私たちのマンションに基地局アンテナが!

投稿者: | 2003年4月9日

私たちのマンションに基地局アンテナが!
中村由美 (アプローズ大泉学園のアンテナ被害を考える会)
■アンテナ建設は突然に
練馬区・西武池袋線大泉学園駅から徒歩5分に私たちが住む都民住宅アプローズ大泉学園があります。埼玉県にほど近く、練馬大根ならぬキャベツ畑があちこちにあり、のどかな環境。駅周辺の商店街、その外側に住宅街が広がり、住みやすい町です。
 この住宅街で、私たちはアプローズ屋上の(株)NTT ドコモの第三世代携帯FOMA基地局の建設と使用に反対する活動を今春3 月から8ヶ月間続けています。建設は実質終了していますが、関東エリア242 局中でこの1 局だけが6月の使用開始の予定がストップした状態が続いています。
 都民住宅とは東京都が優良な賃貸住宅の供給を目的に、都と国がオーナーには建設資金、居住者には家賃の補助を行うファミリー向けの住宅です。アプローズは10 階建て96 世帯に100 人以上の子どもが住んでいます。私は新築時からの約8 年間を問題なく暮らしてきました。
 しかし、今年2 月、子ども達が「いつか竹が大きくなったら、かぐや姫が来るね」と楽しみにしていた、マンション中庭の美しい竹林が突然切り倒され、その数日後には、基地局設置の工事が開始されたことで、暮らしは激変してしまいました。工事の前日に工事下請け会社がマンション掲示板に「工事のお知らせ」を張り出しましたが、具体的な工作物の内容は知らされず、「工事の騒音、振動に対する配慮のみ」の告知でした。さらに、私自身もアンテナの電磁波について無知だったため、対応が遅れてしまいました。半年以上前からの計画段階で知らされていれば、建設以前に問題を解決できたのはないかと思っています。
 97 年に旧郵政省(現在は総務省)が、携帯電話各社に対して「基地局建設については住民と十分に話し合って理解を得るように」などと注意・指導を行った経緯があるにもかかわらず、「オーナーが携帯電話会社と契約すれば、そこに住む人間には説明の義務はない」というのがドコモの主張です。分譲マンションだと住人が所有権者ですので管理組合で事前に話合いがなされ、3 分の2 の賛成が必要です。同じ人間なのに、賃貸生活者だけが電磁波に強い体質だとでも考えられているのでしょうか?
■ドコモの誠意なき対応
  3 月10 日、携帯電話基地局の健康被害について説明を要望しましたが、返答がなく、催促して、4 月8 日にドコモの担当者、工事担当者など4 名の訪問を受けました。しかし、「国の基準を守っているので、健康被害はないと考えている」と繰り返すだけで、子どもへの健康被害が一番心配なのに、なぜ子どもが多いファミリー向けで歯科医院も入っている建物に建設必要するのか?
