【翻訳】第4章 shaping science(科学を整形する)結論

投稿者: | 2015年1月23日

「Bending Science研究会」より翻訳とエッセイ
第4章 shaping science(科学を整形する)結論
翻訳:瀬野豪志

pdfはこちら→csijnewsletter_028_bendingscience_seno.pdf

この章で裏付けられた公衆衛生と環境の研究を整形する試みが広がっているということは、共有されている科学的知識が必ずしも科学的方法を忠実に用いる科学者たちから生まれているのではなく、そのかわりにしばしば研究者と研究の成果に影響を与えようとする利益の擁護者たち(advocates)によってうまく行われた企てを反映していることを暗示している。NEJM(New England Journal of Medicine)の元編集者であるマーシャ・エンジェル(Mercia Angell)は、薬の安全性や効果を評価するために行われている臨床試験は「いくつもの方法で取り繕って仕立て上げられており、それはいつも起こっていることである」と言っている。公衆衛生と環境についての我々が共有している「科学的」知識のいくらかの部分が様々な歪んだ方法や偏った解釈の産物である可能性があるということは、新しい製品や近代的な産業の過程によって引き起こされる危険性から守るための機関や法廷を信頼している公共の人々を非常に不安にさせるだろう。

おそらくは人々を不安にさせるのみならず、ますますいっそう仕立て上げる科学が科学的な知識の道筋を仕立て直していくのである。生命医学分野の経験的研究は、「資金援助の影響(funding effect)」として知られているように、民間のスポンサーの資金が研究結果に(一貫してスポンサーにとって都合のいい)統計的に有意な差異をもたらすことを明らかにしている。1140もの生命医学の研究を要約しているある総合的な批評の記事は「産業がスポンサーになっている研究は、産業的ではない研究よりもスポンサーにとって都合の良い結論に至ることになりやすい」と結論づけた。資金援助の影響は食品の安全性と環境衛生の研究においても明白である。

たとえば、受動喫煙の健康への影響を評価している出版物での論評においては、それらが導きだす結論を最も推測できる要因は、タバコの産業に関係している著者によって書かれているかどうかということである。可塑剤ビスフェノールAの常用者における内分泌攪乱に関する2005年のある調査は、2004年12月までに発表された115の研究のうち、産業から援助されている11の研究では少量を摂取している場合の影響を報告しているものはないが、政府から援助されている104の研究のうち94の研究がその影響を報告していることを明らかにしている。

2003年にソフトドリンク、ジュース、ミルクの栄養学的な利益と危険性についての専門雑誌で発表されたある研究は、産業から援助されている研究は4倍から8倍もスポンサーに都合の良い結論に至りやすいと結論づけた。また、他の研究は、従業員のがんの発病率を調べている石油産業の委託研究や、長期間にわたって曝されることによる化学的な被害の増加についてのある製品の製造業者(アラクロール、アトラジン、ホルムアルデヒド、テトラクロロエチレン)の委託研究において、資金援助の影響を発見している。

これらの研究の進展は、これに強く反対する多くの科学者たちの関心事となっている。仕立て上げられた科学であることを指摘する編集者へのレターは、科学的な文献ではよく知られたものになっている。科学者たちは今、抜け目のない産業顧問研究者によって用いられる科学を仕立て上げる技術を白日の下にさらそうとする、またそうした計略に乗ってしまっている科学者に警告するための会合やシンポジウムに集まっている。科学雑誌はこの問題に目覚めて、米国医学会誌(JAMA)、Science、NEJMのような最も優れた雑誌の過去現在の編集者たちは、その活動に反対することを表明し、あらためて改革を指示し、実行するように奨励している。仕立て上げる科学の進展だけでは、ねじ曲げる科学の陣営とそれに反対する科学者たちとの間に今存在している、ものすごく大きな、方策や資源の差を克服してしまうことにはならないだろうが、反対する動きがあることは前進である。さらに重要なことは、それらが、政策関連の科学で論争的でまた監督が行き届かないような分野を支配することがある私的に援助されている研究を、監視し、管理することに向かっていく効果的な改革への道をかためているということである。■

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