「子どもと携帯電話電磁波曝露」に 新たな取り組みを

投稿者: | 2013年6月10日

「子どもと携帯電話電磁波曝露」に新たな取り組みを
上田昌文(市民研代表)
6 月30 日(日)に代々木上原で世田谷区在住のお母さんたち20 名ほどに集まっていただき「子どもと携帯電話」をテーマに語り合うワークショップを実施する(「市民研×issho-ippo 共催/<おしゃべりLiving サイエンス>「こどものケータイ、どうしてる?」/同封チラシ参照)。クリスマス会でお世話になった稲垣シェフ(MOMOE)のケータリングによる昼食会も一緒という、市民研のサイエンスカフェとしては初めての試みだ。以下に掲げる原稿(日本臨床環境医学会(6 月8 日)での発表の予稿に一部加筆)で示したとおり、「子どもに携帯電話をどう使わせるか」は子供の将来に深刻な影響をもたらす問題なので、このワークショップを皮切りに、地域や学校で大いに論じ皆で状況を変えていく流れを作っていきたいと思っている。
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子どもと携帯電話電磁波曝露:健康影響研究の進展と規制政策の現状
上田昌文(特定非営利活動法人市民科学研究室)
携帯電話電磁波の曝露によって何らかの健康影響を生じるだろうことを示した論文や報告書の多くは1990年代以降に出たものであるが、その数は主だったものだけですでに200編を超えている。しかし、これまでに得られた疫学データでは曝露と疾病の間の因果関係が十分に明確であるとはいえず、一方、分子・細胞あるいは動物個体レベルで観察された生物的異変がヒトでの発症にどうつながるかについても不明の点が多いことから、これまでのところ、防護指針を与える上で最も権威ある機関とされる国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインも、携帯電話が市場に現れた当初の規制体系(熱作用に基づくSAR(比吸収率)値規制)が維持されたままであり、携帯電話の開発や販売に規制を設けた国はほとんどない。
この事態への転換を迫るのが、2011年に国際がん研究機関(IARC)が下した、無線周波数の高周波を発がん性の可能性ありとする評価(2B評価)であり、これは、Interphone研究をはじめとする脳腫瘍リスクを調べたいくつかの疫学研究において、高頻度・長時間・長期間使用になればなるほど脳腫瘍の発症リスクが上昇するらしいことが示唆された点を重視しての判定である。世界でも最大規模の脳腫瘍データを有する米国中央脳腫瘍登録(CBTRUS)と英国国家統計局(ONS)によれば、1999年以降10年間で側頭部と前頭部の脳腫瘍が1.5倍に増加している。
この主たる原因が携帯電磁波曝露である可能性を否定できないとするなら、成人の大多数が携帯端末を使用し(現在世界人口の75%が端末を所有している)、高曝露者も多数生まれているだろう状況は、深刻で大規模な公衆衛生上の問題を引き起こす恐れがある。
科学研究の多くは脳腫瘍に関するものであるが、それ以外にも、脳血液関門の損傷、酸化ストレスの増加、生殖や行動・成長への悪影響(精子の損傷や妊婦の使用による胎児への曝露が関連していると考えられる)など、様々なリスクが指摘されている。
とりわけ重大なのが子どもへの影響である。化学物質や放射線においても明らかにされてきた、子どもに特徴的な感受性・脆弱性が、高周波曝露に関しても成立することが種々の研究で示されている。脳腫瘍発症の平均的な潜伏期間が30年と長いことなども関係して、子どもを対象にした疫学は少数かつ限定的だが、2011年に公表されたCEFALO研究や現在進行中のMobi-Kids研究などには注目すべき調査法が含まれている。
感受性・脆弱性に相乗してリスクを大きくするのが、若年期より使用することに伴う社会心理的な条件である。「携帯依存症」の常態化、教育効果を高める「アプリ」を使っての学校現場でのスマートフォンの導入・普及、セキュリティを謳った連絡・監視システムの普及、そして遊び道具としての幼児期からの日用品化、携帯電話を含み込んでの環境中での無線利用の一方的拡大等々、高周波曝露の低減化とは逆行する諸条件がひしめいている。
かかる状況において、フランスをはじめとする欧州のいくつかの国、米国のいくつかの州、カナダなどが、子どもの携帯電話使用に関して独自の規制や勧告を打ち出すに至っている。これらの事例が問うているのは、一般市民への圧倒的な利便性と事業者である企業への莫大な利益をもたらしている携帯電話という日常化した技術に対して、将来の子どもの健康を守るという予防的観点から、自制的な動きをどう啓発し、法的なレベルを含めてどう規制をかけることができるか、という公共的課題である。■

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