根本的に社会構造を変えるなら(前編) ~最小限の投資で最大限の効果を~

投稿者: | 2022年7月15日

根本的に社会構造を変えるなら(前編)

~最小限の投資で最大限の効果を~

橋本正明(市民科学研究室・会員)

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地域の農林水産業、人・モノ・カネの経済活動、エネルギー需給、資源循環、など幅広い分野について市民の視点から『地産地消』をキーワードに、『自分の専門分野の常識は他分野のイノベーションの素である』ことを標榜し、様々な分野横断的な見地からの知識、知見、意見などを交換し合うことで、分野単独では不可能だった新しい手法の開発や発見、相互発展的なアイデアの創出を目指し、今後の市民生活の向上や地域社会のみならず日本の発展に資することを目的とすることが肝要である。

(1)【熱】:Commonsから得られる再生可能エネルギー

我々は身の回りにある未利用エネルギー、特に熱エネルギーの利活用に目を向ける必要がある。化石燃料や鉱石は【私有地】から掘り出され、その採掘地には所有権が設けられ、それ自体は土地の所有者の私的財産であると見做される。

翻って再生可能エネルギーはどうだろう。確かに森林資源には私的所有権が認められており、日照権や水利権、温泉地などでは源泉の所有権といった個人或いは一定の規模の集団に対して付与されている。しかしながら風や環境中の熱には所有権を主張することができない。それらは私有することが不可能なのだ。つまりこれらは【Commons】に属するエネルギーなのである。しかも特に【熱】はどこでも手に入れられるにも関わらず、これまでとかく厄介者扱いされた挙句に環境中に無作為に廃棄され続けてきた。その集大成が都市部では年々酷くなる一方のヒートアイランド現象である。それら無計画に廃棄された熱を処理するために夏はどこでもエアコン冷房が欠かせない。いわばそれは無駄の連鎖反応的スパイラルに他ならない。

地球上の人間は空気≒空間を共有、いわば共有空間に生きている。そこにCommonsの拡大解釈が適用できるはずである。前述の制限はあるものの、基本的に再生可能エネルギーはCommonsに属する性格が強いエネルギーである。そこから取り出す、即ちCommonsから引き出されるエネルギーこそが次世代の新しい、共有財産の公平な分配に応じた資源であるだろう。ヒートアイランド現象(熱汚染)はエネルギーにおけるCommonsの悲劇であると考えることができるだろう。

それに家庭での風呂や給湯など、水を温めることに必要な熱エネルギー(水の比熱)はCO₂の約5倍程度(0℃、CO₂気体、H₂O液体)と大きく、工業用ではプラント材料の余熱など、湯を沸かす際に電気を熱に変換したり、化石エネルギーを燃焼させて温めるよりも、環境中の熱エネルギーを使った方がよりCO₂を排出しない。ちなみに簡単な思考実験を試みてみよう。実際に太陽熱温水器を使っている家庭(事務所兼:協力六曜社)では、夏では90℃、冬でも40℃前後の熱水が得られるそうである。これについてあくまでも目安的であるが、比熱4187.3655 [J/kg K]として、

水比熱係数×水量×(加温後水温-水道水温)÷灯油換算係数 =温(水)熱換算灯油量/日
真冬: 4.187KJ×200 ℓ×(40-7.3)÷ 36490KJ = 837.4×32.7÷ 36490=0.75042 ℓ/日(2か月でおよそ45ℓ)
真夏:4.187KJ×200 ℓ×(90-25.4)÷ 36490KJ =837.4×64.6 ÷ 36490=1.482489 ℓ/日(2か月でおよそ88.9ℓ)

とできる。単純に灯油代だけの節約として考えるよりも、化石燃料の燃焼により発生した熱の抑制と考えるべきである。何故なら燃焼で得られたエネルギーは最終的に環境中に全て排出されてしまうので環境中に過剰な【熱】エネルギーを全量排出してしまうことになる。それは夏だと特にヒートアイランド現象に寄与し、余計な冷房運転で余計な電力消費を生み、余計な火力発電所運転を招き温室効果ガス排出の負のスパイラルを生み出してしまう。そう考えると太陽からの熱をはじめとする環境熱の利活用は化石燃料の使用より遥かにマシであるだろうし、排出せずに済ませたCO₂についての削減効果を評価すべきである。そして環境中の熱エネルギーを様々な形で利活用(3R、断熱・熱回収温熱利用、熱回収発電)することで、化石エネルギー(原子力含む)を使ったベースロード電源を置換し、その使用を逓減させることが可能となるであろう。

