発酵という魔法 ~小さな生き物 微生物の大きな力を探る~

投稿者: | 2007年9月5日

写図表あり
csij-journal 008-009 yamadera.pdf
子ども料理科学教室 公開実験 第5回
2007年9月16日(日) 実施 午前10時半~午後1時
発酵という魔法
~小さな生き物 微生物の大きな力を探る~
食の総合科学プロジェクト  山寺 久美子
私達日本人は、発酵食品の恩恵をたくさん受けています。味噌、醤油、酢、味醂などの調味料の他、かつおぶしや納豆など毎日の食事に欠かせないものばかりです。これらの食品をきっかけに、微生物をより身近な存在に感じてもらえたらと思います。
****************************************
プログラムの流れ(17のクイズをもとに話しを進めます。)
酵母液をつくってみよう
1・微生物とは
  1・地球上で一番小さな生き物は何でしょう?
  2・パンの「かび」とチーズの「かび」の違いを考えてみましょう。
2・良い微生物の働き(ヨーグルトづくり・甘酒づくり・パンづくり)
ヨーグルトづくり
3・ヨーグルトは、どうやってつくるのでしょう?
4・牛乳とヨーグルトを混ぜたものを、どうすればヨーグルトになるでしょうか?
甘酒づくり
5・甘酒は、どうやってつくるのでしょう?
6・おかゆと麹を混ぜたものを、どうすれば甘酒になるでしょうか?
パンづくり
7・パンはどうやってつくるのでしょう?
8・パンは、いろいろ条件を変えるとどうなるのでしょう?
3・発酵(はっこう)とは
9・トレーの上にある食べ物は何でしょう?
発酵食品の仲間
10・ヨーグルト・甘酒・パンと同じ発酵食品の仲間はどれでしょう?
微生物の種類
11・細菌を米粒に例えると、人は、どれくらいの大きさ?
(①郵便ポスト ②10F建てビル ③東京タワー)
4・酵母の働き
発酵させたパン生地の観察
12・パンの膨らみの違いから何が分かりますか?
二酸化炭素発生装置の観察
13・吐き出した息の量はどうやってはかる?
14・この実験から、パンはなぜ膨らむのか考えてみよう。
5・微生物を見てみよう。
6・まとめ
15・私達の体の中で微生物が一番多く住んでいるのは、どこでしょう?
16・ウンチのどれくらいが微生物?
17・発酵で食べ物はどのように変わりますか?(①おいしくなる。       ②塩からくなる。③栄養が増える。④長持ちする。⑤きれいな色になる。)
軽食
****************************************
*以下の文書中の、枠内は子供達に対するクイズ、黒文字は実際のプログラムの内容、青文字は詳しい解説です。
酵母液をつくってみよう
*酵母液とは?・・・果物・野菜・ハーブなどで仕込んだ自家製酵母の元種のことです。
料理科学教室の参加申し込みを頂いた方に、事前に下記のような資料をお送りし、酵母液を仕込んで持ってきてもらいます。
1・微生物とは
1・地球上で一番小さな生き物は何でしょう?
質問をきっかけに、「微生物」について話しをします。”ばい菌”やかびに、子供達がどのようなイメージを持っているか聞き取ります。
*微生物とは、人間の目では見えない大きさの生物の総称で、ウィルス、細菌(バクテリア)、酵母、カビ、さらには藻類の一部なども含まれます。地球上のほとんどどこにでも存在し、1gの土の中には10億もの微生物がすんでいるといわれます。微生物には、O-157のような病原性大腸菌など人間に悪い影響を与えるものもいますが、ヨーグルトや酒などの発酵食品を作るなど有用なものも多いです。また地中にいる微生物は、落ち葉や動物の死骸を分解して土に還し、自然の物質循環で重要な役割を果たす存在です。
2・パンの「かび」とチーズの「かび」の違いを考えてみましょう。
 かびの生えたパンとブルーチーズの観察をします。「かび」というと悪者のイメージがありますが、同じ「かび」でも人間が意図的につけたかび(人間にとって良いかび)と意図せずについたかび(人間にとって悪いかび)があることを話します。
2・良い微生物の働き(ヨーグルト・甘酒・パンづくり)
あとで(3・発酵とは)発酵食品を微生物の種類で分類するにあたり、細菌(→ヨーグルト)・酵母(→パン)・かび(→甘酒)のそれぞれが関わる食品のつくり方を探ります。
ヨーグルトづくり
3・ヨーグルトは、どうやってつくるのでしょう?
