プロジェクト報告◆科学技術評価プロジェクト③ 産業技術政策に焦点をあてて

投稿者: | 2002年4月18日

プロジェクト報告◆科学技術評価プロジェクト③
産業技術政策に焦点をあてて
科学技術評価プロジェクトリーダー 藤田康元
doyou55_fujita.pdf
 前回の報告からこの間に行った活動は、3月31日から4月1日の合宿のみです。
 場所はPJメンバーである尾内さんのお宅をお借りした参加者は尾内さん、上田さん、藤田、他1名でした。合宿でやったことをまとめると以下の三つです。
(1)最近の半導体産業と旧国立研究所の動向について報告と議論。(3/20『朝日新聞』朝刊記事「半導体開発へ5社連合 NEC・東芝・富士通・日立・三菱 次世代の規格統一 国支援で新会社」等を参照)
(2)わたしたちのPJを今後どうすすめるかの議論。特に国のプロジェクトである「量子化機能素子の研究開発」を今後どう扱うかについて、以下の点を確認。
・国の具体的なプロジェクトを対象にできるだけ焦点の定まったことをやる。
・とりあえず「量子化機能素子」に関してできることをちゃんとやる。
・将来的には別の対象にも取り組みたい。
(3)日本の産業(技術)政策に関わる文献の学習と議論。
 とりあげた文献:ダニエル・沖本『通産省とハイテク産業』、リチャード・J・サミュエルズ『富国強兵 技術戦略にみる日本の総合安全保障』、山田敦『ネオ・テクノナショナリズム グローカル時代の技術と国際関係』
 今後すぐにできる作業として以下の二つを決めました。
(1)量子化機能素子の研究開発」の評価に関して『中間評価報告書』『プレ最終評価報告書』『最終報告書(案)』の「評価」の章の記述を互いに比較して気になる点を拾い出す。
(2)進藤宗幸『技術官僚』(岩波新書)を読んで生かせる点を指摘する。
 また、今後参照したい文献として次のような著書があがりました。
★中岡哲郎ほか『戦後日本の技術形成 模倣か創造か』(日本評論社)/★新藤宗幸『講義 現代日本の行政』(東大出版会)/★西川伸一『官僚技官 霞ヶ関の隠れたパワー』(五月書房1600円)
 残りの字数を使って、合宿でとりあげた三冊の本の簡単な紹介をしたいと思います。
 『通産省とハイテク産業』は、通産省の産業政策の有効性を説明する中心的要因として、通産省そのものではなく、その活動の場である日本の複雑な体制全体に目を向けたものです。具体的には半導体産業を取り上げています。かつて影響力を持った「日本株式会社論」やチャルマーズ・ジョンソン『通産省と日本の奇蹟』の議論(通産省の産業政策をそのものを重視する)などの批判になっているといえます。合宿では尾内さんが手際よく解説してくれました。
 私が紹介した残りの2冊について。『富国強兵の遺産』は、その副題が示す通り、日本政府の技術政策に日本独自の安全保障の考え方を読み取った研究です。著者は、外国の技術を習得して「国産化」し、それを国内産業に「普及」し、国内企業を「育成」するという三原則を日本のテクノナショナリズムの中枢として分析しています。主として航空機産業を扱っています。『ネオ・テクノ・ナショナリズム』は、グローバリゼーションの進行によって国家は衰退に向かっているのか、それとも、健在なままのか、という問いを基底にして、ここ数十年の技術と国際関係(具体的には日米の半導体政策)を分析したものです。著者はまず、現状は技術が広い地域に拡散しそこで統合されるグローバリゼーションのプロセスだけではなく、技術が狭い地域に集積し地域間の違いが際立ってゆくローカリゼーションのプロセスも同時進行しているとし、「グローカリゼーション」と捉えるべきだとします。そして、国家の技術政策は「グローカリゼーション」の波を利用した「ネオ・テクノ・ナショナリズム」へと向かっていると主張します。つまり、国家の役割は変容しているとはいえ、決して衰退してなどいないというわけです。
 以上の三冊はともに大学の、しかもみな政治学の分野の学者の著作ですが、私たちのPJにとって重要な背景知識を与えてくれるものとしてとりあげました。今後も科学技術政策に関わる生の一次資料を主たる分析の対象としながら、時にはこうした2次文献も学習・議論の対象にとりあげてゆく予定です。しかしこれはもちろん補助的な作業です。メンバーが全員通読する必要もないとしてやっています。難しい「お勉強」の会となっては、まずいので。■
藤田康元プロフィール
 丙午生まれの年男。大学院で科学史の勉強を長らくしている。最近は非常勤講師として教えたりもする。目下の研究テーマは日本の宇宙開発史。ポルノ・買春に批判的な立場から男性運動にも関わる。「ゆうメイト」という名の非正規郵政労働者でもある。趣味は寝ることと散歩。一応プロジェクト・リーダーです。■

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