大塚典子(グラフィックデザイナー)
pdfはdoyou_otuka_04.pdf
さて、ここまで色々と酵母のことを調べてきましたが、全て「あ~そうか!」と納得できることばかりではありません。「へぇ~、そうだったの?…でも本当かな?!」という疑問が色々と出てきました。自分で酵母を育てるパン作りの方法そのものにも疑問です。本当にこのやり方や考え方で良いのか…?もしかしたら、もっと違う方法があるのかもしれません。
より酵母を理解するためには、自ら体験することが一番の近道。というわけで、今回から酵母に対する疑問と、その疑問を解くための実験を行ってみたいと思います。
今回はまず私の思った「酵母の疑問編」です。
■疑問その1 /酸素があるときの酵母、ないときの酵母
パンやワインを作るためには、酵母をアルコール発酵させなければならないので、酸素が欠乏していて高濃度の糖がある環境を作ります。酸素の欠乏している状態でないと、酵母はアルコール発酵しないのです。酸素がないとき、酵母は「発酵系代謝」をしています。
C6H 12O6 (グルコース)
→ 2C 2 H 6 O(アルコール)+ 2 C O 2(炭酸ガス)
では、酸素がある環境で酵母は何をしているのでしょう?
C6H12O6 (グルコース)+6O2
→ 6 C O2(炭酸ガス)+ 6 H 2 O(水)
酸素があるとき、酵母は「呼吸系代謝」をしています。酸素が十分にある環境だと、酵母はアルコールを全く生成せず、どんどん出芽増殖して数を増やしていきす。
この環境の違いで、酵母の働きは全く変わってしまいます。お酒を作るときはもちろんアルコール発酵させなければいけませんが、パンの場合はどうなのでしょう?
私はまったくワインなどと同じように、アルコール発酵させた酵母を小麦粉に混ぜてパンにしていました。これが、もっとも良く知られている方法です。もちろん、これで十分美味しいパンができます。でも、もしかしたらパンの発酵場合は「酵母の数」が多くなる「呼吸系代謝」も取り入れたほうが、より膨らみの強い酵母ができるのではないでしょうか?しかし、空気中には他の微生物も数多く存在しています。そこで、まずは酵母が強い環境をつくり出してから、「呼吸系代謝」をさせるようにすれば、強い酵母を作ることができるかもしれない、と考えています。
■疑問その2 /酵母は生き返る?
酵母の使用期間(寿命)は2 週間くらい、と聞いていました。あまり古くなると、パンの膨らみは悪くなるし、香りもあまり良いとはいえません。ということで、酵母も死ぬことがあるようですが、前回調べた通り飢餓状態になると有性生殖して酵母は生き残ろうとします。全て死んだわけではなく、したたかに生き残っているものもいるのです。その生き残りがいるだろうと思われるのが、ワインなどの「おり」ではないかと思います。おりの中に、生きた酵母は存在しているのでしょうか?おりを集めて、もう一度発酵するのでしょうか?パン、もしくはワインができるのか?というのを実験してみたいと思います。
■疑問その3 /何でも発酵するの?酵母に何でも食べさせてみよう!
酵母は高濃度で酸性の環境でも生きられます。酵母のエサで、スタンダードなのは果物です。でも、巷ではヨーグルトやら、ミルクやら、おからやら、酵母が食べられない!と言われているものまで発酵しているようです。一体どうして?!いろいろ食べさせて、本当に発酵するのかの実験と、その「どうして?」を探ります。
■疑問その4 /酵母によって違う「香り」とは?
同じ種類の酵母でも、エサとなる食べ物によって香りが違います。りんごの香り、ゆずの香り、みかんの香り、ごはんの香り…。どうしてエサによって、特徴のある香りになるのでしょうか?酵母と香りの関係を調べます。
まだまだ謎の深い、酵母菌の世界。酵母道は、長く険しそうです。