携帯電話電磁波と脳腫瘍に関するオーストラリアの2つのTV番組

投稿者: | 2009年5月4日

写図表あり
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携帯電話電磁波と脳腫瘍に関するオーストラリアの2つのTV番組
翻訳:杉野実+上田昌文
■ 参考:携帯電話と脳腫瘍に関する欧州での最近のTV報道番組 ■
●April 3 in Australia: “Wake Up Call” (英語,14分).【以下に訳出】
●April 2 in Australia: “Scientists Speak Out on Mobile Phone, Cancer Link” (英語, 20分)
【以下に訳出】
●March 31 in Switzerland: “Waves: You Are Surrounded” (仏語, 29分)
●March 28 in Belgium: “Is GSM Radiation Harmful or Not” (ベルギー語、ただし英語、仏語、独語による多数のインタビューを含む,44分;番組の再生にはここをクリック→ここ)
●March 28 in France: “Mobile Phones and Towers: Danger?” (仏語, 19分)
●March 28 in France: “Waves That Shock” (仏語, 30分)
●March 17 欧州議会TVより: “ACTION: Mobile Phone Health Threat Should Not Be Waved Off Lightly” (仏語ならびにイタリア語, サブタイトルは欧州各国語で示される, 15分)
●携帯電話とがんとの関連を科学者が率直に話す
オーストラリア放送会社(ABC)
2009年4月2日放送 ティッキー・フラートン記者
Scientists speak out on mobile phone, cancer link
http://www.abc.net.au/lateline/content/2008/s2533725.htm
Australian Broadcasting Corporation
Broadcast: 02/04/2009
Reporter: Ticky Fullerton
携帯電話を購入した人は、いまや世界人口の半分をこえる。だが携帯電話と脳腫瘍との関係、とりわけ子どものそれに関する研究は、どれも「未完成の仕事」のようにみえる。フランスとか、あるいはあのノキアの本拠でもあるフィンランドのような国では、携帯電話に関する政策が変化しつつある。そしてオーストラリアでは、2人の指導的な科学者が率直に語った。
レイ・セールス(司会):いまでは何十億台と売れていて、5歳児にさえ売りつけられているのですね。
これまで流布していた科学界の意見によれば、携帯電話が健康に重大な影響をおよぼすことは本当にないということでした。
しかし昨年、ヨーロッパ連合をふくむいくつかの政府が、特に子どもたちが携帯電話をどのように使用すべきか、ということに関する政策を、突然変更したのです。
携帯電話が安全だとする通説をやぶる声は、それだけではありません。
携帯電話の安全性に関する史上最大の調査において、オーストラリアの部分を担当した疫学者は、致命的な脳腫瘍を発症する危険が高まることを警告しています。
もうひとり、同様の関連性を表明して携帯電話産業から攻撃されたオーストラリアの医師もいますが、彼の研究も今月、査読を通過しました。
ところがオーストラリア政府はまだ、携帯電話と人体の健康に関する政策を、変更しようとはしていません。
ティッキー・フラートンが報告します。
ティッキー・フラートン:いまオーストラリアには全人口よりも多くの携帯電話があり、公衆にも政府にも欠かせないものとなっています。
携帯電話産業の規模は65億ドルにもなるのですね。数十分にわたる通話から発生する熱について疑問をもつ人はますますふえていますが、日常生活はつづいていきます。
もっとはっきりいいましょう。世界保健機構やアメリカ連邦医薬品局、あるいはヨーロッパの指導的な科学委員会などはみな、携帯電話と重大な健康上の問題とを関連づける科学的な証拠は存在しない、つまりこの道具は安全である、ということで意見が一致しています。
それならなぜ、一部の政府やオーストラリアの科学者らは、わたしたち、とりわけ子どもたちに、注意するようにと警告しているのでしょうか。
それはみな、ここ1年ばかりのあいだにおこったことです。
通説に反対するオーストラリアからのふたつの声は、たがいにかなりことなったものです。疫学者のブルース・アームストロング教授が、世界最大の調査研究のなかにあって異議をとなえたのに対して、高名な神経外科医ビニ・クラーナ博士は、再調査研究を今週末に発表しました。いずれも世界的な関心の高まりを反映して、携帯電話を10年以上使用した場合における、電話機をあてた側での脳腫瘍発症の危険増大を示唆するものとなっています。