4・牛乳とヨーグルトを混ぜたものを、どうすればヨーグルトになるでしょうか?
まず、ヨーグルトの味からつくり方を想像してみます。さらに、牛乳とヨーグルト種を混ぜたもの(発酵前のもの)と、出来上がったヨーグルトを食べくらべ、味・におい・見た目の違いを確認し、つくり方を考えてみます。そして実際に仕込み、教室の最後に試食してみます。(発酵時間は約1日必要ですが、2時間でどのような変化があるか、みてみます。)
*ヨーグルトのつくり方・・牛乳にヨーグルト(カスピ海)の元種を加え常温で1日置く。
甘酒づくり
甘酒の紹介・試飲をします。
*甘酒は、麹で米を糖化させて作る甘い飲料です。酒屋で売られていたことから「酒」と言いますがアルコール分は含まれていません。江戸時代には、夏バテ防止にたくさん飲まれていました。
5・甘酒は、どうやってつくるのでしょう?
6・おかゆと麹を混ぜたものを、どうすれば甘酒になるでしょうか?
ヨーグルトと同様に甘酒のつくり方を想像してみます。仕込んで、教室の最後に試飲をします。
*甘酒のつくり方・・60度くらいのおかゆに麹を加え、6~10時間保温する。
(炊飯器で保温するとよい。)
牛乳(甘酒の場合はおかゆ)とヨーグルト種(麹)を混ぜると、ヨーグルト種(麹)の中にいる微生物が増えてヨーグルト(甘酒)が出来ることを説明します。さらに発酵に関わる微生物の名前を紹介します。(ヨーグルトは「乳酸菌」、甘酒は「麹かび」)
パンづくり
7・パンはどうやってつくるのでしょう?
ヨーグルト・甘酒と同様、つくり方を想像してみます。その後、パンの発酵に関わる微生物「酵母」の紹介をしながら、失敗例を交えたパンづくりのデモを行います。
材料 (6人分)
強力粉   300g
ドライイースト 6g
砂糖     30g
塩       5g
ぬるま湯  175cc
つくり方①
材料をすべて混ぜてよくこね、40分・35度前後で発酵後(一次発酵のみ)オーブンで焼く。
失敗例 つくり方②材料にドライイーストを入れない。
        ③発酵時間をとらずに焼く。
        ④ぬるま湯を熱湯にかえる。
        ⑤ぬるま湯を冷水にかえ、冷蔵庫で発酵させる。
8・パンは、どうなるのでしょう?
①~⑤のパン生地が発酵後にどうなるか予想してみます。(4・酵母の働きで確認する。)そして①の方法で各班ごとにパンづくりの実習をします。
3・発酵(はっこう)とは
15種の食品をトレーに乗せて配ります。
9・トレーの上にある食べ物は何でしょう?
味に注目してもらうため、試食をして15種の食べ物は何か確認します。
(15種の食べ物)
醤油 酢 味噌 納豆 ビール みりん 白カビチーズ 鰹節 塩 煮豆 レモン 麦茶 スポンジケーキ 豆腐 きな粉
発酵食品の仲間
10・ヨーグルト・甘酒・パンと同じ発酵食品の仲間はどれでしょう?
「発酵」「発酵食品」という言葉を紹介します。(”人の役にたつ微生物の働きを発酵・その結果できた食べ物を発酵食品と言います。”)発酵食品は独特の匂いがするものが多いことから、ヨーグルト・甘酒の匂いを参考にして、15種の食品から発酵食品の仲間を探ります。
(発酵食品)
醤油 酢 味噌 納豆 ビール みりん 白カビチーズ 鰹節
(非発酵食品)
塩 煮豆 レモン 麦茶 スポンジケーキ 豆腐 きな粉
微生物の種類
微生物の種類(細菌・酵母・かびに分類される。)を説明し、大きさの比較をします。
細菌を米に例えると、酵母は卵の黄身くらい、かびは林檎くらいです。
11・細菌を米粒に例えると、人は、どれ位の大きさ?(①郵便ポスト②10F建てビル(30m)③東京タワー(333m))
人は東京タワーくらいの大きさです。
* 細菌 0.5~2μ        1μ=1000分の1mm
酵母   4~8μ
かびの胞子4~8μ
かびの菌糸 直径 8~13μ、長さ1000μ
そして発酵食品を微生物の種類により分類します。分類には下記のような図を使います。図の中の、ヨーグルト・甘酒・パンの位置を確認してから、その他食品について考えます。
               主に細菌の作用による食品
主に酵母の作用による食品     主にかびの作用による食品
4・酵母の働き
発酵させたパン生地の観察
12・パンの膨らみの違いから何が分かりますか?
