えねこや講演会概要レポート

投稿者: | 2019年12月8日

去る10月16日(水)という平日の夜でありましたが、かねてより市民研HP上にてインタビュー記事でご案内してきた『エネルギーを自給自足する小屋(えねこや)』(※)について代表の湯浅さん、理事のお二人をお招きしてその魅力とエネルギーの自給自足や、今年多発した台風災害による停電、インフラの老朽化など多岐に渡る話題をご提供頂きました。

えねこや講演会 概要レポート

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報告:橋本正明(市民研理事)

まずはトップバッターのお話として、えねこや理事の菅野さんから「えねこや」の活動の概要として数々のイベントの紹介、今年春にクラウドファンディングを活用して行われた「移動式えねこや」の深大寺境内での製作ワークショップなどの紹介があり、自作の断熱ボックスの写真では、参加者の間から感嘆の声が上がりました。

えねこやは、エネルギー自給自足(太陽光、太陽熱、木質バイオマスなど)で、小さなエネルギーで過ごせるよう断熱にも配慮しており、カフェなどのような普段から使っている場所、公共スペースとして利用してもらうこと、そしてこのような小さな建築を紹介して地域に広げていくこと、これらが地域に点在することで災害時などの避難、活動拠点になることが一つの目標と述べられました。またえねこや・オフグリッドシステムの設置は目下、年間2棟を目標に活動されているとのことでした。

移動式えねこやの説明もありましたが詳しくは湯浅さんのお話の際にということで、原発事故が契機で大量生産・大量消費の社会に疑問を持ち、見直す必要があるのではないかとこのような活動を始められた当時の想いをお話しになりました。

次に理事の大村さんのお話に移りました。大村さんは他の方々と切り口を変え、9月初旬に大停電を起こした台風15号に関して取り急ぎ作成された資料を中心にお話をされました。

【送電インフラの問題について】
・道路・橋など他のインフラ問題と同様「更新が追い付かない」
・東電の送電鉄塔の51%が更新目安の40年を経過。電柱や変圧器でも40年経過が今後急増の見込み。一方で高所作業員の減少と高齢化は深刻。
・90年代にたくさん作ったオール電化推進のための設備が今後続々と更新期を迎える。電力需要が低下しているなか、東電の経営にとって大きな負担となる。
・災害対策としての電線地中化は遅れていて、東京区部(送電線の9割を地中化)と他地域との間に大きな地域格差もある。
・電線地中化は暴風に対しては有効でも、地震や水害に対してはどうなのか、検討したい。

【今回、風台風とされた15号が通過した千葉県では】
・倒木(記録的な強風と樹林の手入れが不十分なことが主原因)による送電線や電柱の被害が広範な地域の停電を引き起こした。特に住宅の屋根破損が多かった鋸南町の一角の航空写真を被災前後で比較してみたところ、屋根上の太陽光発電パネルには目立った変化がなかった。サンプル少ないが、きちんとした工事が行われた太陽光パネルは飛んでいないのではないか。
・千葉や神奈川のソーラーシェアリングを行っている農場でも深刻な被害は免れたようだ。自然エネルギー発電施設の耐久性や、オフグリッドが被災時に有効であった例など、埋もれているポジティブな情報をもっと発掘・発信すべき。

【太陽光パネルの火災リスク報道について反論的意見】
・市原市の山倉ダム湖で起きた暴風の影響による太陽光発電パネル火災は、水上ソーラーの可能性に期待していた者として残念。この事故に乗じて、住宅用ソーラーパネルも危ないとの印象を与えかねない一部の報道があった。政府系機関のデータによるとパネルが発火する確率は小さいが、屋根に燃え移るのを防ぐ施工法によってリスクをさらに低減できることが明らか。
・太陽光パネルは屋根一体の製品はスッキリしているがメンテナンスが大変。いざと言う時など交換しづらい。屋根上パネルであれば(例えば性能が上の製品との)交換も比較的容易である(湯浅氏のコメント)。
他にも余談的に、この会の前週10月12日に襲来した台風19号と、完成して間もない八ッ場ダムについても話された。同ダムは一夜にして満水になったが、試験貯水を始めたばかりでダム湖は空に近かったため上流の豪雨を貯め込むことができた。しかし、通常の運用をしていれば、この時期のダム湖の水位ははるかに高かったはずで、緊急放水さえありえたという興味深いお話を述べられるなど、早いテンポで小気味よく色々なデータと意見を述べられました。

湯浅氏のお話は、理事のお二人のお話を踏まえてのものでした。
政治に無頓着であったが3.11を契機に活動を始められたこと、地球温暖化の影響と思われる現象が特に最近顕著だと感じられること。森林火災やハリケーン被害などの問題、そして日本もウォーターフロントにおける洪水や高潮など他人事ではないはず。以下、内容について幾つかの項目に分けて箇条書きにしてみました。

【エネルギー全般について】は、
・日本は再エネ比率高くない。また一人当たりのCO₂排出量は、世界でもベスト5に入る。
・現在一般的に燃料は海外からの輸入に頼り、価格も、外国との関係や政局などに左右されやすい。
・オフグリッドは災害時に周りが停電でも影響を受けないという強みあり。反面、システムがダウンする可能性あり。その代り完全な再エネ、究極の地産地消が実現可能。
・住宅は断熱・気密を上げて快適性を保ちつつエネルギー使用量を下げることが重要。
・必要なエネルギーは地産地消の再エネとすべき、ならばオフグリッドやってみようと
・原発など遠くにある大規模発電所からの電気はロスも大きく、各家庭に届くときには大体3分の1に目減りしている、つまり自分で使っている電気の2倍以上はロスしてしまっている計算。決してクリーンではないし、効率がいいとは思えない。だから電気は大事に使うべき。ガスとかはここで燃やしている分にはそんなにロスは無い。適切な使い分けを考えることが大事。
・エアコンは昔に比べ大分効率が良くなった。
・給湯と暖房がエネルギー全体の使用量の半分以上を占めているということも重要なポイント。

