リレー連載「住環境革命のために 第2回 新成長戦略都市環境革命

投稿者: | 2010年10月15日

平松朝彦(サステイナブルマンション研究会・代表/市民研・住環境研究会メンバー)
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清貧の思想が不況の原因
 1980年代にバブルが生まれた。今から振り返ると日本の歴史において一番景気がよかった時代である。しかしなぜバブルが生まれたのかについては、いわゆるプラザ合意により金利を下げたためとする俗論ばかりが流布してしまった。拙著『亡国マンション』で図まで書いたように、1980年の公定歩合はなんと9%であったがそれから次第に低下し、84年には約5%、88年には2.5%となった。つまりプラザ合意の86年の前から金利は低下していたのは明白だった。さらにバブル当時の日銀の不動産融資額は約100兆円と思われるがそれらと東京都心地価の値上がりは相似である。日銀は銀行を通じて不動産業界に不動産を強制的に買わせたのである。
 さらにその理由は詳しくは書かないが70年代の第一次、第二次オイルショックの後遺症もあり企業が抱えて塩漬けになった土地借金対策でもあり、企業は新たな銀行融資を望んでいたなど様々の要因があり、そのことの対応がバブル政策だったのである。
 さらに大蔵省の目的でもあったのが、国の財政赤字対策である。政治的にも自民党として消費税の増税が待ったなしの状況でありながら消費税を上げると選挙で自民党がもたないという事情があった。それらを総合的に一挙に解消しようとしたのがバブル政策でありそれは成功した。
 バブルにより地価は高騰したものの、1991年には財政赤字は解消されてしまったのである。それは日本中にその100兆円がばらまかれたからである。しかしながら消費者物価は安定していた。目的が解消されたこともあり、官民(大蔵省、日銀)そろって今度はバブル退治を安直に行った結果、日本中を不良債権の山にしてしまった。さらに日銀はインフレ退治と称し、公定歩合を高騰させ金利を上げ続けるなど、不良債権処理を完全に間違ったことが、今日の大不況と財政赤字につながっていることを理解しなくてはならない。
 バブルは問題もあったが、その一面すばらしいことだった。つまり貨幣が巷に供給されるとはどういうことかを現実化して国民に見せてくれたのである。まさに豊かな夢の生活であったといってもいい。その唯一の問題とはいうまでもなく地価の高騰である。東京の容積率アップなどの政策は短期的に地価のアップになるが、供給量の拡大もあり長期的には地価の下落となるはずだった。だから放っておけばよかったのである。しかし当時のマスコミはいつしかバブルにたいする非難であふれていた。それは豊かなことは悪いことという倒錯した清貧の思想である。
 しかしこの思想は一部の不動産業者が土地ころがしで莫大な利益を得ていたことが許せなかった、というだけであり、いわゆる妬みが基本である。人に迷惑を描けない限り清貧でありたければ自分がそうすれば良いのであり、それは人生観の問題だ。しかしその個人的な人生観がマスコミにより拡大され、世論となってしまった。2010年の今、景気は最悪であるが、清貧の思想論者からすれば最高ということになるのだろう。しかしそのころ清貧ときれいごとを言っていた人々は、もうとっくにメディア社会からいなくなった。残されたのは不況のただ中にいる若者たちである。
 ではどうしたらよいのか。清貧なのか、豊かな暮らしなのか、私たちはまずそれを選択する必要がある。そして豊かな暮らしとは具体的にどういうことなのか、あらためてはっきりさせなくてはならない。その例はすでに「日本21世紀ビジョン(内閣府2005年)」に示されている。2030年において居住空間が4人家族で100㎡という住宅の実現である。この本において実は、分譲から賃貸への転換が説かれ、1998年の4人家族用、借家平均面積59㎡を100㎡に拡大しようという提言なのであり、具体的なマンションの間取り図まで掲載されている。4人家族で100㎡であれば豊かといっていいだろう。しかし問題は家賃とこの施策を実行する政策である。残念ながらこのビジョンには方法論が欠けていた。
 現在はまたあの1980年と同じ状況である。財政赤字、大不況、増税論である。しかしかつてのようにバブルを再現するわけにはいかない。できれば100兆円位の投資が望まれる。しかし地価が高騰してしまっては、作られるのは60㎡の圧縮間取りだけで、長期的にもこのビジョンは実現できなかっただろう。ではどうするか。
 
新成長戦略策定のポイント
・構造改革という名の財政再建の誤謬
・財政赤字の原因の混乱
1.社会主義的官僚政治、いわゆる天下り、無駄遣い
2.政治家による地元利益誘導
3.高齢化による社会福祉費用の増大
4.バブル崩壊後のケインズ経済学的な景気対策の手法
5.中国など人件費、地価が安い国との競争力ダウン
6.貿易黒字によるドルの蓄積。日本に冨が蓄積しない。
 1、2についてはもちろん国家の放漫経営であり問題がある。しかし3-6については致しかたなかった。そして、財政緊縮政策がさらなる不況のスパイラルと財政悪化をもたらしている。
 小泉政権は、1を主張しながら取り組まず、一方、構造改革をしようとして失敗。途中で方針を転換した。しかし民主党政権は小泉と同じ轍を踏もうとしている。
日本の政治は、財政再建(緊縮)と景気対策(緩和)の繰り返しなのである。
歴史に学ぶ
 1930年、日本も世界も国家の財政が破綻し恐慌といわれる時代だった。
 
