【翻訳】 報告書「チェルノブイリ 今も続く惨事」(国際連合)

投稿者: | 2014年1月21日

【翻訳】
国連人道問題調整事務所(OCHA)
チェルノブイリ今も続く惨事
CHERNOBYL A Continuing Catastrophe

pdfファイルはこちらから→csijnewsletter_022_yoshida_02.pdf

“災害や緊急時において人間的苦悩や資財の破壊にさらされる人々のニーズを満たすために、国際社会、とりわけ国連システム内のそれらの総力を、首尾一貫してタイムリーに結集・調整する。これには、脆弱性を減少させること、根本的原因の解決を促進すること、そして救援から復興•開発へのスムーズな移行を促進することを含む”
(国連人道問題調整事務所の使命に関する声明)

本書で採用した名称、資料の提示は、いかなる国、領土、街、区域の法的地位、あるいはその当局に関する、あるいはその国境、境界に関する、国連事務局のいかなる意見の表明をも意味するものではありません。
本稿に示された見解は著者のものであり、必ずしも国連事務局の見解を反映するものではありません。

序 文

“チェルノブイリ”という言葉は、私たちすべてが記憶から消してしまいたいと思っている言葉である。この言葉を聞いて思い出すのは1986年4月に起きた原子炉の爆発であり、それはまるでパンドラの箱を開けてしまったときのように人々の心の中の目に見えない敵と名状しがたい不安を表出させた出来事であったが、その後、おそらく安全に処理されて過去のことにできたと私たちのほとんどが思ってしまっている出来事でもある。

今もなお、この悲劇を忘れてはならない理由が二つあり、二つとも避けて通ることのできない理由である。

第一の理由は、もし私たちがチェルノブイリを忘れるならば、将来、このような技術的かつ環境的災害のリスクをより増加させてしまうということである。そう、この種のエラーを起こしてしまうと取り返しがつかないが、その再発を防ぐことはできる。

第二の理由は、700万人以上の人たちがそれを忘れるという贅沢ができなくて、今もなお、14年前に起きたことの結果として、日々苦しんでいるということである。実際、チェルノブイリの遺産は将来も私たちにつきまとい、そしてこのあと幾世代にもわたって私たちの子孫から離れないのである。

この小冊子は、この惨事が健康、経済、環境、心理、社会に及ぼした影響、そして地域のコミュニティによってなされているリハビリテーションにおける英雄的だが絶望的な努力について述べている。被害者を回復させたり、生命を維持させたりする手段がなくて、ときには自分を役に立たないと感じてしまうような憂鬱な状況を描き出している。

1997年に国連はチェルノブイリに関する人道的なプログラムを開始した。不幸なことに、このプログラムの資金は必要な金額を大幅に下回る金額にまで低下した。本来は60のプロジェクトがリストにあげられていたのにわずか9つにまで削減せざるを得なかった。チェルノブイリに対する国際協力をもとめる国連アピールを通じて寄せられた資金の使途として絶対的に優先されるものだけを選択した結果である。

これら9つのプロジェクトは、もしも実現すれば、多くの人々の生活をまったく違ったものにするだろう。実際にそれらはチェルノブイリの被害者自身に対してだけでなく、世界中の未来の世代が、確実にその試練から学ぶことができ、利益を得ることができるようにするために、国際社会がなすべき最小のものであると断言してもかまわないだろう。私は各国政府と研究施設-政府機関と非政府機関-にたいしてこれらのプロジェクトに真剣かつ緊急に考慮を払うよう訴える。

私はまた、国際社会が全体として、人生を破壊されたり乱されたりしている人々を助けるという人道的な義務感を心に抱いて核の事故に対する対応を再考するよう訴える。また将来の惨事を防ぐために万全を期すことが必要であると訴える。チェルノブイリのケースでは、被害者はベラルーシ、ウクライナ、そしてロシア連邦の三か国に暮らしている:その正確な数は決してわからないだろう。しかし、300万人の子ども達が治療を必要としており、そして早ければ2016年には、300万人全員が深刻な医学的状況に至ってしまうであろう。実際、もっとも傷つきやすい被害者は、原子炉が爆発した時には幼かった子ども達であり、あるいはまだ生まれていなかった赤ん坊である。彼らの成人期-今まさにそこに達しようとしている-は、彼らの子ども時代がそうであったように、おそらくその瞬間によって損なわれたのであろう。多くが早すぎる死を迎えるだろう。私たちは、彼らが生きている間も死を迎えるときも世界が彼らの苦境に冷淡であると信じさせたままにしておいてよいのであろうか。

コフィ.A.アナン
国連事務総長

はじめに

ほとんどの人々は、チェルノブイリで起きた核事故を歴史上の出来事になったひとつの事件と考えているだろうが、真実は、この事故が三か国の全人口に破壊的な影響を与え続けているということである。実際その事故から13年以上が過ぎたにもかかわらず、被災した人々の健康への最悪の影響は、実はまだこれから訪れるかもしれないのである。メルトダウン(原子炉の熔融)と放射能の雲の物語、話題として格好な物語がニュースの見出しから消えて久しいが、実際の人間、経済、社会、健康および環境を襲った惨事は始まったばかりなのである。被害のもっとも大きかった国々の政府はかなりの額の国家予算を、この事故によって生じた人々の苦痛を軽減するために費やしているが、現在の経済状況の中では充分と言うにはほど遠い。救援プロジェクトを始動させるための仕事が精力的になされてきたが、残念なことに、国際社会が直面している緊急課題の羅列のなかで、チェルノブイリはほとんど忘れられ、外部からの財源として必要な額のほんの一部が活動に供されただけである。この冊子は、チェルノブイリにスポットライトを取り戻し、人々にこの悲劇的事故の被害者がどれほど人々の助けを必要としているかを思い出させることを目的としている。

【続きは上記pfdファイルにてお読みください】

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