 税金も投入されている都民住宅に建設することをどう考えているのか? などの質問には答えず、それどころか「対面に立つ11 階建ての都民住宅の方がより多くの電磁波を浴びる。このアプローズの方が影響は少ない」「どうして、東電の電線の撤去は求めないのか?」などの言葉にはびっくり。説明を受けたことで余計に不安が増してしまいました。工事の中止と説明会の開催を強く求めましたが、工事は継続されたばかりか作業の人員も増やされ、進行が早められてしまいました。
 そこで、これまでのいきさつや電磁波の健康被害などについてまとめ、新聞や雑誌の記事を集めた呼びかけ文を作成し、数人の居住者と共にアプローズ全戸を回りました。地域の町会や商店街、病院や教育機関などにも協力をお願いしました。管理組合などの居住者の組織がないアプローズで、初めての居住者ミーティングを開くことができました。
 ドコモは説明会の開催要望を無視し続け、4 月19 日に「戸別説明のみで対応する」という内容のチラシを全戸に配布しました。このドコモの対応は、ここに暮らす人間の心配や憤りを理解しようとする姿勢が全く見られず、アンテナが出来てしまえば反対する居住者も諦めるだろうという時間稼ぎです。また、駅前のドコモショップでは「練馬区内のFOMA 基地局は足りていて、電波状況も良好です」という説明を受け、現時点ではこのアンテナの必要性はないことも分かりました。4 月22 日、アプローズのオーナーに『契約の解除を求める嘆願書』に当時居住していた94 世帯中89 世帯(95%)261 名が署名して提出。また、4 月30 日にはドコモに対する『説明会開催を求める要望書』に94 世帯中88 世帯(94%)259 名が署名しました。
 4月下旬にはアプローズの管理会社から「オーナーも居住者の不安を解消するように、ドコモに説明するように求めている」とお話があり、実に説明を求めてから2ヶ月半を経て、5 月25 日と31 日に第1 回、第2 回説明会が開催されました。ドコモは「工事を中止して、居住者の理解を得るために何度となく説明会を開いていくこと」を約束し、「初期対応の不適切さ、説明会開催が遅れたこと、担当者の事前説明の解釈の誤り」の3 点について謝罪をしました。しかし、6 月22 日の第3 回説明会では、閉会間際に工事の再開が一方的に通告されて騒然となってしまいました。
 この4日後の26 日、東京電力とドコモエンジニアリングの電源工事が始まりました。私たちは「工事を中止して、説明会を開催する」約束を破るものだと、工事の再開中止を求め、東京電力は「居住者の反対を押し切ってまで無理な工事はしない」と自社判断で、工事の中止を決定しました。
■ 運動の拡がり-アプローズから区へ-
 また、工事の再開を契機に、私たちは練馬区議会に対し、1 . ドコモが住民の意向を無視してアンテナの使用を開始しないように区に指導・助言を求める。2 . 建築基準法上の工作物としての届け出がなされていない無線基地局の撤去。3.無線基地局の建設に関して、住民の意向を無視して無秩序に進められないように区としてのルール作り の3 項目を求める陳情書を提出しました。本陳情にはアプローズ96 世帯中92世帯(96%)、278 名が署名しています。
 工事の再開ができなかったドコモは、7 月3 日、居住者4 名に顧問弁護士より内容証明付きの通知書を送りつけてきました。その内容は「貴殿らの妨害行為は、当社が本契約に基づき正当な業務行為として実施する本作業に対する何ら正当化根拠のない違法行為」、「当該損害全額を連帯して賠償いただくよう請求することになる」として3 千万円以上の請求の可能性をほのめかすでした。通知書を受けた4名は保育園から中学生までの子どもをもつ母親であり、「ここで安心して子どもを育てたい」というごく当たり前の願いを踏みにじる悪質な脅迫と考えました。根拠のない「違法な妨害行為」という決めつけには抗議し、訂正と謝罪を要求しましたが、それについての回答は未だにありません。
 一旦は中止された工事が7 月10 日に再開され、雨の中に長時間立ちつくしての押し問答の末、条件付きで1階の蓄電設備へのエアコン工事は認め、蓄電はストップさせることができました。
 8 月6 日の朝日新聞にこの問題の記事が掲載され、マンション名や住所が明記されていなかったにもかかわらず、大きな反響がありました。
 8 月23 日にドコモのアンテナ被害を考える会による「学習会」を開催しました。第1 部は市民科学研究室の上田昌文さんによる講演『携帯電話基地局がもたらす電磁波リスクを考える』。上田さんのお話は素人にもとても分かりやすく、電磁波の危険性を学べたことは説明会でドコモに反論していく力となりました。第2 部は練馬区議、東京都議、地域住民を交えてのディスカッションを行いました。アプローズの建設時にも反対運動があってご苦労をされ、今度はそのマンションのアンテナの心配をしなければならない地域の方のお話が印象的でした。このご近所の方々の複雑な思いを忘れずにいたいと思っています。
