邦訳が待ち望まれる携帯電話電磁波リスクに関する新著

投稿者: | 2014年7月2日

邦訳が待ち望まれる携帯電話電磁波リスクに関する新著
Alison Wilson著『Hold the Phone』『Hold the Phone–Here’s Why』

上田昌文(NPO法人市民科学研究室)

PDFファイルはこちらから→csijnewsletter_025_ueda_20140701.pdf

携帯電話の電磁波リスクについて論じた本や報告書は、主だったものの多くは英語で書かれたものだが、邦訳された数点を含めて、主だったものだけで、おそらく数十点はある。論文にいたっては数千に及ぶだろう。しかしその大半は、専門の研究者が分担執筆したレヴュー論文集であったり、業界や科学コミュニティの内情を暴くことに主眼が置かれていたりで、一般市民にとって「この1冊があれば」という本は今までなかったと言える。

英語の電子書籍(ただし、AdobeのAdobe Digital Editionsで読む形式)で2013年に発行されたAlison Wilson 著の2巻本 『Hold the Phone』(このタイトルは、電話中によく使う「ちょっと待って」の意)『Hold the Phone–Here’s Why』は、徹底して市民・消費者に役立つように書かれている本であり、その点で画期的だろう。健康影響に関連する電磁波の物理・工学的基礎事項の説明は最小限にとどめて、健康に関わる幅広い兆候・症状・疾病を丁寧に拾い出してその証拠となるだろう科学的事実をわかりやすく示し、関連する諸分野の科学者や専門家の発言や指摘を印象深く引用してコラムとして随所に配し、具体的で詳細な「電磁波曝露低減のためのアイデア・実践項目集(Tips)」(下記に訳した31項目は携帯電話についてだが、コードレス電話やWi-Fiについてもそれぞれ10項目と11項目がまとめられている)。

『Hold the Phone』の方はこの「いかにして電磁波曝露を減らし健康を守るか」の観点からアイデア集を核としてそれに関連する主な科学的言説と研究者たちの発言事例を紹介し、『Hold the Phone–Here’s Why』の方は言及した科学的言説がいかなる実験や調査に基づいたものであるか、その証拠の確からしさをいかほどのものであるかを、極めて広範囲に文献を精査して論じている、いわば『Hold the Phone』の注釈本である。両方とも巻末の文献リストでは、電子書籍の利点を生かして、ほとんどすべての文献にリンクが貼られていて原著を参照できるようになっている。

【続きは上記PDFファイルにて】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA