和白干潟についてのよる意見書

投稿者: | 1999年4月16日

和白干潟についてのよる意見書

田中浩朗

doyou_protec199906.pdf

福岡市市長室 事業点検プロジェクト担当 殿
事業点検対象事業(アイランドシティ整備事業)への意見
提出者:田中浩朗

●結論:人工島全体を野鳥公園に!
1.埋立面積を大幅に縮小する。原則として,いま以上に埋立を進めない。
2.利用計画を大幅に変更する。すなわち,当初の計画で埋立地の一部に作られる 予定だった野鳥公園を埋立地全部に拡大し,埋立地全体を和白干潟と一体となった エコパーク(湿地・緑地・公園)として利用する。
3.埋立地は原則として公有地とし,博多港開発(株)の造成地については福岡市 または国が買い取る。
4.エコパーク(埋立地およびその周辺)の整備・利用については,市民や専門家 の意見が実質的に反映されるような仕組みを作って検討する。
5.博多湾をラムサール条約登録湿地に指定してもらい,和白干潟およびその周辺 の環境保護・再生について国から協力を求める。

●理由
○アイランドシティ整備の必要性はなくなった 福岡市の「事業点検方針」にある「点検の視点」に照らしてみると,人工島の目 的である港湾・住宅・サイエンスパークは,バブル経済の崩壊と経済低成長,少子 高齢化といった社会経済情勢の変化に伴い,どれも新たに多額の投資をしてまで整 備するほどの必要性はなく,したがって緊急性は当然存在せず,事業効果は期待で きず,採算性もない。また,都心部と海の中道をつなぐ道路による交通渋滞の解消 という目的は,香椎パークポートや人工島の新たな交通需要の発生により効果は期 待できず,それどころかむしろ渋滞がより激しくなる可能性がある。よって,埋立 工事を中断し,これ以上無駄な投資をしないことが現在とれる最善の道である。

港湾・住宅・研究等のための施設・用地がさらに必要な場合は,人工島以外のす でに存在する埋立地(香椎浜・香椎パークポート・百道浜など)や香椎操車場跡地 などを利用しつくすことで対応すべきである。それでもどうしても人工島に建設す ることが必要な施設がもし生じた場合にのみ,それを人工島に建設することが許さ れるべきだ。しかしその判断は,あくまで既存の土地を利用しつくした後ですべき であり,今からかなり先の話となる。

埋立工事を中断する場合,すでに投資された資金と埋め立てられた土地をどうす るかが問題となるが,このまま予定通り人工島を造成しても土地売却等による資金 回収のめどが立たない以上,いずれは税金の投入が必要になる。ならば,工事を中 断することにより借金をできるだけ抑えて,最初から税金を投入すべきである。
地価の下落と造成費の上昇により,もともと売れる見込みがない埋立地がたとえ 売れたとしても埋立地造成事業は赤字になる可能性がきわめて高い。しかし,博多 港開発(株)が造成した土地については,市や国が適正な値段で買い取ることによ り博多港開発(株)の経営も破綻せずに済む。 ○埋立地は野鳥公園として利用 もちろん,税金を投入する以上,市民に納得のいく理由が必要だが,それはすで に埋め立てられた土地を和白干潟と一体となった湿地・緑地・公園(エコパーク ,野鳥公園)として整備していくことで得られる。なぜなら,すでに世界的にも重 要な渡り鳥の渡来地として知られている和白干潟の自然をより豊かにし,世界に誇 れる福岡市の財産とすることができるからである。

埋立途中の疑似干潟化している部分には,多数の渡り鳥が飛来していることが確 認されている(1999年4月に確認されたハマシギ約5000羽など)。これをそのまま 人工干潟として残すことは,生息場所を奪われ続けてきた野鳥に新たな生息場所を 用意するという環境面でのメリットがあるのみならず,人工島の整備経費を低く抑 えられるという経済的メリットもある。また,アシ原や林,市民農園などの湿地 ・緑地を整備することも,都市化が進む和白干潟周辺の環境再生に役立つであろう 。

博多湾に存在した干潟は相次ぐ埋立によってほとんど消滅してしまった。わずか に残った干潟の一つである和白干潟でも,その豊かな自然はしだいに失われつつあ る。環境保護団体はその環境悪化の原因の一つとして人工島の建設を挙げているが ,人工島を人工干潟や緑地として利用することは,博多湾の自然を再生する事業と なり,環境保護団体の批判に応えることができる。
世界的な環境保護重視の流れの中で,ラムサール条約登録湿地を抱えることは大変名誉なことである。日本での登録湿地は11カ所,そのうち干潟は千葉県・谷津 干潟と沖縄県・漫湖の2カ所のみである。福岡市の博多湾がラムサール条約登録湿 地として指定されることは,福岡市の環境重視の姿勢を国内外に示すことになり ,高い評価を得ることは確実であり,それは単に名誉を得るのみならず,内外から のエコツアー客が集まり,観光都市福岡の新たな目玉となるであろう。

和白干潟は世界的に有名な渡り鳥の渡来地であるにも関わらず,そのことについ ての一般市民の関心・認識はきわめて低かった。その理由の一つに,そのように重 要な場所にふさわしい各種施設の整備がなされてこなかったということがある。驚 くべきことに,和白干潟周辺には和白干潟の場所を示す看板もなければ,公共のト イレや水道もない。ラムサール条約登録湿地として市や国が施設等を整備すること により,福岡市民の多くも身近に世界に誇れる豊かな環境が存在することを再認識 し,自らの誇りとするとともに,その自然にふれることで豊かな生活を送ることが できよう。

また,和白干潟と人工島埋立地からなるエコパークは,北部九州の環境教育の拠 点となる可能性を秘めている。国内外で環境教育の振興が叫ばれているが,環境教 育を進めるためには実際に豊かな自然を体験し,その素晴らしさを実感することが 必要だと言われている。しかし,実際にそのような豊かな自然が残されている場所 はきわめて少ない。特に,大都市近郊においてそうである。和白干潟は,大都市福 岡の市内に存在する豊かな自然であり,世界的に見てもきわめてまれな例である 。市内の学校の環境教育に活用できることはもちろん,先進的な環境教育施設・プ ログラムを用意することができれば,周辺自治体や近県,またさらに遠方からの利 用も考えられる。

○市民や専門家の意見の反映 さて,エコパークのために多額の税金を投入する以上,市民の納得がいくように 事業を進める必要があるが,それは手続きについても言える。つまり,これまでの ような行政主導の進め方(単に形式的に市民の意見を聞くだけ)ではなく,市民の 意見が実質的に反映されるような手続きを踏むべきである。そのための具体的な手段として,市民団体や住民代表,公募市民を一定数含む審議会を設置するとよい 。また,野鳥の生態や自然の再生に詳しい専門家,環境教育の専門家など幅広い分 野の専門家の協力を得ることも必要である。この審議会の会議や資料はすべて公開 し,審議会メンバーと一般市民が情報共有・意見交換できるような説明会も開くべ きである。

○国の協力を得る上述のような大幅な利用計画の変更は,単に福岡市単独の意思で行なうことはで きない。というのも,アイランドシティ整備事業には,港湾建設などの国の直轄事業と補助事業が含まれているからである。しかし,先に述べたラムサール条 約登録地の指定は,国の直轄事業であった港湾建設事業中止のための十分な根拠に なる。また,現在国が進める財政改革・公共事業見直しの流れにも沿ったものである。

 

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