市民科学講座実施報告「監視社会の<現在(いま)>を考える~ビッグデータ、マイナンバー、AI…~」

投稿者: | 2020年6月12日

市民科学講座 実施報告:
「監視社会の<現在(いま)>を考える ~ビッグデータ、マイナンバー、AI…~」(講師:斎藤貴男さん)

柿原 泰(市民科学研究室・理事)

2020年3月13日、市民科学講座Aコースとして、ジャーナリストの斎藤貴男さんを講師に迎え、「監視社会の<現在(いま)>を考える」と題する講座を開催しました。監視社会化の問題群は、コロナ禍の現在においても、よりいっそう進行中であり、中国や韓国、台湾などで、感染拡大への対応策としてIT技術を駆使した監視テクノロジーが効果を発揮していると話題に上り(中国に関しては、それより前に、『幸福な監視国家・中国』梶谷懐・高口康太著、NHK出版新書、2019年が評判になりました)、日本の現政権は、コロナ感染ルートを辿れるように接触者を追跡するためのアプリの導入の旗振りをしたり、経済的影響を受けている事業者や人々へ政府の支援金を振り込むためという、とってつけたような口実で、マイナンバーと銀行口座を紐付けることを義務化しようとする動きなども出ています。今国会(第201回)では、講演でも言及されていた、国家戦略特区での「スーパーシティ」法案が成立しています。

講師の斎藤貴男さんは、1990年代後半の住基ネットの問題の取材から、現在のマイナンバーとして実現する以前に何度も浮上しながら反対の声も強く導入がなされてこなかった国民総背番号制に関して、歴史を遡って掘り下げた著書、『プラバイシー・クライシス』(文春新書、1999年)をはじめとして、今回の講演テーマに関連の深い著書を多数、書かれています。そのうち単著のものをいくつかだけでも紹介すると、『小泉改革と監視社会』(岩波ブックレット、2002年)、『安心のファシズム』(岩波新書、2004年)、『住基ネットの「真実」を暴く』(岩波ブックレット、2006年)、『私がケータイを持たない理由』(祥伝社新書、2012年)、『「マイナンバー」が日本を壊す』(集英社インターナショナル、2016年)などがあります。このように、長年この問題に取り組んでおられる斎藤貴男さんに、「監視社会の現在(いま)」を論じていただき、私たちはどのような社会のあり方をのぞむのか、議論をしていきたいと考え、この講座を企画しました。

なお、今回の講座の企画当初は、渋谷にある光塾COMMON CONTACT並木町にて開催する予定にしていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大状況をふまえて、市民研事務所に会場を変更、会場内はごく少人数に限定し、ウェブ会議システムを利用した遠隔参加も併用する形式での開催となりました。講座の案内はこちら 、案内チラシはこちら を参照ください。そのような状況下での開催でしたので、残念ながら、当日は、多くの参加者を得られませんでした。会員のみなさまには、斎藤貴男さんの講演を、市民研のウェブ・ページ動画配信のコーナー で、視聴できる ようになっていますので、ぜひご覧になっていただきたいと思います。講演のアウトラインは、以下のようになっています。

監視社会の<現在(いま)>を考える
ジャーナリスト・斎藤 貴男1.  新コロナウイルス対策に垣間見えるもの
都営地下鉄都庁前駅のサーモグラフィ
中国のウイルス制圧法
インフルエンザ特措法改正→緊急事態条項の創設か

2.  ポイント還元とビッグデータ
消費税増税対策とはいうものの
2025年までにキャッシュレス決済比率40%の国策

3.  ビッグデータの使い道
マーケティングへの活用
信用スコアリング

4.  マスターキーとしてのマイナンバー
消費税増税対策の期間が過ぎたら
改正マイナンバー法の成立で何が変わるか

5.  「ルーラー」は現れるのか
『ホモ・デウス』を著した世界的歴史学者の危惧

6.  Society5・0のゆくえ
内閣府は「経済発展と社会的課題の解決を両立」というのだが
国家戦略特区で「スーパーシティ」構想

7.  ユートピアorディストピア?
安全か自由か
生産性と哲学
人間の尊厳を守るために

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