携帯電磁波と脳腫瘍Part2

投稿者: | 2009年5月2日

写図表あり
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携帯電磁波と脳腫瘍Part2
1 Khunara 2008の報告の要点は?
・携帯電話は便利でなくてはならないことをしばしばであるが、曝露する電磁波は目に見えない。よって、その危険は見過ごされがちだ。
・携帯電話による電磁波曝露は長期にわたる。人体、とりわけ電気的な反応がかかわる組織である脳への影響は、ラジオ、TV、コードレス電話、基地局、送電線、無線LANなど数え切れないほどの多種の電磁波を同時に長期間曝露することと相まって、複合的な影響の一部をなしている。
・悪性の脳腫瘍は大多数の人にとって治る見込みのない死に至る病気である。携帯電話の使用とある種の脳腫瘍の発症との関連性を示す有意な証拠――現在までに、包括的な医学データが8つ、そして長期使用者について調べたメタ分析が1つ得られている――が増加しつつある。
・下記に示したデータを考え合わせるなら、もはや「携帯電話電磁波が脳腫瘍を引き起こすというのは”神話”である」という考えを捨てなければならない、と結論せざるを得ない。米国ではこの問題で個人ならびに集団での訴訟が起きている。そのうちの少なくとも1つはすでに刑事告発がなされている。
・脳腫瘍の潜伏期間は10年から20年に及ぶ。世界的に普及したこの技術が脳腫瘍の発症の増加にどう関係しているかを明確に追跡できる初めての時期が2008年~2012年となる。
・携帯電話の使用による電磁波曝露を低減させ、消費者にこの技術の潜在的な危険性をはっきりと知らせ、賢く安全に使えるようにするために、携帯電話産業も政府も、ただちにとるべき対策がある。それを行わねばならない理由もそれを行えるだけの技術も今日では十分にある。
・アスベストや喫煙以上に広範な危険を公衆に与える恐れがある。というのも、(携帯電話を使用する者)全員が直接に関わる問題であり、特に、幼い子どもを含む若い世代にも直接関わっているからだ。
(以上、レビュー報告「Mobile Phones and Brain Tumours – A Public Health Concern」より訳出)
1 Kundi 2009論文が述べているのは?
この論文で最も注目すべきは、33のピアレビューを経た疫学論文を精査して、いくつもの論文が研究デザイン上の問題を抱えていて、それがために脳腫瘍リスクを低く見積もる結果になっていることを、明確に指摘したことだ。研究デザイン上の問題とは、疫学研究で常に問題になる”バイアス”のこと。
「携帯電話をあてる側と腫瘍との関連」を調べた疫学研究に対しては、その関連が有意に見い出せても、「右側に脳腫瘍ができれば、右側に携帯電話をあてていたと思いがちだ」(大久保千代次・電磁界情報センター所長の言葉、『毎日新聞』4月21日)」といった「リコール(思い出し)バイアス」の欠陥を指摘する声が必ず上がる。
Kundiの考察によれば、第一に、どちら側に携帯端末をあてるかという問題はまず生物学的に意味を持ち得る問題であることをわきまえなばならない。携帯電磁波で脳に吸収されるエネルギーのうちの99%近くが端末をあてた側に吸収される。したがって、携帯端末をどちらの耳にあてるのかという”くせ”をユーザーごとに正確に把握できれば(左ばかり、右ばかり、左右ほぼ均等…など)、それは曝露データとして大きな意味を持つ。第二に、「脳腫瘍患者の中には、自分の病気を携帯のせいにする人もいるし、その関連を否定する人もいる」という事実から類推すれば、どちらの側にあてたかという”思い出し”も、大久保氏が述べるような短絡的な見方は当を得ないことになる。Kundiの分析によれば、症例対照研究の脳腫瘍患者のうちで携帯電話ユーザーの半数以上が、逆のバイアス、つまり「自分の腫瘍は携帯電話のせいではないことを示すために、ふだんあてているのとは逆の側にあてていると、間違って回答していた」し、また脳腫瘍を発症していない対照群の人では、自分のあてる側を取り違えて回答する者は誰もいなかったことが示されている。
もう一つの大きなバイアスは、コードレス電話に関わる。前号で述べた「インターフォン研究」は13カ国で共通のプロトコルで行われた大規模疫学研究(症例対照研究)だが、「非曝露群」(つまり携帯電話を使わないか”通常の使用”以下の頻度でしか使わない人)に分類された人々には、家庭でのコードレス電話を使用する人が含まれていた。言うまでもなくコードレス電話は電波を使っていて、携帯電話と同様のマイクロ波の曝露をもたらす。ところが、一般的に言って、コードレス電話での通話時間の方が携帯電話での通話時間より長くなることが多い。インターフォン研究で「携帯電話使用による脳腫瘍発症率の増加はみられない」あるいは中には「携帯電話使用により脳腫瘍発症率が低下する」という結果さえ出ていたいことの一因は、このコードレス電話使用の見落とにあるのではないか、とKundiは述べている。
さらに、症例群(患者群)からデータを得るときに、どんな方法を用いたかも影響しているのではないかとKundiはみる。携帯電話電磁波との関連が疑われている悪性の神経膠腫や脳腫瘍を患っている人では、患者によって思い出しの能力に差異が見られることがある。また、曝露の見積もりについても、電話でのインタビューで答えてもらった場合(インターフォン研究はこれに相当)と、書面による回答(疫学調査でよくとられる方法)では、患者の答が違ってくることも考えられる、とKundiは指摘する。
現時点で科学的に示唆できるリスクの程度はどれほどだろうか。Kundiは「携帯電話の使用と神経膠腫のリスクとの関連は、タバコの受動喫煙と肺ガンのリスクの関連と同程度のものになるのではないか」とみている。後者はそれなりに強い因果関係があることがわかっているが、携帯電話についても同程度であろうとみなす理由は2つある、とKundiは言う。一つは脳腫瘍の長い潜伏期間。もちろん潜伏期間の長さとリスクの大きさとの関連を説明できる定量的なデータがあるわけではないが、概して、潜伏期が長くなるとリスクは大きくなりがちである。もう一つは、Hardellらが2005年の論文で示した、「一般的に、田舎の方が都会に比べて(電波の通りをよくするために)より強い電磁波が端末から放射されているが、脳腫瘍リスクの高まりもそれに応じている」という研究結果である。

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