大豆自給のゆくえ 生産・消費の世界動向から考える

投稿者: | 2009年8月1日

写図表あり
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大豆自給のゆくえ 生産・消費の世界動向から考える  上田昌文
「大豆の自給率5%」--これほど身近で長年にわたって毎日のように食されてきた食材の自給率がこのていたらくで、私たちはいったいどうなるのか? 日本の低い食料自給率を問題視するときに必ず槍玉に上がるのが、大豆だ。市民科学研究室ではかつて、「”関係性の食学に向けて”食材から探る第4回 大豆」と題して、大豆の価値を総合的に見直し、自国産の復活への期待をこめたレポートを書いた(旧版『市民科学』第11号2006年3月号)。今回、「フードマイレージを考える」セミナー第2回「大豆のフードマイレージを考える」(2009年7月10日、リビングサイエンスラボ・主催)をきっかけにして(第1回目は「ミネラルウォーター」で『市民科学』第23号2009年3+4月で詳しく報告した)、広く国際貿易の動向をふまえて、大豆の生産と消費の行方を探ってみた。以下のレポートはその際の発表を要約したものである。
まず、私たちは大豆をいかに消費しているのかを、農水省の最新データ(2008年)で見てみよう。
2008年の景気の悪化、全般的不況は大豆の消費にも反映されていて、2007年に比べて国全体の消費量は11%減少して423万トンであった(うち371万トンを輸入)。これは主に油の値上がりが影響しており、大豆油のほぼ全量を輸入に頼っている日本では、油の消費が減ると、自給率は相対的に上がる。大豆の自給率は1970年以来5%前後を推移していたが(◆図1)、08年は12%だった。
消費の内訳を見ると、423万トンのうちの①280万トン(66%)が大豆油であり、これはほぼ全量を遺伝子組み替え大豆で輸入して、国内で工業的に搾油している。国産大豆を用いて伝統的な”手絞り”で作られている大豆油は、きわめてわずかである。②105万トン(25%)が食用で、このうちの26万トン(25%分)を国産大豆でまかなっている。残りの③38万トン(9%)が飼料用の大豆ミールであり、これは搾油した後の脱脂大豆を用いている(輸入は12万トン)。
 健康志向を反映してか、大豆食品の消費はアジアをはじめ、世界各国で伸びている(◆表1)。しかし日本では、家庭での消費はここ10年で豆腐が5%減、味噌が15%減となっており、これは食生活の西洋化がいまだ尾を引いていることの表れかもしれない。

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