デブラ・デービス(ピッツバーグ大学癌研究所教授):人体への危険に関するかぎり、本当に意味のある証拠は病人と死人しかいないというのが、これまでの状況でした。特に脳腫瘍のようなものについては、それはあらためられねばならないと、わたしは思います。脳腫瘍は発症するのに10年、20年、30年とかかるのです。曝露があって、30年も40年もたってから、人体に影響するかもしれません。子どもたちが携帯電話を使うことは、ますますふえています。5歳児にまで、携帯電話が売られようとしているのです。
フラートン:この問題にいくらかでも関連しそうな、わが国の主要な研究機関としては、ロドニー・クロフト氏の主宰する、オーストラリア高周波生物学的効果研究センターがあります。
これは懸念すべき問題なのでしょうか。
ロドニー・クロフト(オーストラリア高周波生物学的効果研究センター所長):いいえ。現在まで本当に多数の研究があって、なんら影響がないことははっきりと示されています。子どもについても、問題のあることを示唆する証拠はなにひとつないとわたしは思います。もう少し注意深くなるべきだという証拠は、まったくないのです。
フラートン:オーストラリア高周波生物学的効果研究センターは、経験ゆたかな科学者を擁していますが、のちほどご覧いただきますように、携帯電話産業とも強いつながりをもっています。
ニューヨークでルイス・スレシン氏が主宰する「マイクロウェーブニュース」は、20年以上もこの問題を追ってきました。癌との関連を軽くみる論者に対して、氏は非常に批判的です。
ルイス・スレシン(マイクロウェーブニュース):インサイダーではないといいますか、内部にはいない人々は、より積極的に、「注意すべきだ」と率直にいおうとします。抵抗勢力は内輪からやってきます。いわゆる専門家というのがそれです。「いや、心配すべきことはなにもない」と彼らはいおうとします。こうした状況こそ、わたしたちが20年間指摘し続けてきたものなのです。
フラートン:先月発表された調査によると、イギリスの子どもの3分の1以上は、8歳までに携帯電話をもつといいます。
子どもと携帯電話について注意を喚起したドキュメンタリーが、イギリスで放送されたのは10年前でした。
10年たって、どれほどのことがあらたにわかったのでしょうか。
この問いに答えてくれそうな研究として、1500万ドルをかけた集団調査であるイてンターフォンがあります。これはオーストラリアをふくむ13の国で、数千例の腫瘍患者と健康な人々の、携帯電話の使用を比較したものです。
インターフォンは2006年に終了しましたが、その結論は公表されていません。内部筋がレイトライン紙に語ったところによると、科学者たちは結果について合意に達することができず、マスコミに話すのを拒否しているということです。
スレシン:インターフォンがいまだに公表していないというのはスキャンダルですよね。
フラートン:公表されたのはいくつかの個別の国、とりわけ北ヨーロッパ諸国の結果ですね。
これまでのところ、携帯電話を10年未満使用した人々においては、致死的な脳腫瘍である膠腫の危険がますということはないようです。これこそ産業界が、公衆にきかせたいと思っている情報でしょう。
クリス・アルソース氏は業界団体を主宰しています。
クリス・アルソース(オーストラリア移動体通信連合):インターフォンよりも長期にわたった調査としては、たとえばデンマークでの20年間の調査があります。携帯電話の使用が脳の健康に悪影響をあたえるという、医学的・生物学的・統計学的な証拠はまったくありません。
フラートン:でもインターフォンの研究は、携帯電話を10年以上使用した人について、ちがった結論を出しています。
スレシン:潜在的な危険があることを示した、インターフォンのデータがえられてから、すでに数年がたっているのですよ。
フラートン:昨年メルボルンで、オーストラリアでのインターフォン研究を主宰した科学者が率直に語りました。
ブルース・アームストロング氏は、インターフォンには微妙な問題があるとして、レイトライン紙のインタビューをことわりました。しかし、ロドニー・クロフト氏のオーストラリア高周波生物学的効果研究センターで開催された学会における、基調講演であきらかにされた氏の見解は、いまではインターネットでも公開されています。
アームストロング氏の結論は、もし正確であるとすれば、業界にとっては悪夢です。長期にわたり使用すれば、致死的な腫瘍である膠腫が、電話機を通常あてた側に発症する危険がますということですから、懸念すべき十分な理由があることになります。特に子どもに対しては、できるだけ実行可能なほどに低く、曝露を制限すべきだということです。
クロフト:アームストロング教授のおっしゃる研究については、教授が思っておられるほどにはその条件は強力ではないと、わたしは信じています。
スレシン:アームストロング教授は、「注意するように」とおっしゃっています。業界と関係のあるオーストラリア高周波生物学的効果研究センターは、「心配する理由はありません」などといいます。クロフト氏はそこの重要人物で、そういう言説をひろめている人です。氏はよそ者ではなく、ただのクラブのメンバーでもありません。氏はカードをくばる立場にある、すなわち指導的な疫学者です。
