調布市つつじヶ丘での地盤改良工事に伴う、 地下水に関連する懸念事項についての公開質問状を出しました

投稿者: | 2023年8月8日

以下に掲げました「調布市つつじヶ丘での地盤改良工事に伴う、地下水に関連する懸念事項についての公開質問状」を、NEXCO東日本、NEXCO中日本、国土交通省の各担当部署宛に8月21日を回答期限として送付しました(2023年8月7日付)。

ここで取り上げている地下水の問題については、以下の学習会が予定されています。この質問状に関連した、地下水に関する基礎的な知識からはじめて、様々な問題点の開閉を解説し、今後に役立てないと思います。ぜひご参加ください。

 

8/26(土)18:00- 
学習会「地盤補修工事は地下水にどう影響するのか」(連続学習会「東京外環道の工事のリスクを知る」第2回)

 

*********************************

 

調布市つつじヶ丘での地盤改良工事に伴う、
地下水に関連する懸念事項についての公開質問状

 

送付した文書のPDFはこちらから

送付先:
東日本高速道路関東支社 東京外環工事事務所 所長 上村 治 様
中日本高速道路東京支社 東京工事事務所 御中
国土交通省 関東地方整備局 東京外かく環状国道事務所 所長  関 信郎 様

提出者:
外環振動・低周波音調査会
(世話人:上田昌文(NPO法人市民科学研究室・代表))

回答返信先:NPO法人市民科学研究室

回答期限:2023年8月21日(月)

 

【要望および公開質問状の送付につきまして】

前略

私たち「外環振動・低周波音調査会」は、2020年10月18日に発生した東京都調布市の東京外環道トンネル工事現場直上での陥没事故の、被害の実態の究明とそれへの適正な対策の実施を求めることを目的に、現地の住民と特定非営利活動法人市民科学研究室が共同で発足させた組織です。これまでの調査活動の成果の一端はこちらのウェブのサイトのページで公開しています。

2023年8月2日から調布市東つつじケ丘の住宅街で「地盤改良工事」が始まりました。この工事に関しては事業者と地元住民の間で意見交換の場が設けられ、それに関連する『地盤補修の施工に関するオープンハウスの資料』(令和5年6月16日・17日)や『地盤補修の施工に関するオープンハウス及び意見交換の場におけるご意見とその対応のとりまとめ』(令和5年7月25日)が公開されています。

私たちはこれらの資料を詳細に検討した結果、多くの疑問点や不明点をそこに見出しました。事業者の方でこれらに的確に答えていただかなければ、地盤改良校に伴って新たな事故や被害が生じるという懸念を、私たちは払拭することができません。

そこで今回は、まず地下水の問題に関して、以下の質問を提出することといたしました。上記【回答返信先】に記しました宛先に、同封しました返信用封筒を用いての書面もしくは電子メールにて、ご回答いただくようお願い申し上げます。

なお、回答につきましては、まことに勝手ながら、2023年8月21日(月)を期限とさせていただきます。もし、回答にさらに時間を要する場合は、予めご連絡いただければ幸いです。またいただいた回答は私たちのウェブサイトなどで公開させていただくことにしています。その点もご了承下さい。

 

調布市つつじヶ丘での地盤改良工事に伴う、
地下水に関連する懸念事項についての公開質問状

  • 基本となる指標やデータの意味に関して

1)地下水の区分、位置、流向などに関して

『地盤補修の施工に関するオープンハウス及び意見交換の場におけるご意見とその対応のとりまとめ』(令和5年7月25日)において、「今回の地盤補修範囲では、武蔵野礫層中に存在する地下水を浅層地下水と定義し、東久留米層中に存在する地下水を深層地下水と定義しています」と述べている(No.15)。この「定義」はいかなるボーリング調査の柱状図からのデータ、あるいは複数の観測井の水位のデータから導かれたものであるのかを説明していただきたい。

②上記「定義」において、浅層と深層の2つの帯水層があるとしているが、そのためには遮水層が存在していなければならない。その遮水層を含めて、関東ローム層、武蔵野礫層、東久留米層が、今回対象となる東つつじケ丘の地盤補修範囲(直上エリアである220m☓16m)の直下において、それぞれいかなる深度に分布しているのかを明確に示していただきたい(それらの分布を三次元的に示す、科学論文などのデータを提出いただきたい)。

2)流動阻害に関して

③『地盤補修の施工に関するオープンハウスの資料』(令和5年6月16日・17日)において、「東久留米層は、水を通しやすい地盤であり、地下水は地盤改良体を回り込みます」と述べている(21ページ)。

これは、地盤補修範囲の直下に作る地盤改良体によっては地下水の流動阻害は起こらない、と判断しているということであるのか。であるならば、地下水の流量や流向・流速と地盤改良体の位置や大きさをふまえての、その物理的根拠(水理学的・土質力学的根拠)を示していただきたい。

④上記質問に関連して、地盤改良体と地下水流の交差する角度によっては、地下水流動阻害が起きる可能性があるのではないかと推測する。また、地盤改良体と地盤との間には必ず「みずみち」が生じるとも推測される。こうした推測が正しいのか正しくないのか、「みずみち」における流動状態についての説明も含めて、明らかにしていただきたい。

