「リビングサイエンス」をトコトン語りあう会を開催 学生ファシリテータとともに共有のための討論の場づくりに挑戦

投稿者: | 2008年7月4日

写図表あり
csij-journal 018 hayashi.pdf
「リビングサイエンス」をトコトン語りあう会を開催
学生ファシリテータとともに共有のための討論の場づくりに挑戦
林衛(富山大学人間発達科学部)
 2008年6月13日金曜日、上田昌文NPO法人市民科学研究室代表を講師に迎え、午後4時半開始、90分2コマ通しの長丁場をあてて、「生活者が育む!『リビングサイエンス』をトコトン語りあう会」を開催した。学内からの学生、教員、生協職員と、関心をもつ学外からのお客様(一般市民、県庁職員、市会議員、高専教員ら)30名以上が、「硫化水素自殺問題」「遺伝子組み換え作物」「バイオ燃料」「電磁波健康影響」「理科教育」の五つをテーマに、市民が語り合い、取り組むべき活動の枠組みの共有をめざし、討論を試みた。2006年4月に林が富山大学に着任したときに誕生した科学技術社会コミュニケーション研究室を主催団体として手がけてきた、科学技術コミュニケーション実践セミナー第4回にあたる。
●富山の学生たちとの新たな挑戦
 科学技術社会コミュニケーション研究室(現在の別称=科コミゼミ)を名乗ってはいたものの、着任2年目の2007年度になって学生2名とのゼミが始まる前までは構成員は教員1名だけ。ゼミ2年目(着任3年目)の2008年に新加入の3年生3人、M1が1名(4名が新加入)、進級した4年生が1名(彼だけがゼミ2年目)、教員とあわせて合計6名が集まって最初の科学コミュニケーション対外イベントを運営する機会を得た。
科学技術コミュニケーション実践セミナーのテーマ・講師
テーマ 講師 日時
第1回:
『素人脱出写真術―デジタルカメラの選び方・使い方』 藤吉隆雄
カメラマン、カメラグランプリ2005選考委員、NPOサイコム主催サイエンス・ライティング講座講師 2006年6月2日(金)
午後6時~8時
第2回:
『災害時市民メディアの使い方・つくり方』 中橋徹也
NPO法人東京いのちのポータルサイト監事 2006年7月12日(水)
午後6時~8時半
第3回:
『新春特別講演:エコロジーは人間を救えるか―幸せを運ぶコウノトリ放鳥2年目の報告を中心に』 池田 啓
兵庫県立コウノトリの郷公園研究部長・兵庫県立大学教授
2007年1月13日(土)
午後2時半~4時半
第4回:
『生活者が育む! 「リビングサイエンス」をトコトン語りあう会』 上田昌文
NPO法人市民科学研究室代表 2008年6月13日(金)
午後4時半~7時半
第3回と第4回は、富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センターとの共同主催。第4回は、アースデイとやま2008のプレセミナーとして、アースデイとやま2008実行委員会の協力を得た。開始および終了時間は計画時のもので、延長したこともある。
『生活者が育む! 「リビングサイエンス」をトコトン語りあう会』
事前準備・開催スケジュール
 5月15日:木曜5限科コミゼミで林から実践セミナーの趣旨説明
 5月22日~6月5日:木曜5限科コミゼミ3回分を使って関連文献の検討
 6月10日早朝:学生ファシリテータからのお願いを上田講師にメール発送
 6月10日夕方:上田講師から早速返事が届く・メールでゼミ回覧
 6月12日:木曜5限科コミゼミで討論の進め方の直前検討「みんなの力で成功大作戦」(3時間超)
 6月13日:実践セミナー本番
  16時半開始:主催者あいさつ/趣旨説明+講師紹介
  第1テーマ:硫化水素自殺問題(以下各テーマ持ち時間30分)
  第2テーマ:遺伝子組換え食品
  第3テーマ:バイオ燃料はエコか?
