本をめぐる3大疑問にお答えします

投稿者: | 1999年4月16日

本をめぐる3大疑問にお答えします

森 元之

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第97回土曜講座では、「出版流通の現状と課題について」と題して出版社に勤める森元之さんと徳宮峻さんのお二人に話していただきました。さすがに日々取り 組んでおられる仕事の話とあって、「本」に関心のある人にはこれまで知らなかった裏事情が次から次へと明かされる……といった感じの、こたえられない面白さがありました。参加者が少なかったのはなんとももったいない限りでした。当日の詳しいレジュメもありますので、必要な方はご連絡ください。当日参加された方お二人にも感想をご寄稿いただきました。

さてさて1月23日は、通常の土曜講座の第2週から第3週に変わったのがいけなかったのか、それともインフルエンザに罹ってしまった人が多かったのか、 とにかく発表者をふくめて10名程度の集まりでした。一口に出版と言ってもその内情は多岐にわたっていますし、立場によってもそのかいしゃくや主張がことなってきますので、すべてのことはこの通信に書くことはできません。そこで読 者の立場で現状の出版業界に対する疑問を3つ想定し、それに応える形で書いてみようと思います。

◆どうして本の値段は高いの?
この質問に対しては「本は高くない」と反論するしかありません。今回の発表のために資料をしらべてみました。すると一年間に出された本の平均単価が1970年ごろで1冊1500円弱、それが1996年頃で3000円弱でした。つまり約25年で本の値段は2倍にしかなっていないのです。この物価上昇 が他の商品と比べた時高いとはいえないでしょう。

◆どうして本は安売りやバーゲンセールができないの?
これには再販制度の説明が必要です。正確には「再販売価格維持制度」といいます。本以外の商品であれば通常メーカーから卸業者に売ってしまえば、そこでいったん契約は終了します。卸業者が小売業者に売るとき(つまり再販売するとき)の値段は卸業者と小売業者との間の契約であって、そこにメーカーの意図は 介在しません。少し前まで家電品の販売などで「メーカー希望小売り価格」という表示をしていたのはこの事情によります。つまりメーカーはあくまでも小売価格を希望するだけで、それを決定したり強制することはできないのです。しかし 本の場合には出版社(他の商品で言えばメーカー)が決めた値段が、問屋から小売業に再販売されるときにも強制力をもちます。つまり再販売価格が維持されているということなのです。

再販制度それ自体は商売の自由な競争を阻害するものとして独占禁止法で禁止されています。しかしある特定の物にかぎってはそれが適応除外されています。 独占禁止法自体は消費者の利益がそこなわれないようにするのが目的の一つですから、再販制度を認めることが逆に消費者の利益を守ることにつながるのであればそれを認めてきました。かつてはせっけん、歯みがき、雑酒、キャラメルなどにも再販制度がありましたが、その後次々に廃止されていき、比較的最近までは 化粧品・医療品などがありましたがそれらも廃止されてきました。著作物の中で も音楽レコード(カセットやCDも含む)はすでに再版制度からはずされています。そして現在は新聞・雑誌・書籍がその制度の対象になっています。したがってこの制度があるかぎり、基本的には本のディスカウントはできないことになっています。

◆どうして注文した本が手に届くまで時間がかかるの?
自分の買いたい本が店頭にあればいいのですが、中小の書店ではおいてないことが多い。かりに大きな書店でも昔の本だと店頭にない場合もあります。そのような場合個別の注文用紙(業界では短冊と呼んでいます)に注文を書きます。そ の短冊が書店から本の問屋である取次にとどくのに数日、そこから出版社に届くのにまた数日、さらに本が出版社から取次にくるのに数日、取次から書店に届く のに数日、この合計で2週間から3週間がたってしまいます。最近は情報伝 達の部分が電話やファクシミリを使うことで多少はやくなっていますが、それでも現物が流れるのには時間がかかります。その理由は、それぞれの書店には取次がクルマで配送していますが、1冊の本のために車を走らせることは非常に不経済ですから、ある一定量の箱に本がいっぱいになるまでは配送できないのです。 そのため取次から書店までの時間がかかってしまうのです。

ここで一つ、土曜講座の皆さんに出版社の立場から早く本を手に入れる方法を お伝えしましょう。それは出版社に電話をして直接送ってもらうことです。たいていの場合本代以外に送料を請求されますが書籍小包であれば300円から500円程度ですみます。いま電車やバスに乗って都心の大型書店にまででかけるとするとそのくらいの交通費はかかりますから、人込みにもまれる面倒を考えれば無視していい金額ではないでしょうか。直接送ってもらうときの方法は大きく以下の3通りです。

(1)本を先に送ってもらう。本と一緒に請求書・振替え用紙などを同封してくれるので本がついた後払う。
(2)郵便もしくは宅急便の着払いで送ってもらう。この場合は、本が届いた時 に郵便屋さんか宅急便の運転手にお金を払えばそこで精算は完了。ただし直接受け取れる時間や場所を指定する必要がある。
(3)出版社によっては事前に郵便振替えや銀行から入金をしてくれというところがあります。入金が確認されたら本が発送されます。少々時間がかかる。
また、東京の山手線内にある出版社であれば直接その会社に買いに行く方法も あります。書店をいくつも回るよりもその方が効率的です。ただし事前に電話して、そのようなことを受け付けているかどうか、また在庫があるかどうか確認しておく必要があります。出版社によっては事務所と倉庫が分離しているところもありますから。
……ということで皆さんの実用になりそうなことを書いたのでこのあたりで筆 をおこうと思います。細かなことを書いているときりがありませんが、当日参加しようと思っていたのに都合が悪くなった方や、ぜひくわしく議論したいという 方などにはあらためて個別に(あるいは数名のグループ単位で)出版のことについて話すことは可能ですので、ご連絡ください。 (会社の電話 03-3291-3258)

 

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