プロジェクト報告◆電磁波プロジェクト④ 超低周波リスクの報道と私たちの最近の活動

投稿者: | 2002年4月18日

プロジェクト報告◆電磁波プロジェクト④
超低周波リスクの報道と私たちの最近の活動
プロジェクトメンバー 西野全哉
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「電磁波問題が新聞の1面トップに載った!」土曜講座の夏合宿の2日目に当たる8月24日のことだった。その日の朝日新聞の朝刊に「超低周波の電磁波、小児白血病発症率に影響全国疫学調査」という記事が載ったのだ。所用のため合宿を2日目で切り上げて帰宅した僕はとても興奮して記事を読んだ。記事が載ることは知っていたが、まさか、1面トップとは……。「他に事件は無かったの?」が最初に感じた正直な感想だった。(10月10日の時点でこの記事は朝日新聞のサイト( http://www.asahi.com )に残っています。ご覧になっていない方は記事検索を利用してみてください。)
しかし、よく考えてみればこの記事は重要なのだ。日本で始めて行われた電磁波関連の本格的な疫学調査であるし、高圧線や家電製品から漏洩する電磁波の影響で小児白血病のリスクが高くなっているというのだから。電磁波PJが現在研究している携帯電話なら自分の選択によって使わないことも可能だ。でも、もし自分の家の上に高圧線があったら……。毎日使っている家電製品が危険だったら……。そう簡単に自分の選択で変えられることじゃない。これは大変だ!
1面に載ったのだから、大学院の友達も知っているだろうと思っていたら、それは甘かった。「なにそれ?そんなの載ってた?」と言うのが大半で(工学系の学生は新聞を読まないのか……)、良くても「あ~。載ってたね~。で、あれってどうなの?」という程度でちょっと拍子抜け。しかし、僕の周りにはそんな反応しか無いときに、ガウスネットの懸樋さんや上田さんは大変だった。個人からの相談や雑誌などからの取材への対応に追われていたそうだ。やはり、気にする人は気にするみたいだ。
いろいろなところで反響があるにも関わらず、新聞報道のもとになっている研究の論文はまだ発表されていない。11月くらいに出てくるだろうと言われている。今は、電磁波について「危険だ」と言っている人も「安全だ」と言っている人も論文が出てくるのを待ち構えているところだ。電磁波PJとしても論文が出てきたときに正確に理解し結果を使えるように文献の読み込みを勉強会で行っていこうとしている。
新聞報道についての話が長くなってしまったが、今のところ電磁波PJが主に取り組んでいるのは消費科学研究所から助成を受けている携帯電話に関する研究である。この研究では、携帯による電磁波の人体影響に関する最新の研究や各国の取り組みを整理・分析しながら、日本の現状において「何をすべきか」ということを政策提案するのが目的だ。
しかし「日本の現状」ってのがなかなか分からない。例えば、携帯タワーが建設されている場所について言えば、メーカーなどによって情報を握られていて一般の私たちは知ることができない。資料集めも大変だ。論文などを検索できるウェッブサイトでいろいろと調べてみたが、欲しい情報は簡単には見つけられない。どうやら、一般人がインターネットで検索できるところには欲しい情報は無さそうだった。そこで、9月7日には上田さんと2人で東工大の図書館に行ってきた。土曜日とは言え、来館者の少なさに驚く。通っている知り合いによると、今は図書館に行かずにパソコンで検索し、その場でPDFファイルをプリントアウトしているとのこと。そんなハイテクが当たり前なのに、僕たちは関係ありそうな雑誌・技報の目次を一つずつ見ていった。昔の研究者がやっていたであろう超ローテクな方法である。初めてなのでそれなりに面白かったが、もう一回やれというのは勘弁して欲しい。
いろいろと困難はあるが、来年の5月末に向けて少しずつ研究を進めて行きたいと考えている。その中では、携帯電話タワーの電磁波を何らかの方法で測らなければいけないし、疫学調査というほどの高等なものでないにしても健康被害についてのアンケートを行いたいと考えている。これからやらなければいけないことは意外に多い。次回の勉強会は10月12日だが、もしかすると今月の下旬には合宿を行うなんて話しもある。
それから、携帯電話の研究と同時並行でその他の物の計測も行っている。これを個人的には「身近な電磁波計測シリーズ」なんて思っていたりする。図書館の盗難防止装置については新聞でも報道されたし『どよう便り』に報告書を同封したので読んでくださった方も多いかと思う。つい最近のことになるが、10月5日には上田さんが僕の家に来て無線LANの計測を行った。その日はJR東日本の新しい定期券システム「Suica」と我が家の電話機の子機、電子レンジ、そして僕自身の携帯電話についても測定を行った。無線LANや電話機については驚くほどの結果は出なかったが、電子レンジについては「母親を驚かせてしまったかな」と思うような結果だった。それでも、電磁波は少し離れればかなり減衰するので現状を知ってもらった上で対応してもらえればと思っている。
今後の電磁波PJでは「身近な電磁波」についてはIH調理器の電磁波を計測したいと考えている。また、11月23・24日には昨年度も参加した「サイエンス夢工房」(東京理科大学神楽坂校舎)が控えている。助成研究も報告書についても方向を定めていく時期にきていると思う。個人的には大学院での研究で忙しくなりそうだが、電磁波PJのメンバーの皆さんと楽しみながら研究をやっていければと思っている。
(電磁はPJの報告からは外れますが……)9月から友人が半年間の予定でイタリアへ留学した。イタリアは世界的にも電磁波については厳しい基準を持っている。早速、イタリアの電磁波について状況を聞いてみた。現地で携帯電話を買ったそうだが、説明書には「SAR値はICNIRPの基準に適合しています」という表示しかなかったとのこと。ウェッブで検索してみると、SAR値は調べることができた。日本より若干低いようだった。また、周りの学生の意識はそれほど高く無いようで、彼らの様子を見ていると「イタリア人は何でもあり」という印象を受けるらしい。国の基準が厳しいイタリアなら普通の人が「なんでもあり」でも大丈夫かもしれないけど、日本ではそうはいかない。素人集団の電磁波PJがやるべきことはまだまだ多そうだ。■

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