フラートン:インターフォンのデータは、その不正確さがひろく批判されてもいます。たとえばあなたは4年前に、何回通話して、どれほど長く電話を使っていたか、思い出せますか。
でも電話機をあてていた側と腫瘍との関連は、どちら側にあてていたのかを思い出すことに左右されるわけです。
クロフト:そうですね、この種の研究にはいろいろな困難があります。たとえばある人が、特に脳腫瘍と診断されたあとに、どちらの側で電話を使っていたのかを決めるときなどに。
フラートン:本当にそれほどむずかしいのでしょうか。つまり、電話を何分使っていたかというのはむずかしいけれど、何年もどちらの側で電話を使っていたかというのは、ほとんどの人がおぼえているのではありませんか。
クロフト:そう思いますか。それがどれほどむずかしいか、最近実際にたしかめた人がいます。それによると、人が報告した側と、実際に使用した側とのあいだには、ほとんど関連はなかったのです。
フラートン:なぜそうなるのでしょうか。アームストロング教授の研究は、この特定分野に関しては記憶のかたよりがないとの説を支持しています。おっしゃっているのはどの研究ですか。
クロフト:さがしてきておみせします。
フラートン:どちら側で電話を使っていたのか人々が思い出せないとする研究をみせるように、レイトライン紙が要求した時にも、ロドニー・クロフト氏は困難があることをみとめました。その研究はいまだに公表されていないのに、アームストロング教授の結論はあやまっていると氏はいうのです。
クロフト:わたしたちは、全世界のおよそ50例をみています。これまでに文献で報告されてきたのは、23例にすぎません。
フラートン:ブルース・アームストロング教授の結果は、ここにいらしている、スウェーデンの独立研究者の結果ともきれいに一致しています。
レナート・ハーデル氏は1990年代末以降、電話機をあてた側と主要との関係について、報告をつづけています。やはり標本は小さいのですが、アームストロング教授が報告したのと同じ月に、氏もロンドンの王立協会で最新の研究成果を発表しました。
レナート・ハーデル(オレブロ大学病院):わたしたちが本当に心配しているのは、20歳に達する以前に携帯電話やコードレス電話を使用し始めた人において、神経膠腫や聴神経鞘腫を発症する危険が最高になるという、最近のデータの分析結果についてです。
フラートン:10代で携帯電話を使用し始めた人にあっては、20代後半までに脳に悪性腫瘍を発症する危険が、4倍から5倍にも高まるということを、ハーデル博士は発見しました。
頭の側についてはハーデル博士と意見を同じくしていることを、アームストロング教授もみとめています。ハーデル博士は業界から無視されることが多いが、自分もまた軽視されていると、教授はおっしゃっていました。
[再生したビデオ画面で] ブルース・アームストロング:みなさんは今夜は外に出ていって、「頭の側と携帯電話使用との関係は、興味深いいけれど、本当とは思えない」とおっしゃるおつもりなのでしょうか?
スレシン:氏は基本的な考えを変えましたね。氏がいうのは「”危険性は何もみられない”という見解はもはや受け入れられない」ということでしょう。これは決定的な瞬間ではないかと思います。
フラートン:オーストラリア高周波生物学的効果研究センターによる研究のなかにも、携帯電話からの放射が脳に影響するとしたものはあります。
クロフト:わたしたちは、脳機能の非常に微小な変化に対する、携帯電話の影響を探査しています。アルファ波とよばれる、特定周波数の脳波活動において、確実な変化が生じるということが、わかりつつあります。
フラートン:健康への影響ではないにしても、生物学的な変化が生じるとは、一体どのようなご信念の変化でしょうか。
クロフト:知られている相互作用の唯一の機構が加熱であるということが、ひとつの理由であると思います。でも、材木のブロックを頭のところに持ち上げるほうが、電波を浴びて加熱されるすのよりも温度が上昇するといったことも忘れるわけにはいきません。
スレシン:機構はよくわかりませんが、脳内でなにかがおこっているということは、クロフト氏もみとめました。基礎科学の理解における突破口になりうる事実を発見していながら、「おい、これは関係ないぞ、無視しよう、つまらんことだ、捨ててしまえ」などという人がいるのは、興味深いことです。これほど非科学的なこともないでしょう。
フラートン:昨年3月のユーチューブ動画、これは最初の1週間で400万ヒットを記録したのですが、その背後にも悪い科学がありました。
それは4台の携帯電話からのラジオ波で、ポップコーンが作れるというものでした。
オーストラリア高周波生物学的効果研究センターでの会合には、テルストラ社も出席していました。だからこの冗談は容易にみやぶられました。
[再生したビデオ画面で] テルストラ社代表:食卓においてある携帯電話は十分に多いのだから、それでポップコーンが作れるはずはないということは、すぐにでも証明できるでしょう。
