市民研がゆく〜事業所訪問録〜

投稿者: | 2023年12月24日

市民研がゆく〜事業所訪問録〜

報告者: 橋本正明  (市民科学者育成塾スタッフ)

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訪問先:群馬県高崎市倉賀野町、KSI(環境システムズ社)と関連事業所

面談:塚田社長、佐伯参与、山縣常務、谷古宇(やこう)支店長

訪問者:上田昌文(市民研代表)、壹岐健一郎(有限会社REBORN)、橋本正明

 

当日は晴天に恵まれ、市民研一行はそれぞれのルートで倉賀野駅にて集合。

倉賀野駅では佐伯氏、谷古宇氏が出迎えに、さっそくKSIの事務所へ移動。

 

JR八高線倉賀野駅ホームにて

KSI社屋前にて(手前は壹岐氏)

社長室にて主に塚田社長から社の沿革から企業理念、創立当初からの苦労話など、中間廃棄物処理業を切り口にしたグループの事業展開における興味深い様々な話題が語られた。

日本の国土は狭い。一事業者が農地を借り受けて行うにしても限界がある。バイオマスの基本は循環である。限られたスペースで限られた資源を回す。北海道は広いが、群馬は狭い。広大な土地ではできることが狭いとできない。ならばどのような知恵を出すか…etc。

その中で特に記憶に残ったのが【ゴミを扱っているのではない、『資源を扱っている』】という言葉である。恐らくここにこの会社が次に述べるような展開を見せるその原点があると思う。

その後、食品残渣を家畜飼料として再生する事業に乗り出すが、そこから更に養豚業、精肉加工業、うどん店の経営にまで展開させるテンポの良さ、東日本大震災後には後継者に悩む農家から耕作地を借り受け飼料用の芝の圃場の整備も行い、自社敷地内で発酵させて使用する念の入れようである。

また、豚精肉加工年間2万頭、食品事業(うどん店)への進出、3.11を契機に環境保全事業の一環として耕作放棄地の活用事業にも参画、今回はその一端を見学させて頂くことになった。

一時間近く事務所で過ごした後、車で数分の事業所内の見学をさせて頂いた。社長自らが先頭に立ち、施設の詳しい部分は工場長から説明があった。

塚田社長(中央)から説明を受ける


マットレス破砕機について工場長(左端)より説明を受ける

マットレスを掴んで破砕機(シュレッダー)へ投入する

昼の時間となり、一行は車で榛名山の中腹、十文字という場所にあるうどん店と羊牧場へと向かった。天候に恵まれていたはずだったが、段々天気が怪しくなり、

途中の山道で突然の突風とともに周囲の雑木林からカエデやブナの広葉樹の葉が雨あられ、いや、紙吹雪のように車の周囲を乱れ飛び、まるで榛名山が市民研一行を歓迎しているかのような見事な情景を目撃することができた。


十文字ミート駐車場より


いざ店内へ

店内は昼食時ということもあり、お客でごった返していた。一行は奥の事務所へ案内され、お勧めの肉汁うどんをご馳走になることに。店内に立ち込める甘じょっぱいうどんのタレの匂いが事務所にも押し寄せてくる。社長の話を聞きながらも否応なしに胃袋が催促のコールを鳴らし続ける。もうそろそろ限界だ。

十文字ミート店内にて(お勧めはメニュー表一番上の肉汁うどん)

そこへ満を持して、お勧めの肉汁うどんがやってきた。

サバ節でとった大味な汁にどっぷりと浸かり、ドンブリの底から高崎近郊の契約牧場で育った臭みのない三元豚の肉が積み上がり、氷山のように汁面からせり上がった上に店の付近(十文字)で採れたネギがトッピング、その脇にゴボウのかき揚げが豪快に巨大な円盤状となって突き刺さる。ちなみに自慢の肉は通常うどん一杯には多い方で約50g程度であるそうだが、社長は周囲が止めるのも聞かずほぼ通常の倍の100gの投入を断行したという事である。これは客にとっては嬉しい英断である。


ボリューム満点の肉汁うどん

皿に盛られたひもかわ麺は、地元で生産された「きぬの波」と「さとのそら」による中力粉のブレンドで「自慢の2段熟成麺」と言うだけあって、しっかりとコシがあってモチモチした歯応え、330gと、肉と汁が盛られた丼に比してなかなかボリュームであった。そして先述のゴボウのかき揚げは、最初はサクサク感があるが、汁に浸していると柔らかくなり、噛むと麺のようなシコシコ感が出てきた。これは「第二の麺」とも呼ぶべきものであるだろう。

これらを完食するにあたり、通常のうどんでは得られない満腹感と腹持ちの良さが感じられた。

ゴボウのかき揚げにかぶりつく壹岐(左)、上田(右)両氏


丼の底から肉を持ち上げてみた(重い…)