例えば産業分野の排熱実態調査の報告書(2019)によると、アンケート調査による2015年での未利用な工場排熱エネルギーは日本全体で743,206 TJとなっており、これを原油換算すると、1TJ=25.8㎘(原油換算)なので、743,206×25.8≒19,174,714.8㎘となり、ドラム缶約9600万本弱のポテンシャルがあったことになる。これを環境中に垂れ流すのはあまりにモッタイナイどころか、その空調冷暖房のために掛けるエネルギーが二重投資になってしまい、無駄なことこの上ない。

ちなみに平成27年(2015)当時のWTI、為替レートで計算すると

NY原油先物(2015)$48.71/バレル、¥121.0440/$
原油量単位換算158.987294928リットル/バレルなので、㎘あたり原油量金額換算(円)は、48.71 x 121.0440 ÷ 0.158987294928 ≒ \37085.0603/㎘となる。

即ち、廃熱熱量の(当時の先物価格評価での)原油輸入金額評価は、

19,174,714.8 × 37085.0603 ≒7110.95 ×(10⁸)≒ 7111(億円)

つまり2015年当時、日本中で1年間に7111憶円ものエネルギーを『ドブに捨てていた』と考えることが可能となる。(以下2015年アンケート調査結果表)

産業分野の排熱実態調査 企業アンケート(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)

これらのアンケート結果からも分かるように、排熱の温度帯は200℃未満が実に76%を占めているが、その殆どは電力由来である。しかしこれはそもそも論として化石燃料燃焼型の火力発電の廃止で減らすことが可能であろう。問題はそれ以外の炉の排熱をいかに生かすかのみではなく、炉自体を化石燃料型ではない別の何かに代替すること、必要な温度帯をカバーする非化石熱供給システムで置き換えればCO₂の排出そのものが消失するのではないだろうか。とかく、エネルギー問題を論じる際に【エネルギー変換効率】が重要視されるが、高効率型と言ってもトリプルコンバインドで最高60%に満たない熱変換効率では、今後の化石燃料価格高騰の時代に無駄に捨てるエネルギーが多過ぎる。これからは単純な【熱効率】ではなく、【廃棄エネルギー総量】で考えるべきであり、廃棄エネルギー総量を減らす努力を行うべきである。

もう一つ思考実験を重ねてみよう。例えば仮に2020年8月15日に東京都大手町での太陽放射熱(概算)が一律東京都23区全体(619㎢)に降り注いだとしてどのくらいの熱量になるか試算すると、

∑(全天日射量)×619×(10⁶)≒72.846×619×(10⁶)=45091.67×(10⁶)GJ、これに原油換算係数0.0258を乗じると、45091.67×(10⁶)×0.0258 ≒1163.36×(10⁶)㎘

即ちドラム缶にして58.1億本、東京ドーム(容積:124万㎥)およそ938杯分もの膨大な資源がこの日たった1日で得られる計算になる。

別な例え方をすると、令和2年(1月~12月)の日本の原油輸入量(概数)14388万㎘で割ると116336×(10⁴)÷[14388×(10⁴)]≒ 8.085 、つまり日本の原油輸入量でおよそ8年分に相当すると考えることも可能である。

そしてそれを更に令和2年(2020)当時のWTI原油先物価格、為替レートで計算すると、

NY原油先物(2020)$42.36/バレル、¥106.0415/$
原油量単位換算158.987294928リットル/バレルなので、㎘あたり原油量金額換算(円)は、42.36×106.0415÷ 0.158987294928 ≒ \28253.33/㎘ となる。
即ち、前述の太陽放射熱量の(当時のWTI先物価格評価での)原油輸入金額評価は、
1163.36×(10⁶)×28253.33= 328687.93×(10⁸)= 328687.93(億)≒ 32.87兆円

となる。ちなみに参考値としてウクライナ危機とハイパーインフレの加速しつつある2022年4月30日のレートでは、WTI原油先物価格と為替レートではそれぞれ、$104.11/バレル、¥129.849/$となり、同様の計算を行うとおよそ\85029.35/㎘ となる。僅か2年で日本の原油の実質購買力は1/3に低下してしまったのである。

2020年の国内総生産(GDP)は52. 8兆円なので、夏の一番日射量のある1日に東京都内23区に降り注いだ太陽熱のポテンシャルを原油輸入量額評価すると2020年の国内総生産(GDP)のおよそ6割だったということになるし、前述の計算での2022年4月での太陽放射熱量の原油輸入金額評価はおよそ98.6兆円であり、2倍近く大幅に超えている。これはもはや輸入が馬鹿らしくなるような数字ではないだろうか。同時にそれは太陽熱やバイオマスによる熱の利活用や断熱による熱損失の低減が大いに意味を持つことになる。そして温暖化の進行により年々暑い日、即ち熱エネルギーはより多く降り注ぐのは間違いない。熱エネルギー資源は増大しているのである。

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