チェルノブイリ事故の健康影響: 15年のフォローアップスタディの結果

投稿者: | 2013年6月10日
第3回国際会議
「チェルノブイリ事故の健康影響:15年のフォローアップスタディの結果」の結論について
キエフ(ウクライナ)、2001年6月4-8日
吉田 由布子(「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク)

PDFはこちらから→csijnewsletter_018_yoshida_201306.pdf

ここで紹介している文書は、2001年6月4~8日にウクライナの首都キエフで行われた第3回国際会議の結論の訳である。私たち「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークもこの会議に参加した。
5日間にわたり健康影響に特化した発表と討論が行われた。会議の組織構成は以下のとおりである。

主催:世界保健機関(WHO)、「チェルノブイリの医師」協会
協力:国連人道問題調整事務所(OCHA)、国連代表ウクライナ事務所、国連チェルノブイリプログラム、国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)、国連原子放射線の影響に関する科学委員会(UNSCEAR)、ウクライナ医学アカデミー、ウクライナ医学アカデミー放射線医学研究センター・WHO協力センター、ウクライナ保健省、ウクライナ緊急事態およびチェルノブイリ惨事の結果からの住民保護省、原子力安全・放射性廃棄物・放射線生態学のためのチェルノブイリセンター

15周年のこの年、キエフでは4月18日-20日にも国際会議が行われた。「チェルノブイリ事故15周年。その教訓」(”Fifteen Years after the Chernobyl Accident. Lessons Learned”)と題するもので、IAEAやロシア、ベラルーシ、ウクライナの緊急事態省、および国連諸機関が組織構成団体となっているがWHOは参加しなかった。主要な議題は、チェルノブイリ原発の廃炉およびシェルター関連問題、事故による環境汚染問題、事故の医学的問題、事故および関連諸問題の社会経済的結果、であった 。

チェルノブイリ15周年に際して特筆すべきことは、欧州議会がチェルノブイリ15周年にあたっての決議(RC-B5-0321/2001) の中で、「これまで許容されてきた放射線モデルは、放射線被曝の結果現在生じている病気の出現を予測することができなかった」と述べ、WHOが4月会議には参加せず6月に会議を開催するに至ったことや放射線影響の研究のあり方について次のように決議したことである。

抜粋(8,9,11)して紹介する。

EU議会は、……
8.チェルノブイリの健康面は現在重要な問題であることに鑑み、6月にWHOが独自の会議を開催しようとしている事実、ならびにWHOがチェルノブイリ15周年記念会議にIAEAと共に参加していないということを高く評価する。


9. 最も影響を受けた3カ国で、特に子どもたちの甲状腺がんの大規模な増加、そして多くの種類の健康障害が大幅に増加していることに懸念を表明する。


11.これまでの放射線リスクモデルに対して疑問を投げかけている新たな科学的証拠に基づいて、特にチェルノブイリの放射性降下物の影響に関して、より広くヨーロッパ全体を通してチェルノブイリの影響の疫学調査を準備するよう、欧州委員会に対し要求する。また、IAEA、UNSCEAR、ならびにICRP、Euratom(ユーラトム、ヨーロッパ原子力共同体)に対し、現在のリスクモデルを再検討するよう要求する。

会議の結論についての評価は各人によって異なるかもしれないが、私たちは、放射線の確定的影響・確率的影響とは別に「その他の健康影響」という項目において、健康上憂慮すべき多くの状態の存在を示したことに注目した 。本結論の中で「公衆のヘルスサービスに関する勧告」や「研究への勧告」は、福島原発事故後の日本にとっても意味のある内容であると思う。

会議の模様の一部は、映画”「真実はどこに?」~WHOとIAEA 放射能汚染をめぐって”で紹介されている。主張の異なる専門家が同席し、映画で示されたように、なかば騒然とするような場面もあったことが印象に残っている。

なお、チェルノブイリの健康影響に関する報告書や国際会議の結論・決議など私たちが入手したもののうち、これまで日本ではほとんど紹介されてこなかったもののいくつかについて、以後紹介していく予定である。

注記:IAEAで掲載されている英文(文末URL記載)はところどころ行が脱落している(ページ最初または末尾の行)。

【「結論部の翻訳」は上記PDFにてお読みください】

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