   (休 憩)
  第4テーマ:電磁波健康影響
  第5テーマ:理科教育は科学リテラシーを育んでいるか
  まとめ討論/閉会あいさつ
(6月14日:3年生によるサイエンスセミナーでの実験ブースを上田講師が見学)
(6月15日:アースデイとやま2008シンポジウムで上田講師がメインゲスト)
 6月18日:上田講師から「セミナー感想」届く
 6月19日:5限科コミゼミで振り返りの会
      本原稿執筆開始
 科コミゼミの2008年前期定例のゼミは、毎週木曜日5限。メンバーは、中学・高校の理科教員免許取得済の教育学研究科大学院生(理学部物理学科出身)と、同免許取得をめざしている学部3、4年生ではあるが、それ以外に科学コミュニケーションに特化した講義をすでに受けているわけではない。関連する林の講義科目では、中学・高校の理科教員免許取得のための理科教育法I(中等)を共通して履修しているくらいだ。にもかかわらず、なぜこのゼミを選んだのだろう。少し不思議に思って、それぞれの学生に聞いた話を総合すると、理科教育を追究できる可能性を視野に残しつつも、理科の専門分野(いわゆる物化生地)に絞り込むことなく、認識論や表現論、ジャーナリズムなど広く研究できそうだといった理由で科コミゼミにたどり着いたということらしい(ちなみに、教員免許取得がゼミ所属の要件ではない。学生5人のうち教員を第一志望とするのは3名――小学校2名、中学校理科1名である)。
 要するに、細かなことはよくわからないが面白そうだし、選択肢は広そうだと、好奇心の働きによって集まってきたわけだ(と解釈できる!)。具体的で大きな期待を抱いてはいない状況にあるメンバーが、特別研究完成に向けて、それぞれが知的好奇心をますます躍らせ、高いモチベーションをもって取り組める科学コミュニケーション研究実践のテーマを探り当て、研究を遂行するよう支援を徹底するのが、ゼミメンバーに対する林の使命であり、ゼミでの第一の役割なのだろう(と任じる!)。
 対外イベントを開催するのであれば、その第一歩として「違和感を味方にする」すべを身につける実践の機会にしたいと考えた。「おかしい」「よくわからない」「自分の考えと違う」…。と覚えた違和感を、心のなかから排除して、さっさと忘れてしまうのではなく、一つ一つ原因にさかのぼって違和感を分析していくことで、科学の問題や科学と社会にかかわる問題についてのアプローチもみえてくる。そうすることで、「事態に直面したときに考え抜く」力、簡単に「わかったつもり」に陥らないよう心がけて、自分の問題として取り組んでいく力がムクムクと立ち上がり発揮できるようになる。そこまでくれば、違和感を味方にできたいえるだろう。
 学校ででてくる教科・科目の多岐にわたる内容のなかには、学校で取り扱う以上の深みやおもしろさや、それに関係する疑問がつぎつぎにみつかるものがある。とくに具体物を対象とする理科には、違和感を出発点に、こだわって調べたり、確かめたいと思える内容が豊富だといえよう。ところが、高校・大学への入試対策のために、こだわりを捨て「合格得点」を優先する習慣をなかば強制される経験を重ねてきてしまった結果、試験問題に対応できるよう与えられた正解を覚えていく式の受動的な理科とのつきあい方を身につけてしまった学生・大人は少なくない。これもいわゆる理科離れ現象の一側面だととらえられる。だからこそ、違和感への感受性を磨き直す意義があるとも考えられるのだ。
 参加者にとっても、講師にとっても、そして運営にかかわるゼミメンバーにとっても、達成感が感じられる科学コミュニケーションイベントとして、今回は、5人の学生ファシリテータがそれぞれテーマを決めて30分間の討論を組織するトコトン語り合う会がふさわしいと考えた。メディアで「わかりやすく」取り上げられている五つの社会問題を掘り下げることで、違和感を繰り返し味あえる機会となるし、五つの具体的なテーマが結びついてリビングサイエンスとは何であるのか、その方法論や中身のイメージが参加者の認識のなかに浮かび上がってきて、リビングサイエンスの意義や枠組みが共有されていく機会も実現できるだろう。 
●学生ファシリテータの役割
 準備が必要な歯ごたえのある挑戦をして何らかの結果をだすこと、達成感を得つつも失敗して悔し思いを(人生の)つぎの挑戦につなげられるような舞台が用意されていること。そしてそれが、富山を初めとする地域での広い意味での科学コミュニケーション実践やその担い手とつながりあって、運営者にとっても、参加者にとっても、近未来を耕す機会となる「双方向コミュニケーション」の要件を備えていること。そのうえで、富山での科学コミュニケーション研究実践を豊かにするきっかけがうまれればよいと考えて、定例科コミゼミで学生ファシリテータとしてセミナー運営をしてみないかと持ちかけた。アースデイとやま2008実行委員会と連動して、金曜日のこのプレセミナー講師(コメンテーター)を日曜日のアースデイとやま2008のメインゲストとあわせて上田さんにお願いできる条件が整いつつあった。
