食の総合科学プロジェクト ベルギーでビールを飲んできました

投稿者: | 2005年4月12日

食の総合科学プロジェクト
ベルギーでビールを飲んできました
文責:高橋哲也
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 ベルギーにビールを飲みに行って来ました。なぜベルギーかって? ベルギーのビールは魅力的なんですよ。ベルギーのビールの特徴は一言で言うと「なんでもあり」。多様性とおもしろさにかけては世界一でしょう。原料にフルーツ、スパイス、果ては砂糖が入っているビールまであります。味の方も千差万別。ワインのようなもの、カラメルの味がするもの、梅酒のようなもの、いろいろです。日本のビールが、決められた原料から同じような例のあの味を目指して作られるのとは好対照なのです。このような違いが生じる背景はいろいろありますが、一番の原因は、日本にビールメーカーが数社しかないことと、日本人のビールのイメージに多様性がないことだろうと思います。
 さて、ブリュッセルの南駅に着いてまず行ったのがCantillon醸造所。ブリュッセルの街中にあります。ここではランビックという自然醗酵タイプのビールを造っています。屋根裏部屋には大きな銅製のプールがあって麦汁を冷ましますが、その時に空中から落ちてくる野生酵母だけでその後の醗酵をやってしまうというわけです。そしてこのお部屋、実はあまり掃除しないそうです。その理由は、昆虫や蜘蛛と野生酵母の関係を保つためだそうで、屋根裏部屋の生態系とそれを見守る醸造所の人たちに感心しきりでした。醗酵は樽の中で進みます。樽を置いた部屋は、醤油のようでいてもっと上品な匂いがしました。さて味の方ですが……一口飲んで、まずい! ヨーグルトに似た乳酸の味ですが、すっぱさ加減が半端じゃなかった。しかし、時間が経つとまた飲みたくなってくるんですね。その秘密は後味。さわやかさと芳香がやんわりと残り、非常によい気分になれます。「まずいまずい」と大声で言いながら、おいしく飲み干してしまいました。
 その晩、ベルギーの名物料理、蒸しムール貝を食べました。野菜のスープで蒸されたムール貝がバケツ一杯に出てきます。ここで飲んだのがBrugsという白ビール。白ビールは、小麦を原料にした甘酸っぱい香りと酵母の匂いが特徴のビールです。Hoegaardenという銘柄の白ビールは日本にも結構入ってきていますので、ご存知の方もいるかと思います。さて、このBrugsですが、甘くないのですがフルーティな香りが広がり、続いて軽い苦味と酵母の匂いが現れます。日本のビールとはまったく違った味わいです。しかも蒸しムール貝との相性が非常によかった。貝をほうばって、あの苦味にも近い凝縮された旨みを感じながら、Brugsを一口飲むとフルーティな香りがさらに旨みを引きたててくれます。よくどの料理とどのワインが合うなどと言いますが、図らずもビールと蒸しムール貝でそんな経験ができて大興奮でした。
 次の日は、ゲントとブリュージュに行きました。どちらも古い町並みがきれいな町でした。お昼には鶏のシチューを食べたのですが、その時飲んだのがTourtelというビール。このビール、それまで聞いたこともなかったし、日本に帰ってきて調べてみてもいまひとつよく分からないビールなのですが、実に美味かった。モルツのような丸い甘口から入って苦味、酵母の匂い、粒あんの匂い、と続きます。最後の粒あんの匂いがすごいお気に入りです。ビールとつぶあん、想像してみるだけでも気持ち悪いですよね。それがどういうわけか見事に融合されているのがびっくりでした。
 お昼からStraffe Hendrik醸造所に行きました。ここはCantillon醸造所と違って工程のかなりの部分が近代化されていました。しかし、昔の設備も残っており、昔の醸造の話も聞くことができました。一番大変だったのは熟成タンクの掃除で、でかいタンクの中に入って人手でアンモニアを使った拭き掃除をしていたそうです。臭さと酸欠でくらくらするそうで、実際死者も出たそうです。この醸造所の名物はビール関係のコレクション。缶とグラスが部屋一面にずらーっと並んでいます。ここのビールはわりと日本のビールに近い味でしたが、様々な香りが入っており、最も強かったのが海苔っぽい匂い。抜群のおいしさではなかったものの、これはこれで面白い味。
 次の日は、アントワープのビア・カフェKulminatorに行きました。ビア・カフェというのはビールだけを飲ませるお店のことで、ベルギーでは至るところにあります。ベルギーの中年以上の人たちにとっては、顔見知りとゆっくり会話を楽しむ場になっています。僕が行った時も中年夫婦が4人で楽しそうにおしゃべりしていました。なかでも一番楽しそうにしていたのがビールを選ぶとき。どんなビア・カフェも50種類ぐらいはビールを揃えていますが、ここの場合500種類。あれもよさそう、これもよさそう、とみんなでわいわいやってるのを見て、羨ましさを感じました。日本では、僕が生きてる間にはこのようにビールの楽しみ方が日常に溶けこんだ光景は見られないだろうな……。
 他にもいろんな場面でさまざまなビールを飲みましたが、誌面の関係上、今回はこの辺りで終わらせてもらいます。ベルギービールに興味をもってもらえましたか?ビールが嫌い、と言ってるそこのあなた、一度飲んでみませんか?

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