フラートン:業界との密接な関係を説明することは、それほど容易ではありません。オーストラリア高周波生物学的効果研究センターは、テルストラ基金と、テルストラ実験器具会社によって設立されました。業界が影響力を金で買っているということを、クロフト氏は否定しています。
オーストラリア高周波生物学的効果研究センターを通じて仕事をしている、テルストラの研究員がいます。同センターの理事会には、もと政府の主任研究員であり、科学産業研究機関連合の所長でもあった、もとテルストラ役員の理事が、少なくとも1人はいます。重大な影響力をおよぼす余地が、そこにはありますか。
クロフト:それはとてもむずかしいですね。というのも、6人の理事は科学的な決定をおこなうからです。
たしかに研究費は業界から取り立てた税金から出ていますが、その金はまず政府に行き、政府はそれを、オーストラリア全国保健医療研究協議会に送ります。どの研究が重要かを決定する独立の作業団が、同協議会にはあります。
フラートン:テルストラはレイトライン紙のインタビューをことわり、自分に有利なように話す機会を業界団体にあたえました。
クリス・アルトハウス(オーストラリア電気通信連合):この主題を研究するために資金を使うのは科学者です。彼らこそその専門家です。この分野はとても複雑です。だから当業界は責任をもって出資していますが、研究結果に影響をおよぼすことは決してありません。
フラートン:疫学者のデブラ・デービス氏は、放射が子どもの脳には、大人の脳よりも容易に浸透することが、産業調査によっても示されたといっています。
デブラ・デービス教授:病気の子や、死んだ子という証拠があがるまで、行動はしないといいはるべきでしょうか。わたしはそう思わないし、ヨーロッパ議会もそうは思わなかったようです。
フラートン:欧州議会は9月に、携帯電話の安全基準をきびしくすべきとする勧告を、522対16で可決しました。いま5か国が、子どもの周囲での携帯電話の危険について市民に警告していますが、そのなかには、ノキアが株価総額の3分の1をしめるフィンランドもふくまれています。
警告をしようとする人はほかにもいます。キャンベラでは神経外科医のヴィニ・クラーナ博士が、腫瘍を日々治療しています。
博士は昨年3月、その再評価研究で有名になりました。携帯電話を10年間使用すると、電話機をあてた側に脳腫瘍を発症する危険が倍増することを、博士は発見したのです。博士はのちに、アメリカのラリー・キング・ライブに出演しました。
[『ラリー・キング・ライブ』2008年の再生画面] ヴィニ・クラーナ(神経外科医):携帯電話がどのような分子メカニズムで脳腫瘍が起こすのかということがわかってないからといって、携帯電話と脳腫瘍に関連がないということにはなりません。既知の関連がないことと、関連がないこととはちがいます。それに、インターフォンの研究からわかる長期のデータもありますので、それをお見せしましょう。
フラートン:昨年出たビニ・クラーナ氏の論文についてはどう思われますか。
クロフト:そうですね、あまりよい科学的研究ではないと思います。欠点がいくつもあって、結論には意味がないのではないでしょうか。
フラートン:その論文が、尊敬すべき科学者による好意的な査読をへたものであったとしても、お考えはかわりませんか。
クロフト:尊敬すべき科学者ですか、いや、やはりかわりませんね。査読にも、いろいろな水準のものがありますから。
フラートン:クラーナ博士の研究に対する査読結果は今週、国際学術誌『神経外科学』で公表されました。レナート・ハーデル氏と、高名な神経外科医チャールズ・テオ氏も共著者です。
テオ博士には最近、携帯電話が脳腫瘍の増加と関連しているのかどうか、おたずねしています。
[再生したビデオ画面で] チャールズ・テオ博士(神経外科医):関連していると思うのですが、科学的には証明されていません。脳腫瘍を治療しようとして脳に放射線をあてたはずが、その照射がまた腫瘍を発生させうるという、おどろくべきことがわかっています。だから放射が腫瘍をおこすことはわかっているのです。でも発症するまでに10年ぐらいかかりますね。
フラートン:高名な科学者が意見を公表している例は、世界のいたるところにあります。
昨年の9月には、ピッツバーグ大学癌センターの所長が、3000人の全職員に対して、携帯電話に注意するようにとの警告を発しました。
フランスでも昨年6月、政府にあてた意見を、20人の保健専門家が新聞に出しました。彼らは疫学者ではありませんでしたが、秘密主義で知られるインターフォン研究団の当時の団長からも、明確な見解をひきだすことに成功しました。
スレシン:注意すべきだとする専門家の見解がフランスのマスコミに出たとき、この方もそれを支持していました。この話題について語るのに、エリザベス・カーディス氏ほど適任な人がいるでしょうか。
フラートン:それでは、オーストラリア政府の見解はいかがでしょうか。
