情報公開によって見えること、にとどまらず
柿原 泰(市民研・理事)
近年、行政などが行なう審議会・委員会などは、公開されているものが多く、その議事録も速やかにウェブ上にて閲覧できるようになってきている。広く公開されていなかった文書などがあれば、情報公開請求の手続きを進めると開示されるものも多い。
ここでは低線量被曝研究会でも注視し続けている福島県の「県民健康管理調査」の動向を例に、情報公開によって見えてくることについて少し触れておきたい。
福島県が2011年の震災以降、始めた「県民健康管理調査」の検討委員会は、今年(2013年)2月に第10回委員会を開いた直後、座長の山下俊一氏が辞意を表明し、4~5月に委員の入れ替えや委員会設置要綱の改正などが進められたため、6月の第11回委員会までしばらく開かれていなかった。開始から2年経ち、その間、多方面から批判が噴出していた県民健康管理調査も、検討委員会のあり方を見直さざるをえなくなったのだ。
その背景には、いくつもの問題が情報公開によって明らかにされたことが効いていた。目立ったものとしては、毎日新聞による2012年10月からの一連のスクープ記事があり、公開の検討委員会とは別に、事前に「秘密会」がもたれ、見解をあらかじめすり合わせ、進行表にそって委員会をシナリオ通り運営していたことが暴露された(毎日新聞の一連の報道の概要がうかがえる記事に、「福島の県民健康管理調査 被ばく情報公開、不透明なまま」『毎日新聞』2013年5月27日朝刊)。
報道機関ばかりでなく、「情報公開クリアリングハウス」というNPOや県民などによって情報公開制度が積極的に活用された結果である。そのなかで、検討委員会の初期(第1回~第3回)の議事録も情報公開請求されたことにより開示され、ウェブにも掲載された(議論の一部を削除したものを開示したことがわかり、問題を大きくした)。
議事録の公開といえば、2年前(2011年7~8月)に、市民科学研究室の低線量被曝研究会が福島県知事に対して提出した要望書・質問書への県からの回答を思い出す。県の回答では、議事要旨をホームページ上で公開しているとしながら、実際にウェブに掲載されていたのは1枚の議事次第だけだった。(その時の要望書・質問書や福島県の回答は本通信第9号の記事「福島県民管理調査は何のため?」をご参照ください)
これだけ情報公開が重んじられるようになっても、それでも隠されている情報もあるし、表面的には隠されているわけではないとしても明らかにされないことがらもある。たとえば、審議会・委員会は、委員の構成が偏っていないかが大きなポイントだが、委員の選出理由を問うたとしても通り一遍の回答以上の理由が明らかにされることはまずない。さらに、情報公開が進んだとしても、情報がオープンになっただけで満足するわけにはいかない。公開された情報を分析し、どういう方向に生かしていけるかこそが重要である。また、公開された情報があまりに大量であった場合、それを読み解いて、検討すべきポイントを掴むことが難しくなってくる。行政のパブリックコメントにかかった案件の文書がとても個人やひとつの市民団体の手に負えないような分量であることもある。
情報が公開されるおかげで見えることがある、でもそれだけでは……■