体験型ワークショップ「東京直下型地震あなたはどう備えるか?」に参加して

投稿者: | 2008年4月6日

写図表あり
csij-journal 015 jishin.pdf
体験型ワークショップ「東京直下型地震あなたはどう備えるか?」に参加して
久保田裕
 私は今回上記のワークショップに参加して、朝は防災館で防災体験ツアー(煙、地震、消火)に参加して、午後からは池袋から水道橋まで歩行訓練で危険箇所のチェックを行い、夜は救助訓練のワークショップ(トリアージ、救出、運搬)と内容の濃い貴重な体験ができました。
 ただこのワークショップを体験して自分に対する課題が出てきました。
 
 それはこのワークショップの直前に発生したイジース艦あたごの漁船との衝突事故で連絡網がうまく繋がらず事故の報告が防衛大臣や総理大臣にすぐに行かず救出対応が遅れた件で海上自衛隊が世間から非難されていましたが、ここで疑問なのは海上自衛隊は衝突事故が発生した場合の防衛大臣や総理大臣に連絡する訓練をまったくやっていなかったのでしょうか。普通であれば訓練はしているはずです。それなのになぜ本当に事故が発生した時に機能しなかったのでしょうか。
 
 また自分に置き換えると、職場で年1回避難訓練を行い10階以上の階段を下りる訓練をしていますが、もし実際職場で火災が発生した場合に無事に避難ができるのだろうか。
つまり私は上記の2つの事項に共通することを発見しました。それはこれらの訓練をしている時に「実際に起きる」ことを意識してやっているかということに気づきました。
もし自分がそういう心構えで避難訓練をしていれば建物の構造的な問題で避難が俊敏にすることが出来なければ会社に改善要求をしなければなりませんが、避難しなければならない場面を想像することができないので(これは日本人にある言霊の思想かもしれませんが)そこまでしようとする発想がありません。
 
