子どもに携帯電話を持たせてはいけない! ~電磁波の健康影響を懸念する声が続々と~

投稿者: | 2008年11月6日

写図表あり
csij-journal 020 ueda.pdf

子どもに携帯電話を持たせてはいけない!
~電磁波の健康影響を懸念する声が続々と~

上田昌文(市民研 電磁波研究会)

 あなたが今携帯電話を使っていて、電磁波曝露を減らす対策を何も講じていないのなら、通話で使うのは今すぐやめた方がいい。ましてや、子どもに携帯電話を持たせるのは、メールしかできない特別な処置を施した機種でもない限り、絶対にやめた方がいい。――これが今回のコラムの結論だとすれば、あなたはどうしますか? 自分で納得のいく対処ができますか? それとも不安を覚えつつ、今まで通り使い続けますか?
 このところ世界のあちこちから、ここ10年でほどで圧倒的な普及を示した携帯電話に対して、健康への悪影響を懸念する研究者の声が続々と上がっています。日本ではまったくと言っていいほど取り上げられていませんが、タバコやアスベストにも比すべき大きな社会問題になかねないこの「携帯電話と脳腫瘍」の問題に、責任ある高い地位にいる著名な科学者たちが予防的対応の必要を訴え出しているのです。
●米国の議会の公聴会で取り上げられた携帯電磁波
 米国では史上初めてワシントンでの議会の公聴会で、携帯電話と脳腫瘍の問題が取り上げられ、影響を懸念する科学者と問題ないだろうとみる科学者の両方の意見が披露されました(2008年9月22日23日)。
 そこで最も注目されたのが、携帯電話電磁波の疫学研究では世界をリードしてきたレナート・ハーデル博士(スウェーデンのオレブロ大学病院)らによる「20歳以前に携帯電話の使用を開始した人々は中枢神経を支えるグリア細胞のガンである神経膠腫(グリオーマ)に5倍かかりやすい」との結果です。良性ではあるが聴覚神経を損ない、通常耳が聞こえなくなる聴覚神経腫瘍にもほぼ同様の割合でかかりやすくなる、とハーデル博士は付け加えています。若いときに携帯電話を使い始めた人々を対象にした研究としては、これは世界初のもので、ハーデル博士はこの結果を、電磁波研究トラストが世界の著名な研究者らを多数招き(残念ながら日本人研究者は含まれていません)、英国の権威ある王立協会で開催した会議で発表したのでした(9月8日、9日)。
 米国の公聴会で証言台に立った一人は、ロナルド・ハーバーマン博士(著名な腫瘍免疫学者で、ピッツバーグ大学ガン研究所ならびに国立ガン研究所の初代所長)で、証言の中で「ここ10年間で20~29歳の大人の間で脳腫瘍の発症が増加している」というデータも示しました。若者の携帯電話の使用との関連を疑わせる気がかりなデータと言えるでしょう。
●欧州会議やロシア科学アカデミーからも

 ヨーロッパではすでに英国政府、フランス保健省、オーストリアの医師会などが携帯電話の健康影響に関する勧告を出していましたが、2008年9月4日に採択された欧州議会の議決「欧州の健康と環境 アクションプラン2004-2010 中期評価」でも、新しい先端的な技術のもたらす影響にどう向き合うかを総括的に論じる中で、電磁波曝露の問題が取り上げられていて、ヨーロッパ全土の大臣に対して、「とりわけ子どもたちが脆弱である点も考慮して、携帯電話やコードレス・フォン、 Wi-fi 無線LAN、その他の機器からの電波への暴露をもっと厳しく制限することを強く推進する」といった内容が盛り込まれていています。
 電磁波規制の強化を求める全ヨーロッパ的な動きは、「電磁波の安全性のための国際委員会」という名のイタリアを拠点とした非営利の国際組織(2003年設立)が毎年開催する大きな規模のワークショップで採択された「ヴェニス決議」(2007年12月17日、47名の各国の著名研究者たちの連名)でも明確に打ち出されています。
 ロシアは、規制強化と予防的対応に関してはもっと具体的で先進的です。電磁波防護の国の指針を決めるロシア国立非電離放射線防護委員会は、携帯電話に関する特別声明を出していて(2008年4月14日)、2001年にすでに「16歳以下の子ども、妊婦、神経に関連する疾患を持つ者は携帯電話を使用すべきでない」「通話は最長で3分まで、1回通話したら次にかけるまでに最低でも15分の間隔をあけること」などと勧告していることに加えて、「子どもへの潜在的リスクは非常に大きい」として、「このリスクはタバコやアルコールに比べてもずっと小さいとは言えず、子ども自身はそのリスクにさらされていることを意識しない」「子どもが健康を損なうことのないようにするのは、我々の職業的義務である」と明言しています。
●ピッツバーグ大学ガン研究所の「10の予防的手段」
 科学者からの警告の代表的なものの1つは、最近の様々な健康影響研究の結果を分析して、米国のピッツバーグ大学ガン研究所がまとめた、「10の予防的手段」の文書でしょう(2008年7月24日)。この勧告には、米国、フランス、イタリアなどの研究者ら23名が名を連ねています)。
 その主だったところを要約しつつ訳出すると、次のようになります。

