WHOの環境保健基準「超低周波電磁界」について ~『ガス・エネルギー新聞』(7月11日付)のインタビューに答えて~

投稿者: | 2007年7月7日

写図表あり
csij-journal-007-WHO.pdf
WHOの環境保健基準「超低周波電磁界」について
~『ガス・エネルギー新聞』(7月11日付)のインタビューに答えて~
上田昌文(市民科学研究室)
●今回の環境保健基準がまとめられた経緯は?
WHOが国際電磁界プロジェクトを立ち上げたのが1996年。高周波電磁界と超低周波電磁界に分けて取り組んできており、今回取りまとめられたのは、超低周波電磁界の健康リスク評価の結果です。
●具体的な数値基準が発表されているのですか?
基準値を作るのはWHOではなく、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)です。そこが、各国が参照するための国際基準を作っています。WHOはそれに先立って、健康リスクに関わる科学的知見を収集して評価し、対策を講じるための指針をまとめているのです。
●今回発表されたのは?
0~100kHzの超低周波の電場と磁場が健康に与える影響について、10年をかけて1000件を超える文献を精査しています。心臓疾患、免疫疾患、電磁波過敏症、生殖・発生発達系の障害、がんなどへの影響です。そのなかで唯一影響があるとみなされたのが小児白血病と極低周波の関係です。日本や欧米などでの疫学データをもとに「因果関係があるとみなせるほど強い科学的証拠とはいえないが、憂慮に十分値するほどの関連性が示されている」として、ガイドラインを設け、防護計画を立てるように勧告しています。その際、電磁波を発生する設備や機器類について、電磁波の計測を組み入れるべきであるとしています。
●家電からの電磁波の影響についてはどんな報告がされているのでしょうか。
電気機器や装置から漏洩する超低周波電磁界を低減するための技術的な工夫はコストを極力抑えながらもするべきとしています。注目されるのは、300Hz~100kHzの中間周波数の研究が不足していることを明確に指摘している点です。これはIH調理器の周波数に相当する周波数です。IH調理器は、比較的新しい機器であり、使用している国が限られているということもあり、データ不足なのが現状です。この指摘を謙虚に受け止めて、日本がやるべきことがあるはずです。
●家庭の中での電磁波の影響というのは、これからますます大きくなっていくと思うのですが。
被曝については『低減するためのコストがわずかなら、健康リスクと社会経済的利益の両方を見合わせて予防的措置を講じることは合理的である』という表現にとどまっています。これは、予防的措置対応をとらないための口実にも使えそうな表現とも言えるし、リスク・コスト・ベネフィットの計量を改めてしっかりやりなさいという忠告ともとれます。これに関連してまず気をつけたいのは、被曝量の計量が、機器類の現実の使用状況に即したものでなくては意味がないという点です。IEC(国際電気標準会議)で、本体の端から30cmから離れた位置で計測するということになっていますが、IH調理器の場合、調理をする時に30cm距離を置くというのは現実的ではありません。また鍋底のサイズによって漏洩する電磁波の量は違ってきます。家電メーカーなどが安全性の根拠にしているのはICNIRPのガイドラインですが、市民科学研究室が業務用のIH調理器を計測したところ、調理する人が立つ位置(加熱中心部から32cm)で、小型の鍋を用いた場合には、中間周波数の領域ではICNIRPのガイドライン値を越えてしまうことがわかっています。業務用は家庭用と比べて出力が10倍ほど大きく、働く人が長時間被曝することが避けられない環境であることを考えると、放置できない問題です。
●これからのさらなる研究が必要だということですね。
WHOも強調しているようにリスクコミュニケーションをしながら対策を講じていかなくてはならないのですが、そういう意味では、日本は何もしてこなかったといえます。WHOの報告書公表の動きに合わせて、経済産業省が電磁界の規制や対策を検討するワーキンググループを発足させましたが(6月1日)、どんな結論を出してくるのか、委員の発言にも注目をしていくことが大切です。■

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