実際、この後空腹感を感じることは全く無かった。日によっては30分待ちの人がいるくらい人気である理由の一端が見えたような気がした。

隣接する羊牧場には、ノフオーク種が2頭だけ、のんびりと草を食んでいた。いつもはもっといるが今は繁殖期のため大半が肥育場にいるそうである。

榛名十文字ミートに隣接の羊牧場にて

肥育場へ車で移動、さらに近くで羊を見学

今はまだ事業として展開していないが、ノフオーク種は繁殖力が高いため、頭数を増やし食肉用として展開する予定だそうである。

羊たちは意外にも主にイネ科の植物を好むそうで、アブラナ科などの雑草でも食べるとのこと。さすがに何でも食べるという訳ではないが、そのつもりになれば、一時話題になったヤギと同じように空き地や河川敷の雑草を食べることもできるそうである。これは近年特に問題になっているクマやイノシシの隠れ場所になっている里山や河川敷の雑草の除去に、さらにはアイガモのようにひとシーズンお役に立った後に食肉としてもう一役買えそうなポテンシャルを持っているかも知れないと感じた次第である。

次に肥育場のすぐ近くにある榛名事業場に一行は移動、家畜の飼料倉庫(乳酸発酵場)を見学した後、事業場の事務所にてさらに詳しく話を伺った。

飼料畑を行うようになったのは3.11の後から。最初は農業辞める人から頼まれて、どんどん拡大して田んぼ30町歩、5kgの袋が520くらい、つまり2.5tの収穫量、小麦は少しなので店で使う分は賄えない。ジャガイモは顧客にお中元として配っている。

発酵飼料は1日40t出荷、芝は2種類、バミューダ芝はゴルフ場にも使われているそうである。実際に近寄って匂ってみたが、ツーンと香ばしい発酵した匂いはそれぞれ異なっていた。

牧草刈り取り用トラクターは、圃場の面積や形状に対して小回りの利く小型や広い面積用の大型を使い分けしている。

最近では特に畜産業者はなかなか臭いが気になるとして市街地や人家の近くでは受け入れてくれない。知り合いに土地を借り草津の人里離れたところで行うことに。

酪農で出る豚のふん尿など、バイオマスが10t出ると8tが消化液として出るが、使いきれず余る。利用法に困っている。近隣の農家などに勧めているがなかなか受け入れてもらえない。消化液の成分分析を行い、既存の農家で普及しなければ自社で導入し、成功事例を作って普及へ繋げるのが理想。

また、農家と牧畜業の人たちの違いについての社長の持論を伺った。それによると、農家は個人主義で、技術やノウハウは門外不出扱いで仲間にも教えてくれない。なので新しい発想ややり方が育ちづらい。それに対して牧畜業者は仲間を増やすことが必要なので、仲間意識が強い。自ずと情報交換や交流が生まれる。とのことである。


榛名事業場全景(KSI社HP:
http://www.ksi-eco.jp/haruna/より)

帰りは小雨がぱらつく中、高崎駅へ向かう車窓から、まるでこの訪問が大成功に終わったのを祝福するかのように虹がうっすらと西の空に掛かった。

高崎駅で塚田社長とガッシリと握手を交わし、高崎線鈍行を乗り継いで帰宅の途へ。男三人、次のイベントの原案や9月に実施した峡東エコツアーについての意見を交わしながらあっという間に大宮での乗り換えに、挨拶もそこそこに次のホームへ移動する。

高崎を出てから2時間半かけての帰宅であったが、驚いたことに腹は減っておらず、危うく晩御飯を半分に減らされるところであった。昼に食べたうどんがそんなに腹持ちがいいとは思ってもみなかった。

色々な意味でお腹一杯の訪問と相成ったと実感した次第である。 (了)

 

編集後記

今回の訪問は一言にまとめてしまうなら、「街のゴミ回収の業者さん」の会社訪問でしかない。しかしこれが違うのだ。

単純に市町村から事業委託されて町のゴミを回収するだけなら、何も養豚業や精肉加工を行う必要もなく、うどん屋なんてする必要もない。ましてや休耕田になりそうな田畑を借りて飼料作りに精を出す必要なんてない。

そんなことを私たちは普通考えない。

そんなことを普通私たちは求めない。

そんなことを社会はこれまで求めてこなかった。

しかし、この会社は違うのだ。棄てられてしまうモノを逆に宝として生かす方法を考え、社会が動かなければ自分が動いてみようと自らを率先して動かし、人々を循環型社会へ向かわせる号砲が鳴り響く2周り前から走り出し、気が付けば社会が後からついてきているのである。

しかし何のために彼らはそうするのだろうか。

使命感か、義務感か…、いや、たぶん違う。

彼らは「そうしたいから」するのだ。

正確に言うと、『カネではなく、何かを残したい』という塚田社長の想いに共感し、その理想を実現するために彼らはそうするのだ。

食品残渣を扱うようになって、捨てられる残渣を減らし再利用するために養豚業をはじめた。養豚業をやるならと精肉加工にも進出した。それなら肉を使って何かしたいと、うどん店を開いた。

彼らはごみを日頃から扱っているからこそ、食べることが一番大切であることを知っているのだ。そしてその視点から食べるためには美味しいもの、安全なものを作ることに気がついた。きっとそうなのだろう。

        

KSI社ホームページTOPより

 

牧場から高崎駅までの車中で市民研の一行は塚田社長から、社長がかつて先輩から頂いたという【食は人を良くすると書く】という言葉を拝聴した。

たぶん、そういうことなのだと思う。

そしてしっかりと両の掌で力強く交わした握手の温もりは、月並みな言葉だが、溢れ出た塚田社長の飽くなき情熱の熱量なのだと思えたのだった。

 

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