【オフグリッドを始めるに当たってまず注意すること】としては、
・「コンパクトな空間」にすべきであるということ。大きい家はエネルギーを沢山使う
・徹底的に断熱・気密を高める。エアコンを点ければすぐに効き、しかも長く保てる
・必要となる小さなエネルギーは再エネで。個人住宅で風力はまだ現実的でない、太陽光とバイオマスが中心になる
・直射日光(ドイツではハンパなかった)を遮る。外で遮蔽するブラインドが特に効果的。これで更に断熱・気密を高めれば夏の冷房が不要になるかも。

【建築で考えるなら、いかに暖房と冷房を減らすか】
・冷房は何とか太陽光(発電)で賄える。暖房は無理なのでペレットストーブを使用。
・昔の家だと気密もよくないし、断熱材入って無いから漏れまくっている。バンバン暖房点けて、バンバン燃料燃やして、だからエネルギーがたくさん要る。
・今では当たり前だが断熱材入れる。これがドイツだったら日本を12センチ厚とすると4倍くらいの30~40センチ。北海道のような寒いところでは比較的仕様は高い。
・夏は太陽熱を入れない、軒は昔の家では当たり前のようにあったが、無理なら緑のカーテンや簾、お金があれば外付けのブラインドなど、外にあれば圧倒的に遮熱できる。
・事務所である六曜舎は築40年の家をスケルトン・リフォーム、大胆に屋根を切妻から片流れにカット。
・移動式は「東京の木」や国産の材料にこだわった。遠くからCO₂出して運んで来る必要ナシ!
・断熱材の仕様を高めれば体感温度を上げることができる。
・断熱材が少ないと(特に外が寒く)中に冷温が伝わると湿った空気が冷やされ、壁が結露してカビが生えてしまう。今の新しい家はあまり無いことだが、壁の中ではありうる
・エアコン点けて室温20℃あるのに寒いのは冷輻射(太陽からの熱の反対)が理由、同じ20℃でも断熱材が入っていれば体感温度は室内の気温に近づく。
・窓は一つだけ開けても効果は少ない、入口と出口を設けることで効果的な換気ができる。
・熱い空気は上に上がる。夏など上が暑い時、上に風抜きを作っておくと、風が無い時でも自然に換気ができる(1階の掃出しなど低い位置の窓を開ければ、比較的涼しい空気が室内に入る)。
・断熱材ギューギューに詰めて、東京のゼロエネルギーハウスの基準(外皮平均熱貫流率:下記注参照)UA値0.6をクリアどころか、えねこやは窓性能良いもの(トリプル(三重)ガラスサッシ)を使っているからUA値0.48。(注:参考サイト「家づくりを応援する情報サイト」 https://polaris-hs.jp/zisyo_syosai/ua_chi.html
・ペレットストーブ、業者から送ってもらう。煙は出ないし灰が少ないので市街地に向いていると思われる。薪(まき)ストーブだとどうしても不完全燃焼で煙が出る。
・深大寺の湧水と同じ地下水層への手掘り井戸の話。

・蓄エネはフォークリフト用の鉛バッテリー、システムを考えたのは岡山県「自エネ組」の大塚さん。水を足したり年に1回薬剤入れたりと手間を惜しまない人向。
・通常の住宅で使うリチウムイオン電池の場合、5~6KWだと1日で空に。
13KWくらいないと安心できない。事務所の蓄電池18kWh(鉛蓄電池の場合、耐久性を考えて、実質50%の9kWhまでを目安に使う)だと2日くらい大丈夫。
・事務所内の電力消費の比率を知るため、照明は照明で1回路、エアコンはエアコンでという具合に回路を分けた。完全に分けたので電力消費比率が手に取るよう判った。
・エアコンは夏も冬も、晴れていれば結構使うので比率は高め。
・ずっと動いている冷蔵庫や通信機器などが占める割合は大きく、分析してみるとよく分かる。
・照明のLEDは消費電力少ないし、電子レンジはピンポイント。
・夏はエアコンと冷蔵庫、ドライヤーは別として冬は暖房便座が消費電力量大きい。
・太陽熱温水器は春〜秋は毎日使える、冬でも晴れればシャワーも風呂も問題なく使える。
・湯沸かし器は付けていないので完全にこれに頼ったらどうなるかやってみたところ、冬の寒い日に雨が続くとお湯が無くなってしまうが、1年の75%の日で40℃のお湯が得られた。だから私はずっとここ(六曜舎)でシャワーとお風呂を使っている。夏は逆に90℃以上になると設備を守るためお湯が排水されてしまう。もったいないので家族全員で隣の自宅ではなくてこちらでシャワーを浴びる。とても優れモノ。

【3年を過ごしてみた結果】
・毎日天気予報視て雨が続くと少し工夫しながら頑張るくらい
・本当に厳しい時はスタッフに、電子機器を使わないよう仕事のスタイルを変えてもらう
・電気も温水も作ってもらっているので、太陽のありがたみがよく分かる
・小さな空間なら省エネを少し工夫すれば大丈夫

最後にドイツを視察した際の話をスライド交えて紹介され、懇親会も盛況のうちに終えることができました。

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