(2・良い微生物の働き)で仕込んだパン生地(①~⑤)の膨らみを比較します。
①約2倍に膨らむ。
②膨らまない。
③膨らまない固いパンが焼ける。
④膨らまない。
⑤膨らみが悪い。
*パンを膨らませるためには、酵母の活動(パン生地中の糖分を分解し、二酸化炭素を生成する)が必要です。発酵に適した温度は、酵母が最も活発に活動する35度前後です。
二酸化炭素発生装置の観察
試験管に希釈したグルコースとドライイーストを入れ、発生した二酸化炭素を水上置換法で集めます。グルコース液の温度(25度と45度)により、発生する二酸化炭素の量がどのように変化するかを約1時間記録し、グラフを作成します。最後に石灰水で、発生した気体が二酸化炭素であることを確認します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
発酵によって発生する二酸化炭素の定量
材料:10%グルコース ドライイースト1g 飽和石灰水
実験器具:500mlビーカー 100mlメスシリンダー 試験管 ゴム栓 
ガラス管×2 ゴム管×2 鍋(直径25cm以上の深鍋が望ましい)
   駒込ピペット
方法:
① 実験装置を組み立てます。
実験装置は2つ用意します。(45度用と25度用)
② 10%グルコース溶液を作り、ドライイースト1gを入れよくかき混ぜます。
③ 500mlビーカーに一定温度のお湯を用意します。
一定の温度を保つために5分毎に温度を確認し、温度が低くなるようなら魔法瓶よりお湯を継ぎ足していきます。
④ 実験装置の試験管に②を20mlを取り、湯につけます。
⑤ ガスが発生してきたらメスシリンダーにたまるガスの量を測定します。
⑥ ガスのたまったメスシリンダーに駒込ピペットで飽和石灰水を注ぎ指で蓋をして良く混ぜます。
実験結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13・吐き出した息の量はどうやってはかる?
人間が吐き出した息の量のはかり方を考えます。それをもとに、酵母が出した二酸化炭素のはかり方(この実験における)を説明します。
14・この実験から、パンはなぜ膨らむのか考えてみよう。
酵母の呼吸により発生する泡(試験管の中で発生した泡)を、パンの膨らみと結びつけてみます。さらに、この泡と、参加者に持ってきてもらった酵母液から発生した泡の、共通点(同じ酵母の呼吸によるもの)と違い(ドライイーストと野生酵母の違い)を考えます。
*ドライイースト(パン酵母)はもともと自然界に存在した野生酵母の中から製パン性能に優れた品種を選抜したものです。栄養源として糖蜜を使い培養タンクの中で酵母のみを効率良く増殖させる方法が考案され、安定供給できる様になったものです。ドライイーストは乾燥しても死なずに休眠するイースト品種を使って、特別な培養を行った後に乾燥しているため冷暗所に保存すれば6ヶ月以上の日持ちがあります。イーストの製造工程は、他の食品製造とはかなり異なり、「培養」がその中心となります。培養とは、イーストが増殖するのに適した温度や栄養分、酸素などを整え、イーストを効率よく増やすこと。つまり、イーストがみずから行う増殖活動を助ける作業といえます。
5・微生物を見てみよう。
顕微鏡の使い方を学びながら、ヨーグルト・甘酒・パン・酵母液の中の微生物を観察します。
6・まとめ
15・私達の体の中で微生物が一番多く住んでいるのは、どこでしょう?
身近な微生物の例として、腸内細菌の話しをします。腸の中には、約100兆もの微生物がいると言われています。
16・ウンチのどれ位が微生物?