 学生たちは、興味を示し、提案は受け入れられた。
 ファシリテータの役割は、専門家任せにしておいては解決できない問題群に市民が立ち向かうために必要な基礎知識や問題の枠組みを共有できるようにして、討論を組織することにある。学生ファシリテータたちは、『市民科学』各号や市民科学研究室のサイトにある情報をもとに、それぞれが自由にテーマを決めた。議論の出発点となりそうな文献の内容をゼミで紹介、問題点や基礎知識を確認する作業を試みた。
 そして、講師宛に以下の内容のメモにして、林がとりまとめ6月10日に上田さん宛にメールで送った。
 0)自己紹介
 1)各自のテーマ・切り口
 2)それに関して読んだ文献、調べた内容(URLや本や雑誌の情報)
 3)事前に準備をお願いしたいことや質問
 4)どんな議論にしたいのか(学生ファシリテーターとしての思い)
 上田さんからは、さっそく下の返事が届いた。
 http://scicom.edu.u-toyama.ac.jp/ReplyFromUeda
 セミナー前日のゼミでは、届いた追加情報も参照しながら、3時間かけて、五つのテーマそれぞれの進め方を検討した。共有すべき情報は何か、共有する方法は(プリント配布、PowerPointによる画面への提示、読み上げ、…)、討論の出発点、つかみをどうするか、30分後に想定される最低限のゴールは? ここで、想定される最低点のゴールとは、実際にはそれ以上に話がはずむ場合もありうるが、ファシリテータの責任としてここまで進めたいという目標のことである。また、会場からの質問や意見、それをふまえた討論を想定するねらいもこめて、ファシリテータ以外のゼミ生が発する補助質問も各自一つ以上考えておいた(万一、話がはずまなかったとき、ゼミ生同士が場をつなぐ場合も想定した)。
 以下、セミナー終了後に、「自分が選んだテーマに関して、『何をどう議論していくことが大切なのか』(あるいは、こうしたセミナーから自分は何を学んだか)という点を中心にしてそれぞれの考えを文章にまとめる」という課題を上田さんからもらい、ゼミメンバーが執筆した原稿をお届けすることを通し、今回の試みを報告し、評価することとしたい。
[5人の学生さんによる原稿は個別にダウンロードできるように掲げています。(編集部)]
●解題:コミュニケーションを通した問題の発見と共有、課題深化のアプローチ
◆解題1:「わかりやすい」社会問題への理解深化は図れたか
 マスメディアは広く一般大衆に向けて情報を発信する。とくに戦時中の思想統制のなか新聞社の統廃合によって、日本の新聞は大部数で安定した経営を獲得している点で特徴的である(ここに日本特有のメガ新聞文化の存在が指摘できる)。数百万部から1000万部という大規模な全国紙(いわゆる朝毎読など)、ブロック紙に加え、県紙とよばれる各県で高い寡占率を誇る有力紙が広い読者層に獲得し影響力をもっている。タイトル数は少なく(多様な新聞言論が競い合う形にはなっていない)、一つ一つが幅広い読者層に読まれる巨大新聞になっているのが日本の特徴だ。そのため、中学生でも読めるような「わかりやすさ」が紙面作りの前提とされる。
 その結果、ステレオタイプな「わかりやすい」報道によって、読者は「わかったつもり」にさせられてしまう状況が発生しやすい。日本に限らずマスメディア全般に生じる問題ではあるが、視聴率争いをするテレビ報道だけでなく、テレビニュースの素材ともなる新聞報道がメガ新聞文化のなかにあるため、テレビも新聞も、大切だがむずかしいテーマや論点を「わかりやすさ」の陰にかくしてしまう傾向が強いのが日本の特徴だ。結局、読者も視聴者も、もっと大切なことに気づかないまま表面的な理解にとどまってしまいがちになる。自分は専門ではないのでわからないとの苦手意識をもちやすい科学のかかわる問題では、その傾向も顕著だ。
 読者や視聴者は、わかりやすいセンセーショナルな報道に対して理解を示す。その一方で、自分自身がかかわる問題としてとらえるための具体的な情報や論点に気づかないままになってしまいがちだ(例のあとの( )内が読者や視聴者の反応の例)。
例:硫化水素自殺急増(たいへんだ…)
 GMOは「危ない」(→危なくないなら問題ない)
 バイオ燃料(エコでいいんじゃない? CO2減らせるのなら)
 携帯で脳腫瘍(といわれても、便利で毎日使っているから…)
 今回、学生ファシリテータ自身が取り組んだ5テーマのうち理科教育をのぞく4テーマは、自らの専門ではない領域の問題である。メディアなどの情報を通じて、問題の存在は知ってはいたものの、詳しく掘り下げる経験のない専門外のテーマに挑むことになった。事前調査→討論準備(上田さんとのやりとりとゼミでの議論)→討論実行→振り返りと原稿執筆という過程を経て、上に掲載したレポートを書き上げるにいたった。