 日本では、蔵相、井上準一郎が財政再建、緊縮財政を試みるがデフレ、景気悪化、失業者増大で失敗。前蔵相の三土忠造がインフレをおこすべきと主張し、国会で論戦。1931年に内閣が政友会になり、高橋是清が、低金利貸付、公債発行日銀引受けを行い、日本経済は危機から脱出した。それはケインズよりはやい。
 
 同じころのイギリスでもまったく同様の事が起きていた。輸出の不振、デフレ、失業者の増大であり、国の財政は赤字だった。当時の政治家、経済学者は財政再建を主張していた。ケインズは失業者たちを見て、失業者の救済を何より優先すべきとした。従来の経済学を、古いと否定していわゆるケインズ革命をおこした。具体的内容は公共投資による景気対策であり、高橋らと同じだ。高橋は次のように云った。
従来財政上の観念よりすれば毎年毎年の歳入歳出は一致させるべきであって、赤字公債を発行するごときは財政上嫌忌されてきたるしかし、今日のような有史以来の大恐慌下にあっては経済界の回復のために政府の財政政策は大きく転換しなくてはならない。・・
財界不況にして失業増加し産業不振の場合には、政府自ら公債もしくは借入金によって事業を起こし、もって経済界の調節にあたるのがよい。ことに土木、建築、道路の経費は、国家として資本を投下するものに他ならないのであるから、その経費を損失勘定に加算するのは誤りだ。

結論
 土木(道路)、建築という公共物に投資すべきであり、それは財政赤字とはならない。なぜならそれは国の資産になるからだ。
 日本の政策はケインズの考え方で行われてきて、それはいわゆる「箱物行政」として糾弾された。それは官製談合を引き起こした。しかしそれは官製談合をしたものが悪いのであって、ケインズが悪いわけではない。そして世界を見ると、日本の道路、土木は世界1のレベルに達している。またいわゆる公共建築物も立派である。
 ケインズ政策をまとった官僚たちによる官製談合で税金は奪取される。そしてそのつけは、高橋の指摘にも関わらず「経費を損得勘定(国家予算、現金収支)」に算入し、危機だと騒いでいるのである。そして国民は税金を払った残りで、自分たちの家を確保しなくてはならない。さらに都市の地価は、不況であっても仕事を求めて人が集まるので高止まりする。政府は戦後持家政策をすすめようと住宅金融制度を充実させた。しかし、この需要を高めることが皮肉にも自由経済社会においては地価の高騰につながる。結果として、日本の住宅は先進国の中で極めて貧しい状態に放置されているのである。
 一方、アメリカにおいてサブプライムローンの問題が起きた。アメリカ人は世界で一番住宅としては恵まれた環境にある。サブプライムとは貧困者向け住宅ローンということである。アメリカは1929年の大不況を踏まえ、住宅問題に取り組み、長期ローン制度を世界で初めて作ったが、それはノンリコースといわれる住宅担保融資の仕組み、高品質な建物の実現、建物資産という考えによるものである。しかし取り残されたのが貧困層であった。貧困層にたいしてローンをしようということはそもそも困難であったが、住宅高騰というバブルの仕組みを利用すればそれが可能であった。そのためにそれが実行されたのである。しかしサブプライムつまり貧困者向けの住宅でさえ、実は日本では大金持ちの夢のマイホームのレベルであることを日本人は知らない。知らないということは幸せなのか不幸なのか。
提言「300年環境都市住宅」
 高橋やケインズの理論を元に、住宅(300年環境都市住宅)をつくり、それを内需とするとともに今後の日本のグランドデサインとする。
 日本の住宅が貧困である理由は二つある。一つは地価が高いゆえの住居面積が狭いこと。第二に、稼ぎ―税金―土地代=建築投資、という図式により安普請であることだ。
安普請であるから、耐久性が低い。30年しかもたない設計となっている。資産とならず30年で建て替え。一生ローンで追われることになる。これは持家の人だけでは無い。賃貸住宅の所有者も同じトラップにはまっているのである。
 
 究極的には、土地とスケルトンを国、(融資体)の所有物として作る。それは公共事業であり、国の資産となるので国の経費勘定には算入されない。
<従来の経済学の誤り>
・金融経済学が主流となり、ストックの意味があいまい。日本には過去に公共工事その他で膨大なストックが生まれていた。しかしその資産性の評価が不十分。都市において個人の資産の集積という側面もあった。その結果が貧困な都市を作り出した。
・経済学によると土地は人工的に生み出せないものとしていた。しかし高層建物は、新たな土地と考えられる。高層建物をつくることは土地を生み出すこと、冨を作ることと同じである。しかしその耐久性、メンテナンス性が問われることになる。一定の基準を満たせば、それを新たな国の冨と考えるべき。
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 この仕組みにより100㎡のマンションに1900万円で一生暮らせる。
 
 途中で引っ越す場合は利用権を清算。次の入居者はインフィルを原状有姿で買い取る。
利用権の権利金やインフィルに対する融資制度は必要。
 
 市街の1街区をすべて再開発し、その個々の所有権を80年の利用権に置き換える。居住希望者はそのまま100㎡のマンション入居者となる。例えば、時価3000万円の不動産所有者は100㎡のマンションの利用権と残金2000万円を手にすることができ、900万円でインフィルを作るとその残りは1100万円となる。
 市街地の地主たちの不動産価格の総額が利用権の価格総額とも考えられるが、土地有効活用により、それ以上の土地が生み出せる。そもそも地主たちの土地代は国の所有物となるので収支上の財政の赤字とはならない。権利金はさらなる国の利益と考えられる。■

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