アースデイ 「食」フォーラム報告

投稿者: | 2004年5月4日

大野航輔
pdf版はfood_008.pdf
 「食」フォーラムの第一部はワークショップ。テーマは、「食を判断する基準」。各5 ~ 6 名の6つのグループに分かれた参加者は、まず始めに、「私の食生活」というワークシートに自分の食事を三日間振り返り、書き出していく作業を行います。みるみるうちに明らかになる自分の食事の不規則さ、哀れさ。僕の場合、朝食がどら焼きとコーヒーだけなんて日もあって、トッサにもう少し栄養価の高そうな磯辺焼きに変えちゃおうかと思いましたが、やめました。食事の献立と食事に対するモットーを隣の人と紹介し合い、自己紹介を兼ねる。そして、個々人が「食」の判断基準として思いつくものをどんどん模造紙に貼り付けていきます。「安全性」、「新鮮さ」、「香り」。七人七様の「基準」が四十ほど出たところで、今度はこれを似た内容で類別します。結果、安全性、雰囲気、残さない(食材を使い尽くす、食べ切る)から成る三つの島が出来ました。これらの基準をグループ毎に代表者が前に出て発表。興味深かったのは、基準として「誰と、どんな場所で食事をするか」、が多かったこと。食事をするための空間ってほんとに大事なんですね。
第2 部では,リレー講演が行われました。それぞれについて感想を述べたいと思います。
<「科学の目をとおしてみる食の世界」 上田昌文>
リレー講演の第一走者は上田さんです。科学と食は密接な繋がりがあり、食材そのもの、人体に対する食の作用の分析に科学は必須の上、食料生産の分野でも科学の影響力は計り知れません。遺伝子組み替え食品や化学調味料、甘味料を開発する道具として使用される科学は、現在、食の工業化を進める原動力となっています。これからは、「人間にとって最も基本となる食とは何か」を探ったり、日本の伝統食の重要性を総合的に判断したりするために,科学を道具として生かす方向が必要というお話でした。
<「日本人の戦後の食生活の変化」 鈴木猛夫>
 平易に、ゆっくりと噛み砕いてお話される姿は、さすがプロ。話の中心は戦後、アメリカ主導によって大体的に展開された「粉食(主に小麦)」「畜産」「油脂」奨励策による食生活の欧米化が、自給率の減少、成人病の低年齢化、日本型食文化の崩壊を引き起こす契機となったこと。個人的に印象深かったのは、「だし」の話。日本の伝統食の根幹とも言える「だし」を取る行為。せめて子供がいる前だけでも、「だしの素」などを使わずに、煮干や鰹節、しいたけなどから「だし」を取る姿を見せておくことが重要だとおっしゃっていました。「だし」を取ること、これは先人から引き継がれた文化遺産と言えるのですね。
<「歯から教わる体と食の関係性」 高澤博幸>
 高澤さんはちょっと変わった歯医者さん。講演を開始する際、開口一番、「虫歯の話はしません。」少しくらい虫歯があっても、歯並びが悪くても、本人が元気なら問題ナシ。それが自然の姿ならそれでいいんですよ、と、こんな歯医者なら思い切り口を開けられそう。
とはいえ、自由奔放すぎる歯並びのせいで上と下の顎が噛み合わなかったりするとちょっと問題。噛み合わせが悪いと身体の各部位に支障をきたす。歯はあくま
で身体の一部分。歯だけ見てると全体を見失う。ホントは歯医者は歯じゃなくて身体、頭全体、つまり、骨格を見るんです、と強調なさいます。重要なのは、歯ではなくて全体の骨格なんです。なるほど、聞いて納得のお話でした。
<「ためしてガッテンの”食べ方”」 北折一>
 NHKの人気番組「ためしてガッテン」のディレクター北折さんの登場。TV業界系の人にありがちな軽~いノリの方かと思っていたら、とても落ち着いた雰囲気の方で、話は論理的で明快。この人に直接受信料を渡したいというのが率直な印象。番組の製作過程におけるポイントをお話されました。当然、ブラウン管に写ってるものは食べれない。そこで、映像にどれだけ視聴者の関心を引付けるかが腕の見せ所。共感→なんだろう感→納得感→お得感の流れと、料理がおいしそうに見えること。これを押さえることが「ガッテン的テク」であります。
<「砂糖はどこから来るの?」 大野航輔>
 僕の出番。『つぶつぶ』に掲載した連載コラム、「食べ物はどこからくるの?」を基調とした砂糖についてのプレゼンです。現在の食環境では、砂糖の他にも各種甘味料が様々な食品に含まれているので、肥満や成人病との因果関係も否定しきれません。エネルギー消費量が高い子供といえども、惰性で清涼飲料水やお菓子を取ることは注意が必要です。
<「いるふぁの実践と”関係性の食学”」 大谷ゆみこ>
 アンカーの大谷さんにバトンが手渡され、関係性の食学についてのまとめ。大谷さんは、ピースボディ&ピースアースな食「未来食」を提唱してきましたが、従来の欧米型栄養学や関係性の分断された食環境を見直すためにも、食に関して新たなパラダイムが求められていると話されます。この未来を切り拓くパラダイムが、身体、食べ物、自然、料理、社会の関係性を総合的に捉えた「未来食スタイル」であります。そして、そのような場所から出発し、関係性を分析、裏付ける科学との連携を取って推進されるのが「食サイエンスプロジェクト」です。いるふぁと市民科学研究室が力を合わせ、食に対する新たな指針を生み出します!と、食の未来に対する希望に会場が包まれたところでリレー講演終了。休憩を挟み、参加者から集めた質問をもとに総合討論へ。活発に討論へ参加する方もいらして、会場を巻き込み大きな盛り上がりを見せました。
 第三部は「未来食つぶつぶ料理ライブ&交流パーティ」。パンに塗るクリームの調理を大谷さんが実演。りんごジュースとたかきび、お塩を少々放り込み、かきまわしながら煮るだけで甘い香りを放ち、キラキラ光るクリームの出来上がり。パンと一緒に口へ放り込めば、ん!おいし~い。簡単でおいしいなんて素晴らしいです。つぶつぶ料理を片手に、40 人ほどの参加者がそれぞれ話に花を咲かせます。食べて、話して、本当に忙しい。食を楽しみながら、会話を楽しむと、やっぱり時間がかかるんですね。そんな時間の大切さを体感しました。
(どよう便り 76号 2004年5月) 

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