コリン・ロイ博士(オーストラリア放射防護核安全局):携帯電話からの放射が悪影響をあたえるという、納得できる証拠はまったくありません。携帯電話への懸念の表明がこの国では多くはないのですが、それは人々が携帯電話を制御できるからではないでしょうか。要は使い方次第ということだと思います。
フラートン:それでも心配だという方々に対しては、通話時間は短くして、イヤホンを使い、内蔵アンテナは使わないようにと、政府のホームページがよびかけています。
ところがこのホームページには、インターフォン研究の記述において奇妙な見落としがありました。長時間にわたる携帯電話の使用は、良性腫瘍である聴覚神経腫と弱く関連しているといっていたのに、悪性腫瘍である膠腫には言及していませんでした。
コリン・ロイ博士:それは本当に見落としでした。私たちの要約においてもそうですが、政府特に関係閣僚に対しては、インターフォンの最新の研究成果を追うように注意しております。
フラートン:レイトラインが指摘して、ホームページは更新されました。
公衆も注意すべきなのかもしれませんが、SAR(比吸収率)とよばれる、携帯電話からの放射のレベルもかえられねばなりません。SARはメーカー各社のホームページで公表されており、その率を2ワット毎キログラム未満にすることを業界は要求されています。
しかしそのレベルにおさえてもなお、携帯電話は脳腫瘍をひきおこしています。私は携帯電話をよく使うのですが、私のABC携帯電話の特殊吸収率は、市販されている他の製品とくらべて、少なくとも2倍にのぼります。
SARが高いことは心配すべき問題なのかと、業界団体にたずねてみました。
アルトハウス:いいえ、まったく問題ありません。SARの根拠をお読みになれば、その基準には安全幅が大きくとってあることがおわかりになるはずです。
フラートン:財布のひもをにぎっている業界は、研究にも影響をおよぼすはずだと、デブラ・デービス氏はいいます。
デブラ・デービス教授:影響をおよぼすやりかたは、”Thank You for Smoking”(「ご喫煙ありがとうございます:邦題「サンキュー・スモーキング」)という映画からよくわかると思います。この映画は、なんというか、少し問題のある製品を販売するために、公共へのはたらきかけがどうおこなわれているか、ということに関するものです。タバコとか、酒・銃などの製品ですね。
[映画”Thank You for Smoking”を部分再生]
フラートン:この映画の最後では、最新の動向として、携帯電話のこともふれられています。
アルトハウス:携帯電話の使用が健康に悪影響をおよぼすという、医学的・生物学的・統計学的な証拠がないことは、わかっています。
しかし研究に線をひいてしまうだけでは十分ではありません。今後10年以上の効果はあらたな研究の領域であって、業界はそのような姿勢を支持します。
フラートン:でも現実には、あらたな研究への努力はほとんどおこなわれていません。アメリカ全国研究評議会は、将来における大規模な集団研究を要求しました。いまや私たちの多くは携帯電話の長期使用者ですが、そういう集団に関する研究を要求したところもあります。
そのような研究は緊急になされるべきだとお考えですか。
クロフト:そうですね、緊急だとはいいません。私たちの科学の理解に適合しない報告がいくつかあるのですけど、そういうものをどのように再検討するか、ということが問題だと思います。
フラートン:ここに殺人機械があります。現在アメリカで実施されている、携帯電話放射の研究は、一件もありません。まったくありません。周辺の研究には大きなものもあるのですが、それもまだ始まっていません。でもそれが始まれば、研究がひとつはあることになります。それだけです。いまや世界の40億人が携帯電話を使用しているのですが、子どもたちがあぶないのかそうでないのかみきわめるために、ほんの数ドルを使うことはできないのでしょうか。
携帯電話の力は、政府や業界だけでなく、私たちの脳にまでおよんでいるようです。
電話機を頭にあてることは安全だと信じてきましたが、それに反対する声も耳のなかで鳴っているのではないでしょうか。
レイトライン、ティッキー・フラートンでした。■
●番組「お目覚めコール(Wake Up Call)」2009年4月3日(金)
記者:ライアム・バートレット
プロデューサー:ニック・グリーンナウェイ
Wake Up Call Friday, April 3, 2009
http://sixtyminutes.ninemsn.com.au/article.aspx?id=797215
Reporter: Liam Bartlett
Producer: Nick Greenaway
携帯電話をもっているのなら、この番組を見るべきだ。
安全だという者もいるが、脳を加熱するという者もいる。
オーストラリアのもっとも優秀な2人の外科医をふくむ、医師の国際的な集団が、最新の包括的な研究を発表したばかりだ。
自身が小さな子どもの父親であるライアム・バートレットも、あらためてこの問題に注目した。
長期におよぶ携帯電話の使用は、悪性脳腫瘍の危険を倍増させうるという。