「安全であるとも危険であるとも断定できるだけの確証はどちらについても得られていない。しかし、電磁波の曝露量は減らした方がよいだろう、と思わせる証拠が次々に上がってきていることは間違いない」
「子どもは大人に比べて脳が小さくて脳組織がまだ柔らかいことが関係して、携帯電話電磁波がより脳の深部にまで浸透する。それを示すのが次のシュミレーション図である(右の数字はそれぞれの色の帯がどれくらいのSAR値の電磁波に相当するかを示す)」

「安全基準である1.6W∕kg以下(注:日本では2.0W/kg)の強度の電磁波であっても、有害物質の脳への移行のバリアになっている脳血液関門の浸透性を高め(有害物質の移動の危険性を高め)、ストレス蛋白質の合成を促進してしまう」
「携帯電話の使用が10年に及ぶ人が出始めているが、そうした状況でなされた疫学研究からは、携帯電話をあてる側で生じる聴神経腫や脳腫瘍と携帯電話の使用との相関があるかもしれないと示唆するような結果が出ている」
「しかし、今までのところ携帯電話の長期使用と発ガンの因果関係は確証されたわけではない。さらに言うなら、タバコと肺ガンの間にみられるような非常に強い相関があるとしても、それをはっきりさせることは、15年~35年という長い潜伏期間があるだろうことを考えると、非常に難しいかほとんど不可能あvだと思われる」

こうした科学的な面で判断に立って、
「そこで必要なのが、タバコやアスベストに対するのと同様な”予防的手段”である。確証データは得られていないものの、これまでに得られたデータだけからも、すでに何件かの報告書で指摘されているように、携帯電話の使用に関して慎重なリスク回避策を講じていくことが重要であることは否定できない」
として、「10の予防的手段」を提唱しています。

1)緊急時以外には子どもに携帯電話を使わせないこと。成長の途上にある胎児ならびに子どもの組織は、大人より電磁波の影響をはるかに受けやすい。
2)携帯電話で通話するときは、端末を身体からできるだけ離すこと。身体から6センチも離せば電磁波の強さは4分の1にもなる(1メートル近くも離せば、50分の1になる)。スピーカーフォンタイプの装置やヘッドセットを使えば、100分の1以下になる。
3)乗り物の中での使用は止めること。同乗している他人を曝露させることになるから。
4)携帯電話を常時身体にくっつけて持ち歩くのは止めること。寝るときに枕元に置くことも止めること。特に妊娠中は厳禁である。そうしたのなら、電源をオフにすべきである。
5)持ち歩きせざるを得ないのなら、携帯の「向き」に気をつけること。操作キーが並んでいる面を身体の側に向けるようにすること。そうすると、電波が発信される場合に、身体を透過する割合が減る。
6)携帯電話は、相手とのつながりを確認するためだけか、あるいは通話するにしてもほんの数分にとどめるかにすべきである。通話時間が長くなればなるほど、身体への影響が大きくなる。これはコードレスフォン(親機と子機)でも同じである。
7)通話する場合は時々、携帯電話をあてる側を右耳、左耳を交互に切り替えること。また、電話をかける場合は、通話相手が電話に出てからはじめて端末を耳に近づけること。これで、強い電波が出ている間の曝露をある程度抑えることができる。
8)電波の弱いところでは、あるいは高速で移動している時には、携帯電話をかけないこと。このような状況では、携帯電話は、近接した基地局とつながろうと、自動的に最大出力の電波を頻繁に出すことになるから。
9)メールだと身体から端末をかなり離すことになり、曝露量が抑えられるので、通話でなくメールで済ませられるなら、そうすること。
10)SAR値の最も小さい機種を選ぶこと。各機種のSAR値はそれぞれのメーカーのホームページに公開されている。
携帯電話事業者に対しても厳しい注文をつけています。

「携帯電話事業者は、個々の端末の使用者の使用データへのアクセスを認め、健康影響研究に適切に活用できるようにすべきだろう」
「可能な限り曝露を減らすように開発をすすめるべきだし、消費者に健康を損ねないような使い方を喚起していかねばならないだろう」
「そうすることが、アスベストに見られるような社会的な大きな被害・損害を避けるための、結局は企業自身にもプラスをもたらすだろう対処であり、企業の社会的責任でもあろう」

いかがでしょう? 日本の政府、関連分野の研究者、携帯電話事業者らが、消費者に向けて何ら警告を発しないのは、いかにも奇異なことではないでしょうか。あとはあなた自身の選択であり、それに関する私の結論は冒頭に示しました。■

*このエッセイはbabycomのecology コーナーでの新連載「電磁波コラム」の第2回として書いたものを一部改変して転載しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です