【翻訳】科学・政策および価値の透明性

投稿者: | 2014年10月31日

科学・政策および価値の透明性
Kevin C. Elliot(ミシガン州立大学)・David B. Resnik(国立環境保健科学研究所)
『環境健康展望』122巻7 号、2014年7月 翻訳:杉野実+上田昌文
原題:Science, Policy, and the Transparency of Values
Environmental Health Perspective vol.122, No. 7, July 2014
pdfはこちら→csijnewsletter_027_sugino_201410.pdf
背景: 内分泌撹乱物質の規制に関するヨーロッパ委員会(EC)の予備報告について、対立する陣営の科学者らが最近熱烈な論争を展開している。焦点となるのは科学的事項にくわえ、科学者が政策決定者に報告する際客観性をどれほど保持できるかということである。
目的: 科学研究における客観性と利益相反に関する近年の倫理的・概念的・経験的研究にもとづき、客観性・公的信頼および政策の適切性を増進させる方法で、科学的知見を公表するための、指導的な原則を提案すること。
議論: 科学的議論の概念的・経験的研究が示唆するところによると、政策関連科学が価値判断に影響されないようにすることは非現実的である。概念的にいえばEC報告に関する論争は、科学者が公共政策に情報提供をする際に、証拠の適切な基準について、価値判断をすることをいかに強制されるかを示している。また経験的研究の示す証拠によれば、潜在的なさまざまの経済的・社会的・政治的および個人的な利害および価値に、科学者も不可避的に影響される。
結論: 科学的な証拠だけでは結論がえられず、規制に関する重要な決定が議論されているとき、科学的な理由づけから価値が排除できると考えるのは非現実的である。したがって、利害ないし価値を排除・秘匿しようとすれば科学的客観性と公的信頼を破壊しかねず、むしろかくれた価値と利害の公表こそが科学と政策を改善する最良の方法となりうる。
序論
 Natureのある記事(Cressey 2013)が報じたのは、内分泌撹乱物質(RDC)の規制を提案したヨーロッパ委員会(EC)の、批判はされるが引用されない予備的報告(EC 2013; Horel and Bienkowski 2013)に対する、対立する科学者陣営間の熱烈な論争についてであった。テキサス大学教授でEndocrinology編集者であるAndrea Goreは、この件は「多分自分のキャリアでもっともめざましい経験」であり、「まちがいなく多くの科学者にとってそうであった以上に対立的である」と述べている(Cressey 2013)。論争の詳細は、EDCをいかに特定し規制するかという問題をめぐるものだが、科学者はいかにして、政策的に適切で適度に客観的な方法でもって、政策決定者と意思疎通するべきかという、より広範な問題をも論争はうかびあがらせた。論争参加者のなかには、科学と政策のより明確な区別を要求する者もいる(Bergman et al. 2013)が、われわれがここで主張するのはむしろ、利害と価値が説明に影響するそのありかたについて、科学者が可能なかぎり公開することによってこそ、社会はよりよいものになるということである。
 18誌の編集者らがFood and Chemical Toxicology誌上に、ECがEDC規制制度を準備していることについて、「薬学と毒物学の確立し普及した諸原則の、事実上完全な無視に立脚している」と非難する論説を公表した(Dietrich et al. 2013)ときに、論争が噴出した。同論説とそれに付随した書簡(Dietrich et al. 2013)は、ふたつの問題に焦点をあてた。第一に論説の著者らは、動物その他の実験系でえられた内分泌撹乱の証拠が人体にも適用されると想定されていて、撹乱がないという証拠はとりあげられていないといって、ECを批判した。著者らは第二に、それ以下ではEDCが有害な作用をおよぼさない閾値が存在しないとECが仮定していることについても、懸念を表明した。
 この最初の論説に反応して、複数の発言が公表された(Bergman et al. 2013; Gore et al. 2013; Grandjean and Ozonoff 2013)。41名の科学者により署名され、Environmental Healthに公表された論説(Bergman et al. 2013)は、ECが本当に、Dietrichらが記載した特徴を有する規制政策を想定していたのかと、疑問を提示した。Bergman et al.による論説(2013)はまた、化学物質安全国際計画(IPCS)のリスクアセスメント枠組み文書(IPCS 2002)も、動物における毒性の証拠が人間にも適用されるという、「解除条項」的仮定を採用していることも指摘している。同論説はそれにくわえて、特に人口集団レベルでの、EDC閾値の存在は依然として不確実であるともいう。Endocrinologyに公表されたもうひとつの論説(Gore et al. 2013)は、EDCによる有害な作用の閾値は想定可能であり、その証拠も存在すると力説している。
【続きは上記pdfファイルでお読みください。】

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