それもすべての癌のなかでもっとも危険で、すべての患者を殺すというものだ。
1世代まるごとが携帯電話とともに育ったいま、事態は非常に深刻ではなかろうか。
ライアム・バートレット(司会):ニューサウスウェールズのナオミ渓谷はうつくしい場所です。ジョンとマーガレットの、ブリヤント夫妻のお気に入りの場所でもあります。
ジョン・ブリヤント:ここにすわって、しばらくのあいだ、あたりをながめることができるのは、とてもいいことだね。
マーガレット・ブリヤント:きれいだわ。天国のかけらが地上におりてきたみたい。
バートレット:だがジョンは、いつまでもここをながめていられないことをおそれています。彼は末期の脳腫瘍なのです。
マーガレット:ただまてばいい。あなたはいつだって積極的でしょう。ただなりゆきにまかせていればいいのだわ。
ジョン:そうだね。
マーガレット・:生きているかぎり、希望はある。
ジョン:そのとおり。
バートレット:皮肉なことに、畑をたがやすだけのつらい生活のあとで、このあらあらしい農夫は、現代の科学技術すなわち携帯電話が、自分の生命をちぢめたといって、批判することになりました。
ジョン・ブリヤント:うたがう余地はないよ。なにが自分を殺したのかは、わかっているんだ。
バートレット:ジョンさん、なにが「殺したか」なんて、まるでもう死んでいるようですね。
ジョン:わしはもう死んでいるんだ。いってみれば歩く死人のようなものさ。
バートレット:昨年の11月、ジョンさんは、毛刈り小屋ではたらいていたときに、左半身が動かなくなりました。そして医師は、彼の右耳のすぐ後ろに、悪性の腫瘍をみつけたのです。
ジョン:ヒューゲス先生はとてもいい医者だが、わしはその先生にいったんだ。「余計なことはいらない。本当のことをいってくれ。」と。そうしたら先生はいった。「本当のことをいいます。」この病気ではみんなが死んで、助かる者はいない。そういわれてタムワース病院に来たんだが、それがとてもよかったね。
バートレット:これは愛情にあふれた大家族です。ブリヤント家はここで、農耕と野菜の出荷で生涯をすごしてきました。ジョンさんの携帯電話は、過去25年にわたり大事な商売道具でした。彼はうたがいもなく、何時間にもわたって電話機を耳にあて続け、それが脳腫瘍をもたらしたのです。ジョンさんの経験は想像もできません。
ジョン:そりゃ想像できないよ。わしのところに来る人たちはみんな、わしに気を使って、「お気もちは想像もできません」なんていうが、「想像できるわけないさ」とわしは思うのさ。それもこれも、あのいまわしい携帯電話のせいだ。
バートレット:テオ先生、ジョンさんは脳腫瘍が携帯電話によってひきおこされたといいはっています。先生は彼の診断に賛成されますか。
チャールズ・テオ博士:「いいはる」というのはきつすぎる表現ですし、どんなものごとにも表と裏があります。しかしご質問の趣旨が、携帯電話が脳腫瘍をおこしうるかということであるのなら、「それはありうる。」と私は答えます。3日間でそこまで悪化したのなら、あと3週間も生きられないでしょう。事態はそれほど深刻なのです。
ジョン:そのとおり、最悪だね。
バートレット:チャールズ・テオ博士はジョンさんの主治医であり、腫瘍を克服するための最後の希望でもあります。博士はまた、携帯電話の長期にわたる使用により、脳腫瘍が劇的に増加するのではないかと予測した、衝撃的な新研究の共著者でもあります。
テオ博士:それは大変な恐怖です。私たちの書いたことが正しかったらどうなりますか。もし私たちが正しかったら、今後10年かそこらの間に、脳腫瘍や脳癌がものすごくふえることになります。それはおどろくべきことです。いや、おどろくべきことは、すでにあらわれています。
バートレット:私たちはみなそういうことを心配していますが、それには十分な理由があります。電子レンジは電磁波をもちいて食品を調理しますね。そのエネルギーと波長がまさに、携帯電話から放出されているものと同一なのです。たしかに電子レンジの方が出力ははるかに高いのですが、携帯電話を毎日何時間も耳にあてているとなれば、その合計は一体どれほどになるのでしょう。私たちが携帯電話でしているのは、まさにそのようなことです。
ビニ・クラーナ博士:携帯電話の長期的な使用は、ある種の脳腫瘍と診断される可能性を、倍増させることと関連しています。
バートレット:携帯電話を長期間使用すれば……
クラーナ博士:そのとおり、10年以上ですね。
バートレット:……脳腫瘍の危険が倍増する、と。
クラーナ博士:それこそデータの解析からわかったこと、データが示していることです。
バートレット:キャンベラの脳外科医ビニ・クラーナ博士は、チャールズ・テオ氏および他の3人の指導的な科学者とともに、この最新報告をまとめました。携帯電話はタバコ以来では最大の公衆衛生問題になりうると、博士は信じています。結果の重大さにはおどろかれましたか。
ビニ・クラーナ博士:実はこれでもひかえめな推定ではないかと思っているのです。
バートレット:危険を倍増するというのがひかえめだと?