3)三次元浸透流解析に関して

⑤『地盤補修の施工に関するオープンハウスの資料』(令和5年6月16日・17日)において、「地盤補修に伴う地下水位変動は、地盤補修範囲を透水係数ゼロ(地下水を通さない構造)として3次元浸透流解析を行い、その結果、浅層地下水で10cm未満、深層地下水で20cm程度と予測しています」と述べている(20ページ)。これは、三次元浸透流解析にどのようなデータを入力することで得られた「予測」なのかを示していただきたい。すなわち、インプット条件を決定した柱状図、地下水位測定、流向、流速、流量等の基礎データを、出典も添えて、すべて明らかにしていただきたい。加えて、地盤補修範囲は、スリッド配列、すなわち遮水壁でなく地盤改良を実施した柱間が密着していない配列になっているはずであり、それなのになぜ「透水係数ゼロ」としているのかも説明していただきたい。

  • 地下水の流向・流速に関する所見の根拠に関して

⑥『地盤補修の施工に関するオープンハウスの資料』(令和5年6月16日・17日)において、浅層地下水ならびに深層地下水の流向が矢印で示されている(20ページ)。この流向や流速をどのように決めたのか、その根拠となる地層断面図(ボーリング柱状図)のデータや観測井の水位のデータ、あるいは透水係数を決めるためになされるだろう現場での種々の試験から得られたデータがあるのならそれを示して、説明していただきたい。

⑦上記質問にあわせて、(地表を含む)浅層から深層への高さ方向及び縦断面方向での連続系における、流向、流速、圧力等の値を3次元ベクトル(矢印で示す量)や等高線で示していただきたい。それらのうち、示すのが難しいとうい事項があるとするなら、そのことの根拠も示していただきたい。

⑧ボーリング調査の結果にある「含水比」は何を見るために必要な指標なのか説明していただきたい。含水比は排土量管理計算のために必要なのではないではないかと推測するが、そのこと以外にも、地下水の挙動を知るためにその値をどう使うのか、使わないのかを含めて、説明していただきたい。

  • 地下水位変化の見積もりとその根拠に関して

⑨『地盤補修の施工に関するオープンハウスの資料』(令和5年6月16日・17日)において、「地盤補修に伴う地下水位変動は、地盤補修範囲を透水係数ゼロ(地下水を通さない構造)として3次元浸透流解析を行い、その結果、浅層地下水で10cm未満、深層地下水で20cm程度と予測しています」と述べた後に、「この変動量は、近年の降雨影響等による水位変動量と比較しても小さく、地盤補修による影響は、ごく小さいと考えています」と述べている(20ページ)。例えば地盤沈下は、地上部での過剰取水により地下水位が低下し、帯水層の水圧の低下を引き起こされて生じる場合があることが知られているが、その場合の地下水位の変化と一時的な降水で地下水位が変化することとは区別して考えるのが普通である。地盤補修によってもたらされる可能性のある長期的な地下水位の変化を、季節変動と比較すること自体が、意味のある比較になっていないと考えられる。季節変動幅を超えなければ(地盤改良体がもたらす地下水への)影響はないと判断することにはいかなる科学的根拠があるのかを述べてもらいたい。

⑩上記の20ページにおいて季節変動について言及しているが、これは気候変動に伴う激しい降水などのファクター(短期的あるいは長期的の降水量の変動)を想定しているのだろうか。最もリスクの高い場合を想定しておかねばならないと考えるが、その点についての見解を述べていただきたい。

⑪地下水位の変位がどの程度になれば、地表への影響が出ると考えられるのか、その閾値について、わかっていることを述べていただきたい。

  • 地下水モニタリングに関して

⑫『地盤補修の施工に関するオープンハウスの資料』(令和5年6月16日・17日)の22ページにおいて、モニタリング箇所として5つの観測井(A-1,A-2,B-1,B-2,C)が挙げられている。地盤改良体の先端部近傍、中央部、末端近傍に、改良体を挟んで2か所ずつ計6か所は必要ではないのかと推測されるが、もし先の5つの観測井の位置が最適だと考えるのであれば、その理由について述べてもらいたい。

⑬地下水などの影響を把握するのに、地下水位を測るだけでなく、地盤改良体の地上部およびその周辺の地表面の高さの変化(変位)をモニタリングすることが必要だと考えるが、それに対する見解を述べてもらいたい。こうした地下水位および地上面変位のモニタリングはどれくらいの頻度でなされるのが適当だと考えられるのかを述べてもらいたい。

⑭地下水観測井について、次の疑問に答えていただきたい。

(1) 地下水位観測井ではどのようにして地下水位を把握しているのか。手測の場合の観測頻度はどのようなものか。

(2) 地下水観測井は2本の観測井で一組になっているようだが、掘削深度が異なる場合にそれぞれの掘削深度を教えていただきたい。

(3) 一組の観測井で水位が異なる場合、遮水層構造(遮水層の上端・下端深度、遮水層の土質と判断した資料、遮水層の透水係数、および粒度、土粒子の密度試験を実施している場合はそのデ-タ)を開示していただきたい。

(4) 各地下水位観測井で遮水層を確認している場合は、その分布、連続性を示していただきたい。

 

以上

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA