STAP細胞事件に思う
~研究不正で犠牲になる動物たち
東 さちこ(PEACE(Put an End to Animal Cruelty and Exploitation)代表)
PDFファイルはこちらから→csijnewsletter_025_azuma_20140701.pdf
イギリスの科学誌「ネイチャー」に掲載されたSTAP細胞論文をめぐる捏造疑惑が世間を大きく騒がせています。日ごろから動物保護の活動に関わる人間として、世界中で追試のために動物が犠牲になっていることに関し、当初から疑問を感じてきました。しかし、疑惑が連日報道され、自分たちでも独自に情報収集をしたところ、問題はそれだけではないこともわかってきました。
既に小保方晴子さんも2本の論文の撤回に同意し、論文不正から理研のあり方まで様々なことが言われつくされた後ではありますが、これまであまり言われてこなかった実験動物の問題について感じていることをお伝えしたいと思います。
STAP細胞作成は動物実験計画書の審査を経ていなかった? ~理研に質問書を提出
今年2月、理研が論文不正に関する調査を始めると報じられた時点で、私たちの団体では、すぐに理研に対して文書の情報開示請求を行いました。単なる直感ではありますが、動物実験を行う際に行われるべき手続きにも問題があるかもしれないと感じたためです。
動物を科学上の目的で利用する場合には、実験責任者が事前に動物実験計画書を各機関の動物実験委員会に提出し、審査・承認を経る必要があります。このしくみは、日本では文部科学省などの関連省庁の指針によって定められているだけですが、実験によって得られる情報と、動物に与えられる苦痛の度合いとの比較検討を行い、苦痛のなるべく少ない実験の実施を促すために行われています。
ネイチャーの投稿規定でもこの手続きは求められていますし、理研の規程にも「動物実験は、所長が承認した実験計画に従って実施しなければならない」とありますので、私たちは、この手続きに関連する文書の開示請求を行いました。
しかし、実際に開示書類が届いたところ、実験計画の承認時期がおかしいことがわかりました。小保方さんが理研に入った2011年4月頃には計画書は出されておらず、承認されていたのは、その年の10月でした。理研の調査結果に対して小保方さんが不服申し立てを行った文書には、STAP細胞作成の実験を行った時期が書かれており、4月にはSTAP作成に成功、6月から9月頃にマウスのいろいろな部位で試したとあったので、完全に話が食い違います。
つまり小保方さんは、動物実験計画書の提出前に動物実験を行っていたことになりますから、私たちはこのことを非常に問題だと思い、理研に対して質問書を提出しました。小保方さんの上司の若山さんが理研を去った後の8か月間も、小保方さんが動物実験を行うことのできる計画書がありませんでした。
また、実験計画書では、動物の苦痛の度合いをA~Eの5段階で示す方式が採用されているのですが、その判定についても実際より低いランクで承認が出ているように思われるものがあります。きちんと審査が行われているのかについても疑問に思い、その点についても質問をしました。
実験計画書では、まだSTAPという名前は使われていないのですが、2件開示された計画書のうち1件は承認に関係する欄自体がなく消されている可能性があるので、STAP研究が理研内でも秘密裏に行われたと報道されていることと考えあわせ、もしかしたら実験計画書の審査・承認自体が省略された可能性もあるのではないかと疑っているところです。
【続きは上記PDFファイルにて】