クラーナ博士:はい。この件について私が正しいのなら、そのことが公衆衛生上に意味するところはきわめて重大であるので、むしろあやまっている方がさいわいだと思うくらいです。いまや携帯電話の使用者は40億人もいます。そのなかには3歳児さえいるのです。
バートレット:そうです、その子どもたちにこそ、最大の脅威があります。今日でははじめての携帯電話をわたされることは、人生への大事な切符です。子供たちは無線の世界に住んでいます。電話で何時間もしゃべって毎日すごすことは、彼らにとってはなんでもないことです。
10代の少年1:平均して1日に4時間は使っていますね。夜にはいつも長い会話をしているし、電話はおおいに使っています。
10代の少年2:僕も多分、1日4時間というところですね。
10代の少年3:僕たちは携帯電話で意思疎通をはかりながら育ちました。携帯電話は、どこにでももっていけるから便利ですよ。だから携帯電話は、友達と意思疎通するための、一番簡単な方法です。
テオ博士:脳腫瘍、それも悪性腫瘍で診察をうける子どもたちがふえていることに、私は本当に、心配し懸念し憂鬱になっています。この3、4年のあいだに、6人ほどの腫瘍の子どもを診察していますが、良性であったらいいと思うのに、すべて悪性でした。私たちはなにか、とんでもなくまちがったことをしているようです。
バートレット:「携帯電話世代」にもすでに警告が発せられていますが、ジョン・ブリヤント氏のような長期利用者はまさに、せまりくる災厄の最初の波といえるでしょう。で、お父さんは、君が物心ついたときには、もう携帯電話を使っていた?
マーガレット:父さんは間違いなく最初の利用者のひとりでした。以前はもっている人がほとんどいなかったから、友達はカッコイイっていっていました。
ジョン:そんなにカッコよくないって、いまなら友達にいいたいかな。
マーガレット:そうね、いまの父さんの頭をみるとね。
バートレット:実はあまり時間がありません。ジョンさんはシドニーで緊急手術をうけようとしています。テオ博士に腫瘍を摘出してもらって、家族とともにすごせる時間を数か月のばすことを、氏は希望しています。幸運をいのります。私の祈りは必要ないかもしれませんよ。
ジョン:うん、でもわしはまだ強いから……。テオ先生も信じているし。大丈夫だ、わしはまだ強い。病気ともたたかえるよ。
マーガレット:数時間後に会いましょう。
ジョン:愛しているよ。
バートレット:これは針の先のような正確さと、非常に安定した手が要求される3時間の手術です。1ミリか2ミリまちがえると、ジョンさんは植物人間に?
テオ博士:ええ、そのとおりです。ほら、ここに脳があるでしょう。脳のここをきずつけると、彼は麻痺してしまいます。手足をもいでしまうのと同じです。おお、おそろしい。
バートレット:これが全部腫瘍ですか。
テオ博士:ええ。
バートレット:愉快ではないですけど、よく見てください。将来においては、毎年何百人いや何千人もの、オーストラリアの携帯電話使用者が、脳腫瘍を発症します。
テオ博士:砂から手を出して、なにかをなさねばならないと、私たちが認識するまでは、ますます多くの若者たちが、このおそろしい病気で死んでくのです。
バートレット:携帯電話の使用はどんどんふえているではありませんか。先生が正しいのなら、私たちはちょっとした困難にあることになりますね。
テオ博士:ちょっとした困難ではありません。私たちは、大変な困難のなかにいるのです。
バートレット:でも同意しない方もいます。携帯電話と脳腫瘍とのあいだに関連はあると思われますか。
ロドニー・クロフト教授:全然思いません。よろしい、携帯電話を、通常使用するときのように、ここで接続してみましょう。
バートレット:ロドニー・クロフト教授は、携帯電話に関する最近の発見に異議をとなえています。脳に対する電磁放射の影響に関する政府の研究計画を、教授は主導しているのです。放射が脳に浸透することは、教授もみとめています。すると、放射は頭蓋をとおりすぎて、頭の中に入ると?
