講座報告:ブラックアウトと大規模発電一極集中の脆弱性-市民発電のミライ-

投稿者: | 2019年7月29日

市民科学講座 実施報告

ブラックアウトと大規模発電一極集中の脆弱性-市民発電のミライ-
講師:市民電力連絡会 竹村英明さん(2019年5月25日実施)

報告者:橋本正明(NPO法人市民科学研究室・理事)

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去る5月25日、渋谷光塾にて市民科学講座Bコースを市民電力連絡会の竹村英明さんにご講演頂きました。

外はまだ5月の下旬なのに何故こんなに暑いのかと言いたくなるような陽気でしたが、光塾は涼しく、しかし外の熱気に負けない位、熱い議論が戦わされました。

ご講演は第1部を「ブラックアウトと大規模発電一極集中の脆弱性」として主に北海道で昨秋発生したブラックアウトの話を中心に九州電力の再エネ出力抑制の話も交えてのお話でした。そこではまず、

「同時同量:電気はなまもので常に使う量を作る必要があること」、

「周波数が±2Hzを超えるとリレーが作動、系統から発電機を切り離すこと」、

「地震発生直後から発電機破損や送電線断線などが次々に発生し、周波数変動にて【負荷の遮断】が追い付かなくなって周波数が下がり、次々と他の発電所が停止に追い込まれたこと」、

「最後の切り札だった本州からの電気【北本連系線】は、他からの電力がないと直流→交流へ変換できない【他励式】であったこと」、

など基本的な電力システムの知識や、今回の地震によって明らかになった電力システムの弱点について指摘がされました。

そこから導き出されるものとして、他の電力管内においても「ブッラクアウトは大型発電所の突然の停止で発生しかねないこと」、何故ならそれはすぐに他の電源で置き換えることはできず、周波数の乱れを伴い最終的に「他のまだ動いている発電所の施設トラブルを避けるための停止可能性」が洞察され、それらを総括し何が課題であるのかについて列挙すると、

・周波数制御±2Hzで負荷遮断というルールはブラックアウトを誘発しやすい

・北本線などの地域間連系線が他励式だった。自励式でなければ役に立たない

・分散型の小規模発電所を無数に作りネットワークする方が地震には強い

・化石燃料のように燃料供給が絶たれると動かなくなる発電所は災害に弱い

・計測器など、自身が電気に頼る運転をしている発電所は災害時に機能しない可能性もある

・災害時には送電網の断絶があることを想定すべきである

・地域資源を生かした再生可能エネルギーによる、バランスのとれた電力供給が、災害時に最も強く有効なシステムである(小ブロックで独立運用を可能に)

ということになるそうです。

個人的な話で恐縮でありますが、私の実家は北海道でこのブラックアウトの影響をもろに受けました。これまで大きな地震とはあまり縁の無かった地域での突然の地震とそれに伴う大停電は心も装備も全く準備の無かった自分の心の奥底にある慢心を打ち砕くものであり、今の時代は日本中どこにも安全な場所など無いことを痛感させました。

まして今の時代、電気の無い生活というものはまず考えられません。特に昨年は地震だけでなく豪雨災害や台風によっても多くの地域が災害に見舞われ、普及まで長い時間を要する停電があちらこちらで発生しました。それを考えると、損傷した設備を完全回復してから電気を復旧させるのに長い不自由な時間を掛けるより、少しでも(時間制限があっても)自由に使える電力があれば、多くの人がより少ない不便さでその苦難を乗り切ることができたことでしょう。

それなのに同じ昨年の秋には九州で再生可能エネルギーの抑制が行われたことにも竹村さんは触れられました。九州では現在4基の原子力発電所やその他にも大型の石炭火力発電所が稼働しており、再生可能エネルギーの電力の抑制が行われる中でもしこれらのうち1つでも何らかの原因で急停止してしまったら…。北海道で起きたことが再現されるリスクがそこにあることを指摘されたのです。

その上で停電しないローカルネットワークの可能性について言及されました。これは大送電線の他に地域で作った小さな電力をそのエリア内で消費するネットワークを構築するという考えで、万一送電網が停電してしまってもローカルネットワーク自体は自分たちのネットワークの中で電気を融通し合って停電すること無く市民の生命や生活を守るというものです。そんな電力システムのあるべき姿についてご提案されてまずは第1部を終わられたのでした。

第1部の質問時間になり、話が盛り上がってきたところで受講者全員が大きい揺れを体感しました。会場は地下であったにも関わらずプロジェクターが大きく揺れ、万一の機材の落下を避けるため一部の方は席を移動されました(後の地震速報で渋谷付近は震度3)。

 

第2部は第1部のまとめを受け「市民発電のミライ」と銘打ち、これからの市民電力のあり方について若干駆け足ながらもご説明を頂きました。

まずは市民発電による産直電気というワードを切り出されました。これは電気の「産地直送」と同時に「地産地消」をも意味するものです。しかし、「容量市場」や「ベースロード電源市場」など再エネを締め出す電力新市場が資源エネルギー庁から提案されていること。新市場では減価償却(建設費などの初期費用を毎年少しずつ経常利益から返済に充てること、自動車のローンと同様)済みの古い電源や、原発や石炭が優遇されることも指摘されました。

その一方で、日本の再生可能エネルギーの可能性(ポテンシャル)として、日本の耕地面積-444万ha-に対して荒廃農地-28万ha-、この荒廃農地だけでもソーラーシェアリングで1.17億KWの発電ポテンシャルを持ち、発電量は日本全体の電力需要を8000億kwhとすると16%に相当する(しか、という考え方もできますが)と指摘されました。ソーラーシェアリングを農地全体に広げれば、それだけで日本の電力需要を賄える規模になります。

これから私たちが使うミライのエネルギーを考える上で、ソーラーシェアリングが太陽光発電の望ましい姿として力を入れられていること。つまり太陽光という資源は、一つは屋根の上、一つは畑と田んぼの上から取り出すことができるエネルギーであり、最近問題になっているような急峻な崖地での発電所や広大な自然を破壊するメガソーラーは必ずしも必要ないことも示唆しながら、ベースロード電源からの脱却と市民発電による産直電気の地産地消と、いざという時の地域電力の系統分離と自給自足体制こそが望むべき方向であるとして、最後に『あなたが使う電気をあなたが選ぶことで社会を変えることができる』として締め括られました。

ここまでの竹村さんのご講演の内容で皆さんはどんな感想を持たれたでしょうか。

これから私たちの使うエネルギーについて、「(他より比較的)安定と言われているベースロード電源」をお望みでしょうか。それとも「創意工夫と地域に根差した産直電気(再生可能エネルギー)」をお望みでしょうか。

ぜひとも皆様もこれを機会に一度ご自宅の電気を「従来のままのベースロード電源」でよいか、「産直電気」にパワーシフトするか、お考えになるきっかけとして頂ければ幸いです。(私も昨年の9月にパワーシフト致しました)

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