【翻訳】パーム油栽培の生物多様性に対する影響

投稿者: | 2019年6月10日

パーム油栽培の生物多様性に対する影響

The impact of palm oil culture on biodiversity

原文はこちらの「GreenFacts」のサイトの「Level 1」「Level 2」

翻訳者:久保田裕 、上田昌文

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Level 1 ハイライト

1.パーム油はどのように製造され、その重要性は何か?

1990年代以降、パーム油は、主にその高収量作物のために、加工食品に広く使用される世界的な商品となっている。それは西部アフリカと南・中央アメリカに生息するアブラヤシの木から生産されている。しかし現在、パーム油の最も高い生産地はインドネシアとマレーシアとなり、世界全体に85%を提供している。特に世界全体のパーム油の約40%を生産しているのが小規模生産者であることがこの業界では非常に重要なことである。

新鮮なヤシの実を収穫した後、粉砕して種子と果実の果肉から別々に油を抽出する。種子からの油は主に石鹸や工業用、加工食品用に使用され、果実からの油は食料生産に使用される。パーム油農園では、1ヘクタールあたり3.8トンの油が取れる。ちなみに菜種油は0.8トン、ひまわりは0.7トン、大豆は0.5トンである。

世界の生産量のほぼ75%が食料品、特に食用油や加工油脂(マーガリンなど)に使われているが、昨今ではバイオ燃料の生産にも使われている。

2.アブラヤシ生産が生物多様性に与える影響は?

アブラヤシ栽培の開発による生物多様性への主な直接の影響は、アブラヤシ植林前の既存の森林伐採と、焼畑による従来住んでいた動物の生息地の喪失である。世界の一部の地域では、最大50%の森林減少がパーム油の生産に起因している可能性がある。ただしこれに関連しては、小自作農園は工業用よりも多様性に気を配る傾向がある。アブラヤシ農園が開かれて、オランウータンやトラのような種が追放されると、野生生物と人間の間の衝突もまた増加する可能性が高い。

ブタやヘビのような主にいわゆるジェネラリスト種[訳注:色々な種類の餌を食べる生物]は、そのアブラヤシ農園から産出される油種子がブタの飼料になり、またそこに集まる鼠やリスがヘビの餌になっているので、そこで成長できることになる。プランテーション労働者にとってはそのブタを食肉用に、ヘビを皮の材料にするために捕獲・販売すれば追加の収入源となっている。

しかし、植物油の需要が高まっていること、および同じ栽培地域でアブラヤシが他の油作物よりはるかに多くの油を生産できることを考えると、パーム油生産を止めることが生物多様性に対する実質的なよい影響を生む最善の解決策というわけではないかもしれない。実際、他の農業も生物多様性に大きな影響を与えていることは明らかである。

3.生物多様性以外にパーム油生産の影響はあるか?

パーム油生産のその他の間接的な影響には、森林伐採に関連する温室効果ガスの排出(CO2、メタン、亜酸化窒素など)、土地の伐採のための火気の使用、水質、淡水種の多様性、アブラヤシに関連する侵入種、害虫の繁殖の影響、そしてそれらの駆除による二次的影響が挙げられる。

4.アブラヤシが生物多様性に与える影響を軽減するために何ができるか?

アブラヤシ栽培の影響を緩和するために使用される主な戦略は、政府の規制から自主的な行動に至るまでの行動として、天然林と泥炭地の損失に対処することである。 生物多様性を考慮せずにアブラヤシを拡大することは国際的な生物多様性政策と両立せず、アブラヤシ開発許可の取得をめぐる汚職や共謀など、土地統治の困難なことと直接的なつながりは十分にある。

予測される悪影響を相殺し最小化するために、いくつかのステップを踏むことができる。 それは以下の通りである:

  • 回避:影響がそれほど深刻にならないよう、それが起こる前に対処する。
  • 復元:影響を受けた生物多様性の現場復元
  • 補償と相殺:失われた資源を取り替えるか、代替案を提供し、最終的な好影響を確実にする。

持続可能なパーム油に関する円卓会議(1)のように、原生林の開拓を避け、河川を保護し、火災を防ぎ、汚染を管理することを生産者に義務付ける自主的な認証システムがある。過去10年間で、森林破壊の問題に対する国民の意識が高まるにつれて、「ゼロ・デフォレステーション(森林減少ゼロ)を達成します」という個々の企業のコミットメントが増える傾向があり、パーム油産業はこのレベルのコミットメントが最も高い分野の1つである。半数以上の企業がそのようなコミットメントを持っている。生物多様性条約(2)(CBD)もアブラヤシと生物多様性に直接関連する政府間目標を設定した。

生産国政府もアブラヤシと森林破壊に関する国際的な議論に応答している。インドネシアの森林減少モラトリアムのようにアブラヤシが栽培されている国や、アムステルダム宣言(3)のようにパーム油を輸入する国では、完全に持続可能なサプライチェーンを支える政策が存在する。

1 rspo.org/about 
2 www.cbd.int/ 
3 www.euandgvc.nl/documents/publications/2015/december/7/declarations-palm-oil 

5.パーム油の将来は?

植物油の世界的な需要は急速に伸びている。 2050年の需要は2008年の2倍になると予測されており、2013年の約1億6,500万トンから3億1000万トンの需要が増加している。 例えば、より良い管理やより生産的な品種の使用を通じて現在の生産の収量を増やすことは可能だが、パーム油生産は投資家にとって経済的にもうかる試みであるため、必ずしもそれ以上の開発や土地転換を行わないとは限らない。

アフリカや南アメリカではまだ比較的生産量が少ないアブラヤシを栽培する余地があるが、これらの地域でのアブラヤシ農園の拡大による環境への影響は十分に検討されていない。。

6.パーム油生産の影響に関すして私たちの知識が不足している点は何か?

さらなる調査を必要とする最も重要な点は以下のとおりである。

  • アブラヤシ開発の社会文化的および経済的影響
  • さまざまな植物油作物の空間的分布
  • 制約を理解し、将来の拡大をモデル化するための過去のアブラヤシ拡大のモデリング
  • 地域の気候と水環境に対する大規模な拡大の影響
  • 生産者にとって最適な生物多様性管理のコストと利点
  • アブラヤシの領域中でどのように生息動物が生き残って移転するか
  • 伝統的なアブラヤシ生産の生物多様性の価値、小規模システムの実現可能性と生産性、およびそのようなシステムの保全上の利点の特性。

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