのデータがプリントされた紙を渡されますよね、で、あれに出てくる番号で宝くじをするとか、そういういろんなクレジットカードでものを買うと得するよ、みたいな話を作った。

あとは脱税防止。買い物を記録させることによって脱税を防止する。そういういろんな狙いがあって、キャッシュレスになったが、問題は、確かに89%という世界最高のキャッシュレス大国になったが、同時に韓国は多重債務者大国にもなった。要するにクレジットで買い物をすると現金がなくても買えちゃうから、みんな借金まみれなんです。だいたい韓国の人口は5千万人くらいだが、500万人が多重債務者。もうあまりにもひどいので昨年、文在寅政権は徳政令を施行した。つまり、一定の条件のもとでそれにかなう人は借金を棒引きにしてあげると。一方日本では徳政令は室町時代以来やっていないが、それをやらざるをえなくなってしまう。日頃なんでも韓国を悪党扱いするが、それをわざわざ真似するというおかしなことになっちゃう。

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