 9 月6 日、第4 回説明会を開催。今回初めて「電磁波の安全性」に関しての説明が行われました。ドコモは「100%安全だと言えない」としながらも、「国の基準を守っているので、万が一健康被害が発生してもドコモに責任はない」と繰り返すのみでした。
 9 月9 日、練馬区の2つの委員会で陳情の初審議が行われました。区民環境清掃委員会ではドコモが区に対して「アンテナは破壊工作の標的になる」という理由で、アンテナの所在情報の開示を拒絶したことが明らかになり、区議からも「そんな危険なものの所在を明らかにされないままでは、区民の生命や安全を守れない」などの意見が全会派から出され、活発な論議が行われました。私たちに無断で自宅を鉄塔代わりに使い、そんな危険なものを建てられたことに対して、あらためて怒りがわきました。
 9 月20 日には第5 回説明会。10 月19 日の第6回説明会では「ドコモが基地局を建設・使用するのは、安全な施設だからではなく、単に違法でないから」ということが明確になりました。
 そして、現在は11 月11 日の区民環境清掃委員会の視察準備に追われています。『アプローズ視察まつり』と題し、バザーを行ったり、風船を配ったりして、ご近所の方達にアピールしたいと思っています。
 まだ、アプローズの問題は未解決ですが、徐々に効果は上がっています。まず、地域では携帯電話のアンテナは危険だという認識が広がったことで、アンテナの建設の申し入れがあっても、断ったというマンションがあります。またアプローズの管理会社は、事前に居住者アンケートを行うようになり、反対が多い場合は基地局の建設を断念しています。今後のアプローズの基地局に関しての目標は、ドコモに撤退を求めるだけでなく、このまま説明を聞いても安心できないのであれば、オーナーに対して再度、契約の解除を求めて、アンテナの使用を開始させないことです。
 練馬区では高圧線の近くに保健所の建設計画もあり、これに反対する陳情も出ています。この陳情者とも協力して練馬区を「電磁波問題の先進的な自治体」に育てていくことがさらに大きな目標です。私たちの陳情の署名数は8000 筆を越えましたが、何とか1万筆の大台に載せて、練馬区には東京23区内で、携帯電話基地局の規制のルール作りの先がけになって欲しいと考えています。例えば、学校や病院などの近くには建てない。賃貸マンションであっても居住者に事前に説明を行う。地域にも事前に建設計画を知らせる。といったルールです。また、現在の建築基準法の施行令ではマンションに建てられたアンテナは工作物にあたらないと判断されているそうですが、これも自治体の判断次第では、工作物としての確認申請を求めることもできるのではないかと思います。
■ 仲間と周囲の応援に感謝
 今回、この原稿をご依頼いただいて、あらためて活動を振り返って強く感じたのは、仲間やサポートしてくださる方々に恵まれた幸運です。月に2 ~ 3 回のペースで作っている居住者向けのチラシの作成、気まぐれに作る地域向けのチラシの作成とポスティング、活動の裏話満載、苦労を笑い飛ばすメルマガ『マユミーナのアンテナ日記』の発行、HP とML の作成や管理、区議会の傍聴、ドコモ、管理会社、東京都住宅局、総務省電波局、区議との交渉など多くの作業をアプローズの仲間たちで、笑ったり、怒ったりしながら続けています。この活動を通じて、ご近所づきあいが増え、暮らしやすくなったという声もよく聞きます。私は5 歳の娘とのふたり暮らしなので「もし私が急病になったら、どうしよう?」という不安がいつもありましたが、今はその不安もなくなりました。子育てには「遠くの親戚より近くの他人」を実感!この点ではドコモさんにも感謝しています。
 その他にも、ご近所のお好み屋さんが物心両面で応援して下さったり、商店街のコンビニの掲示板に私たちのポスターを貼らせていただいたり、町会の顔役からは「地域のしがらみなんてことは気にせずに、のびのびとやりなさい」と励ましていただいたりしています。インターネットで検索して見つけたガウスネットには、電磁波問題で分からないことや全国の電磁波問題の運動のことなどを教えていただき、勇気を与えていただきました。 これからも「アンテナが引き倒されて、かぐや姫の竹林が戻る日」を楽しみに、活動を続けていきます。どうか、皆さんも私たちを見守って下さい。■__

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