未来社会について考える            NPO法人The Future Societyの活動とは     市民研理事による読み切りリレーエッセイ 第6回

投稿者: | 2019年4月8日

未来社会について考えるNPO法人The Future Societyの活動とは

江間有沙(市民科学研究室・理事/東京大学)

「人工知能」の開発の方向性や雇用や倫理などに関する影響について、各国政府や大学、産業界などが様々な議論を行っています。「人工知能と社会」というテーマで、どんな人やコミュニティが何を議論しているのか、その舞台裏も含めて整理したものを、今年2月に「AI社会の歩き方」(化学同人)として出版させていただきました。

その中でも、議論の場作りの面白い試みとしてNPO法人であるThe Future Societyの活動を紹介したいと思います。このNPOは、「AIイニシアチブ」というオンライン上で人工知能と社会に関する討論を1年間運営していました。オンライン対話への参加者数は2200人、投稿者は702で1291件の提案が投稿されたそうです。

プロジェクトは2018年3月に終了し、2018年9月に報告書が公開され、9月26日欧州議会に提出されました。報告書の概要は日本語でも読むことができます。提言の中には、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」との類比から生まれた、人工知能の技術開発において取り組むべき課題について合意形成をする「人工知能に関する政府間パネル(IPAI)」の設立なども含まれています。ほかには人工知能によって国連の掲げる持続可能な発展目標(SDGs)を進展させることを目指した「AI4SDGセンター」の設立や、国際的な競争と協調を推進していく仕組みづくりが提言されています。

オンラインでの対話の設計は難しい面もありますが、「多様なステイクホルダー」を包摂していくための一つの方法として、興味深い取り組みです。議論を収束させるファシリテーターや期間を区切って内容を整理していくなどの工夫は必要ですが、今の時代だからこその新しい議論の方法が、今後とも多くでてくることを期待しています。

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