クロフト教授:そのとおり、電話からの電磁放射は頭部に浸入します。むろん多量にではありませんが、脳およびその周辺の組織による吸収はたしかにあります。
バートレット:ですがクロフト教授は批判的でもあって、放射はとても低いのでまったく安全だと保証もしています。つまり携帯電話は、脳をわずかに加熱すると?
クロフト教授:そうです、およそ摂氏0.1度ですね。正確にそうです。この程度の水準は、なんらかの損傷をあたえるのに十分なものではありません。人がどれほど長く考えても、脳の温度が1度上がることはありません。心配することはないのです。
バートレット:すると彼らは、つまりビニ・クラーナ氏やチャールズ・テオ氏はまちがっていると?
クロフト教授:そのとおり。それが私の意見です。
バートレット:彼らはまちがっていると、思われるのですね。
クロフト教授:ええ。
バートレット:チャールズ・テオ博士のもうひとりの患者であるブレット・ケリーさんにも、同じことがいえるのでしょうか。
ブレット・ケリー:これこそ私を殺したもの、あるいは殺そうとしているものです。
バートレット:ブレットさん、携帯電話があなたに腫瘍をおこしたと、本当に信じていますか。
ケリー:まちがいありません。
バートレット:ブレットさんはシドニー西部で、土木事業に成功をおさめていました。そしてジョン・ブリヤントさんと同様に、日常的に携帯電話を使っていました。1日3時間くらいでしょうか。
ケリー:そんなものですね。
バートレット:2度の手術でも腫瘍はとりのぞけませんでしたが、いまでは安定しています。かなしいことに、腫瘍がふたたび脳に広がるのは時間の問題であることを知っています。何年くらい生きられると思われますか。
ケリー:精々6,7年ではないでしょうか。
バートレット:脳腫瘍はかつてまれな癌でしたが、いまではそうではありません。そしてチャールズ・テオ博士がもっとも懸念しているのは、脳腫瘍の劇的な増加が、携帯電話所有の流行と一致しているということです。
テオ博士:いまや脳腫瘍の発症例が指数的に増加しているというのは本当です。そして私たちは、その潜在的な原因について責任をもつか、あるいは少なくとも、その潜在的な原因を公衆に知らせなくてはなりません。
バートレット:それは私のいいたいことでもあります。もし博士やその同僚方が正しいのなら、文字どおり何千人もの人々が、どこかで病気にかかることになりますね。
テオ博士:まったくそのとおりです。いやもちろん、携帯電話を使う人すべてが、ということではありませんよ。タバコをすう人がみな肺癌になるわけでないのと同じことです。でも多数の人々が影響をうけるであろうことは信じています。
バートレット:博士ご自身は携帯電話をおもちですか。
テオ博士:はい。私は携帯電話をもっていますし、私の子どもたちももっています。でも私は子どもたちに、曝露を制限するようにいっています。どうするかというと、スピーカーモードかハンドフリーにするのです。もしもしジョンさん、こちらチャールズです。手術は成功しました、よかったですね。マーガレットさん、すべてうまくいきましたよ。
マーガレット:よかった。どんな具合ですか。
テオ博士:良好です。もう動けますし、麻痺することはないでしょう。
マーガレット:すばらしい!
バートレット:数日してジョン・ブリヤントさんは動けるようになりました。いまのところ手術は成功しています。癌がぶりかえすことがありえますから、命が助かったわけではありませんが、手術は彼に貴重な時間をもたらしました。
ジョン:数日で体が動けるようになるなんて信じられんよ。
バートレット:本当に信じられませんね。
ジョン:本当に反応することができて、感じが全然ちがうのだよ。
バートレット:お身内の方々にとってもいい結果ですね。家に帰って、お孫さんたちとだきあうこともできるのでしょう。
ジョン:そうするよ。またお会いしよう。
バートレット:よかったですね。
ジョン:ライアムさん、ありがとう。■

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