大便は、食べ物のカスと思いがちですが、実は約1/3は腸内の微生物です。
17・発酵で食べ物はどのように変わりますか?(①おいしくなる。②塩からくなる。   ③栄養が増える。④長持ちする。⑤きれいな色になる。)
試食した発酵食品をヒントに発酵の力について考えます。
正解:①おいしくなる。③栄養が増える。④長持ちする。
最後に、水をきれいにしたり、ゴミを土にかえしたり、薬をつくったり、人間の役に立つ微生物の話しで締めくくります。
軽食
子供達のつくったパン(バターを添える)・手作り味噌(キャベツ・きゅうりを添える)林檎酵母のジュースと、発酵途中(2時間発酵)のヨーグルト・甘酒の試食をします。また、酵母液を持ってきて頂いた方に、酵母液を料理に使う方法をお伝えします。
*酵母液を料理に利用してみてください!
今回つくっていただいた酵母液は、調味料のかわりに料理に使えます!色々と試して、御自宅の味づくりにお役立てください!
「林檎酵母・梨酵母・トマト酵母などやさしい香り、まろやかな味のものは、スープのだし汁・煮物・炊き込み御飯などに1ビンくらいたっぷり使ってみてください。ゆず酵母・しそ酵母・ハーブ酵母・玉ねぎ酵母などは、2さじ、3さじ料理に加えて、個性的な味と風味を楽しみます。味に深みや強いうまみを出したい時、また、肉や魚の臭み消しには、梅酵母・しょうが酵母がおすすめ。どんな酵母でも、あふれるほどの泡がたっている時は、パン種に。調味料は、なるべく控えて、酵母そのものの味を生かします。」
                「酵母ごはん」 ウエダ家 著(学陽書房) より
***************************************
参加した大人の方からいただいた感想(と反省など)
●大変よかった
パン作りや、あじみなど体験を通して子ども達が楽しく取りくめた点がとてもよ
かったと思います。クイズなどもあり、子どもたちも集中してとりくんでいたよう
に感じました。
●大変よかった
自分の実験の体験として、学べる点はとてもよかった。子供の中で、ちゃんと、
消化せず次の話題にうってしまい、あわただしいと思います。もりだくさんすぎ
るのかも・・・。でも、とても楽しそうでした。
毎回盛り込みたい内容がたくさんあり、つい欲張りになってしまいます。子供達が理解しやすい展開をもう少し考える必要がありそうです。
●よかった
発酵というキーワードを中心に、微生物がいかに働き、人間の食生活と深い関わ
りがあるかを、講義と実験、五感を使う体験を通して子どもたちにうまく伝えて
いました。とてもいい題材が盛りだくさんなので、ここでとりあげられたことを
広げて、しっかり理解できる場を設定していくと(それは家庭や学校で)いいなと
思いました。
●大変よかった
手で実際にさわって、いじれる所。けんびきょうにより実際に物を見る。
身近なテーマがより関心を集めやすい。
●大変よかった
非常にわかりやすい。準備がよくできている。
実験を見せるとき、全員に見やすい工夫をお願いします。
パンの膨らみの比較・二酸化炭素発生装置の観察・顕微鏡観察の際は、子供が数名、後ろで溢れてしまい、その子達への対応が不十分でした。今後まわりにもう少し広いスペースを確保する必要があります。
●大変よかった
実験や観察を通して、説明されたことを確かめられたり、実感したりできるので
とても良いと思います。子どもにとって、何かを深く知りたいというきっかけに
もなることができるよい機会になれると思います。内容が盛りだくさんだったの
で、もっと時間をかけてひとつひとつ考える時間があると良いと思います。ス
クールの授業でやるとしたら3回くらいに分けて行うとよいかもしれません。
●大変よかった
大人も十分に楽しめて、新しい発見のある講座でした。こんなに簡単にパンがで
きるとは! 確かに大昔から人間が食べているのだからそんなに手間のかかる事
の訳はないですよね。家でも作ってみます。
今回の「発酵という魔法」は大人も十分楽しめるプログラムだと思います。今後は、子供達だけでなく、大人にも一緒に楽しんでもらえるものにしたいです。
参考文献
くらしと微生物     村尾 澤夫 ほか
発酵          小泉 武夫
日本の伝統食を科学する 小泉 武夫
酵母ごはん       ウエダ家
酵母食レシピ      ウエダ家

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です