【翻訳】腸は何を語っているのか? 腸-脳間情報伝達におけるマイクロバイオームの役割の探求

投稿者: | 2018年9月21日

【訳者コメント】
腸内マイクロバイオーム(または腸内フローラ)の重要性は以前から知られています。この論文では腸-脳軸を通しての情報伝達に腸内マイクロバイオームが関与し、自閉症などの神経障害にポジティブな影響を与えることなどを過去の論文を含めて紹介しています。さらに腸内マイクロバイオームを人為的に操作することによって臨床への応用研究も進みつつあります。マイクロバイオームを改善するプロバイオティックス(ヨーグルト、乳酸菌など)の効用についても述べられています。現在の社会では、精神疾患が増加する傾向にあり、腸内マイクロバイオームの操作を臨床に応用して、精神疾患が改善される時代が来ることを期待したいと思います。

Environ Health Perspect. 2018 Jun 6;126(6):062001. doi: 10.1289/EHP3127

What Is Your Gut Telling You? Exploring the Role of the Microbiome in Gut–Brain Signaling
腸は何を語っているのか? 腸-脳間情報伝達におけるマイクロバイオームの役割の探求

Lindsey Konkel
ニュージャージー州を本拠地とするジャーナリストで科学、健康及び環境について書いている

原文はこちらから

翻訳者:五島廉輔、五島綾子、上田昌文

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1822年6月6日、フランス系カナダ人で毛皮貿易商のAlexis St. Martinはミシガン州、マッキナック島のアメリカ毛皮会社の店で誤って胃を撃たれました。1 その被弾で彼の腹部に大きく割れた傷が残りました。彼はその恐ろしい事故からやがて回復しましたが、その傷は胃に小さな開口部を永久に残したまま、完全に閉じることはありませんでした。1

彼の外科医であるWilliam BeaumontはSt. Martinのこの開口部を通して胃の分泌液の観察を始めました。後に、“胃の生理学の父”として知られるようになったBeaumontは種々のタイプの食物をひもに結びつけ、その開口部から吊るしました。その後で、彼は食物のどの部分が消化されているかを調べるためにひもを引き揚げました。これらの実験で、彼はSt. Martinの気分が食物を消化する速さに影響するのではないかと気づきました。例えば、St. Martinが怒りっぽい時、食物はよりゆっくりと消化されました。2

これら初期の観察によって脳と腸とが相互にやり取りをしていること(クロストーク)の最初の手がかりが得られました。研究者たちは後にこの脳と腸の双方向の情報伝達システムを“腸-脳軸“と呼びました。年月を経て、研究が進み神経系と免疫系を巻き込むいくつかのメカニズムと通して、脳が胃腸(GI)管に影響することが明らかにされました。2

最近になってやっと科学者たちは腸-脳軸への第三の構成成分の重要性を認識するようになりました。すなわち、腸内マイクロバイオームを構成するものは数兆のバクテリア、ウイルス、古細菌(注3)、そして真核細胞(注4)であるとしたのです。約10年以上前すでに、研究者たちは腸内バクテリアと多くの精神疾患や精神状態との間の興味をそそられる関係を発見していました。これらにはうつ病、不安症、自閉症スペクトラム障害(ASDs)(注5)そしてパーキンソン病が含まれています。2

マイクロバイオーム腸-脳軸についてのほとんどの初期の研究はげっ歯動物を用いて行っていました。3 無菌マウス(無菌条件で生まれ一切微生物を宿していない状態のマウス)は科学者が特別な微生物をそのマウスに接種でき、何が起こっているかを見ることができるために腸内フローラ(注6)の研究に広く普及しています。

現在は、さらに研究者たちはヒトとのつながりを精密に調査し始めています。神経科学を越えて、実験動物と人における腸内マイクロバイオーム研究によって、環境からの曝露が神経発育と脳内の化学にどう影響するかを調べる方法を変える環境衛生科学者も出てきています。

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