 特に今回の夜の救助訓練ではトリアージにしても実際複数のけが人を発見したときに適切な優先順位を決められるか、瓦礫からの救出でも井桁がすばやく組めるかなど現状では実際の救出の戦力になるには私も定期的な訓練を受けなければなりません。
私は今回のワークショップを通して、今後は防災訓練を受ける際は実際に発生した場合、自分が俊敏に行動がとれるかを確かめながら行っていきたいと思います。
ワークショップにて(1)
備えなければ、憂い有り
石塚 隆記(所属:環境コンサルティング会社)
 少し前まで、わたしは台所で寝ていた。寝室のすぐ近くで夜間工事が始まり、騒音が気になったからだ。
 台所で布団に寝転がって左手を見ると、流し台があった。台の上には洗い終わった包丁が、乾かしカゴの中に置かれていた。
次に、寝ながら右側に頭を向けると、高さ約150センチ、幅と奥行きが約60センチの大きな冷蔵庫が立っていた。もちろん、冷蔵庫と天井との間にはツッパリ棒などない。冷蔵庫の隣にはラックがあり、ラックの高さ100センチの段には電子レンジが、高さ140センチの段にはオーブントースターが置いてあった。
もし、深夜に震度6強の地震が起きていたら、わが家の台所はどうなっていたであろうか。少し想像力を働かせれば、すぐに分かる。おそらく、左手からは包丁が落ちてきただろう。右手からは、冷蔵庫が倒れてきて、さらに電子レンジとオーブントースターがそれぞれ落下してきたであろう。
台所に寝ていたわたしはどうなったか。運がよければ重傷で済んだだろうが、多分、落下物に潰されて死んでいただろう。
なぜ、わたしはこんなに危険な台所で寝ていたのか。それは、「この台所は危険である」ということを想像できていなかったからだ。
でも、今は違う。少なくとも以前に比べれば、「大地震が起きたらどうなるだろうか」という疑問を考えるようになった。
きっかけは、市民科学研究室主催の「大地震。あなたはどう備えるか」のワークショップへの参加だった。ワークショップは、朝10時から夜10時まで続く長時間にわたるものだった。大地震への対策について一日中考え続けたのは、この日が初めてだった。
ワークショップで特に印象に残ったのは、池袋防災館で見たビデオだった。ビデオは、家庭で地震対策をすることの重要性を訴える内容のものだった。
ビデオでは、寝室の家具に対してツッパリ棒などの地震対策をしているケースと、対策をしていないケースを比較していた。対策をしていないケースで地震が起こると、寝ている人形の顔面にテレビが直撃し、胴体はたんすの下敷きになっていた。一方で、対策をしているケースでは、寝ている人形は家具の下敷きになるのを免れていた。ビデオを見ている最中、台所で冷蔵庫の下敷きになっている自分を想像し、ぞっとした
だから、今、わたしは台所で寝ていない。廊下で寝ている。変わったのは寝る場所だけではない。生活の中で、「もし大地震が起きたらわたしはどうするか」、この問いを、以前より、はっきり意識するようになった。本当に、備えなければ、憂い有りだと思う。
備える:防災体験/上 震度6強、消火器、煙に困惑
毎日新聞 2008年3月5日 東京朝刊
 大地震に襲われた時、自分で身を守ることができるのか--。NPO法人「市民科学研究室」(上田昌文代表)が先月末、東京都内で開催した体験型ワークショップ「東京直下型地震 あなたはどう備えるか?」に記者も同行した。3回にわたって紹介する。
 参加者は、研究者や自営業者、会社員など10人。午前10時に池袋防災館(豊島区西池袋2)に集合し、まずは同館の「防災体験ツアー」を経験した。
 ツアーには地震、消火、煙などのコーナーがあり、インストラクターが案内する。1日3回行われ、所要時間は約2時間。団体は事前申し込みが必要だが、個人は随時参加できる。
 地震コーナーでは、記者も震度6強を体験した。テーブルの下に潜り込むことができたが、不意打ちだったら同様に対応できたか自信はない。インスト ラクターは「大地震に遭うなら自分の家でと言えるよう、簡単でもいいので、家具の転倒防止措置をして自宅内を安全な場所にしておいて」と備えを促した。
 消火コーナーでは、参加者の多くが初めての消火を体験した。消火、避難、通報など火事発見から数十秒間の行動が生死を分ける。目の前で炎を見つけ たら消火できるよう、消火器や消火栓の使い方を知っておくことが必要だ。しかし、炎が天井に届くまでに拡大したら、消火をあきらめて避難すべきだという。
 階下からの煙や焦げたにおいで火事に気づく場合もある。煙は縦方向に毎秒3~5メートル、横方向に同0・5~1メートルの速さで進む。横方向は人 が歩く速さとほぼ同じだ。煙コーナーでは、通路が迷路のようになった部屋に煙が充満した状況を体験した。方向感覚を失うため、誘導灯に従うことや、日ごろ から二つ以上の避難経路を考えておくことが重要。防火戸を閉めながら避難することが火事の拡大予防に効果的という。
 防災館は「物を取るためなど現場に戻って命を落とした例がたくさんある。逃げ遅れた人がいると気づいた場合も、自分で助けようとせず、消防士に速やかに伝えてほしい」と話している。【関東晋慈】
備える:防災体験/中 地震発生、意識し街を観察
毎日新聞 2008年3月12日 東京朝刊
 池袋防災館を出た後、東京都豊島区が無料配布している防災地図を手に、文京区民センターまでの約5キロを歩いた。地図には避難所や消火栓などの防 災設備、備品の格納庫まで詳しく載っている。「地震が起こったら」と意識しながら街を観察することが狙いだ。被災時に危険になりそうな場所を参加者同士で 議論しながら歩いた。
 池袋駅を地下道で抜けると、高層ビルに面した歩道と交差点に出た。「看板や電柱、柱上の変圧器などは地震の際に倒壊したり落下したりする恐れがあ りそうだ」と参加者は写真を撮った。高架の道路の脇を通ると、阪神大震災をきっかけに始まった耐震補強工事の跡に気付いたが、参加者の一人が「橋げたが落 下しないようにするワイヤがある所とない所がある」と指摘した。
 豊島区民センター(東池袋1)向かいの中池袋公園は、地図上に黄色いマークで地域防災資機材格納庫と記されている。食品や救急用品などが備蓄さ れ、同様の格納庫が区内130町会ごとにあるという。区内37カ所にある都の救援センターや消火栓などもあり、自宅付近の情報は知っておくべきだと感じ た。
 中池袋公園からは参加者が2グループに分かれ、別々のルートを歩いた。埼玉県内に住む久保田裕さん(37)は、電柱や郵便ポストで狭くなった歩道 に気づいた。「車いす体験をした際、傾斜があって使いづらい歩道が気になっていた。避難場所に向かう多くの人が殺到してパニックを起こしかねない」と話し た。
 その後、2グループが再び合流し、避難所になる教育の森公園(文京区大塚3)と窪町小学校(同)を見学した。窪町小はプールに水を一年中入れてあり、非常時には防火水槽の役割を果たすという。
 そのまま文京区民センターまで歩いた。横浜市栄区の徳江淳さん(61)は1月に定年退職するまで会社の防災担当を長く務めていたというが、「今回 の行事のような地道な市民活動もあることを知った。これを参考に、自宅周辺でも同じような活動に取り組みたい」と話した。【関東晋慈】
備える:防災体験/下 重傷者の救出、処置を訓練
毎日新聞 2008年3月19日 東京朝刊
 体験型ワークショップ「東京直下型地震 あなたはどう備えるか?」の最後は文京区民センターで、がれきに埋もれた重傷者を捜して救出し、トリアージ(治療の優先順位の判断)や応急手当てをする訓練が行われた。命を救うためにどんなことが必要なのかを学ぶのが目的だ。
 CERT(Community Emergency Response Team=地域緊急対応チーム)救出訓練と呼ばれる米国で生まれた訓練。 大規模災害で消防や医療機関が手いっぱいになった時、地域や企業が行う救助活動などを支援できる市民を育成することが目的だ。03年に最終報告を出した総 務省消防庁の「地域の安全・安心に関する懇話会」も、CERTを自主防災組織リーダー訓練制度に応用することを検討すべきだと提言した。
 訓練を指導したのは、米連邦緊急事態管理局(FEMA)で訓練を受けた4人のトレーナー。その一人の矢作征三さん(63)は「危険に対する注意力を高め、非常時にこそ役に立つ人の命を守る方法を学んでほしい」と話した。
 訓練は暗い会議室で実施した。負傷者を演じる人と人形を使い、がれきに埋もれている人を懐中電灯で捜索。さらに、井げたを組んで、てこの原理でがれきを動かし、多くの人を救出して応急処置を施した。
 ワークショップを主催したNPO・市民科学研究室の上田昌文代表は「模擬体験と分かっていても、暗い中でうめき声などを聞くと焦り、何をすべきか 分からなくなってしまうと気づいた。この情けなさは体験してみないとわからない」と話す。そのうえで「力の合わせ方を知らないと、1人を救出することも難 しい。訓練を繰り返し受けないと、的確な対応はできないと確信できたことは大きな収穫だった」と振り返った。
 参加者からは「(このワークショップで歩いた)街という現場と、がれきのイメージが重なり、訓練に対する抵抗感がなかった」との感想が聞かれた。矢作さんは「街を歩いて気づいた危険に負傷者を結びつけ、切迫感があるイメージを持つことが大切だ」と指摘した。【関東晋慈】

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