 レポートの記述にみられるように、文献を読む、コメンテータ、参加者とのやりとりをするなかで、確かに認識を深め、自分自身のかかわりをみつけだしていることがわかる。科コミゼミ、最初の対外イベントとして、一定の成果があったと判断される。参加者によるアンケートも、「生活の中にある科学は気にしなければ、ただ通りすぎてしまうけれど、今回のように議論することで気が付くこと、さらに深く考えなければいけないことがあるとわかった」(学部3年生)、「将来的に考えて絶対に大切な問題ばかりだと思った」「各種の話題を興味深く聞くことができた。久しぶりに大学生に戻った気分でした」といったセミナーのねらいを評価する回答が得られている(ファシリテーションの技術向上や30分という時間の短さを指摘する回答もある)。
 いっぽう、五つのテーマについて認識を深めるだけならば、表面的な情報提供に終わりがちな報道情報に止まることなく、よりくわしい雑誌論考や書籍、テレビの特集番組、新聞の連載記事などを読めば事足りたかもしれない。あえて多数者を巻き込み、大がかりなイベントを通して、「わかりやすい」社会問題への理解深化を図った意義は、今後の科コミゼミの科学コミュニケーション実践活動によって評価されることになるだろう。その点かいえば、アースデイとやま2008プレセミナーとして開催できたので、県内のリビングサイエンス的な活動をしている環境教育実践者とのつながりができたことは大きな意味をもちうる。
◆解題2:情報共有を図った上で討論を組織するファシリテータの役割
 今回のセミナーが、今回のような5テーマ、3時間というトコトン語りあうスタイルで開催できたのは、何より多様なテーマに取り組む市民科学研究室から上田昌文代表を講師(コメンテータ)にお願いできたからである。学生だけでは、テーマを広げることできても、議論に深みと確実性をもたらすことはできなかったであろう。市民科学研究室の実践に基づく具体的な材料と、それを明快に語れるコメンテータの存在がセミナーの根本を支えていた。では、ファシリテータの存在意義はどこにあったのか。
 特別研究にオリジナリティを生み出すためにゼミで鍛える科学コミュニケーションの能力として、以下の四つの柱を示している。
 ・調査(取材)力
 ・分析(思索)力
 ・表現(テキスト、データ、図表、写真、映像、…)力
 ・コミュニケーション(場を拓く、メディアをつくる)力
 ファシリテータには、この四つすべてが求められる。簡単な司会進行以上に、調査や分析、その結果を表現する力が必要になるし、自分で講演するのとちがい、コメンテーターの力を借りられるという利点があるものの、その分、確かなコミュニケーション力が大事になる。とくに大切だと思われるのは、討論のために、しかも討論が一部の詳しい人同士のものだとほかの参加者から受け取られてしまわないように、問題設定や基本的な情報を共有したスタート地点を構築できるかどうかであろう。そのときに、「わかりやすい」はずの社会問題が、じつはもっと深い問題なのかもしれないという違和感をもたせ、スタート地点に誘う切り口が役に立つだろう。解題を書いているこの時点で振り返ると、例えば以下のような切り口が思いつく。このあたりの事前準備のノウハウ構築は、科学コミュニケーションの能力としてほかの場面でも生かせるはずであり、反省点として今後につなげていきたい。
 硫化水素自殺急増(たいへんだ…)→「硫化水素発生中」というのは何らかのメッセージか?
 GMOは「危ない」(→危なくないなら問題ない)→エルマコバの驚かされるデータは信頼できなかった。では、問題点はどこに?
 バイオ燃料(エコでいいんじゃない? CO2減らせるのなら)→CO2がそれほど減らない? どうして、何が問題なの?
 携帯で脳腫瘍(といわれても、便利で毎日使っているから…)→各国で規制がされている! その根拠はどこに?
 理科教育では自主性が大事(という理想論は、受験社会で役立たない)→私立学校ほど子ども料理科学教室に興味を示している! 公立は変わらなくてよいの?
 いずれにしろ、ファシリテータのレポートからは、これら四つの能力を実践レベルで求められ四苦八苦した状況が読み取れる。同様のセミナーを開催する際の参考にしていただけたら幸いである。
 アンケートには、運営が「スムーズ」「ファシリテータの学生さんたちが皆、一生懸命で好感をもちました」「学生さんだけでなく、一般の参加の方もいらっしゃったので色々な視点が入って、なるほどと思う点も多くありました」との好意的な意見が並んだ。いっぽう、「(ファシリテータに限らず)大学生が少々おとなしい気がした」「がんばりは分かるが、もう少し方向性を持たせてしまうほうがよいと思う」「ゴールがみえないので、発言しづらいかな?」「学生のファシリテーションの活発な意見交換が聞けると楽しみにしてきたが、少し元気がなく残念かな。ファシリテータの勉強も頑張ってほしいです(とやまにファシリテーションのサロンありますよ)」といった今後に期待する声も寄せられた。
◆解題3:30分1テーマと決めることで複数テーマを可能にした理由
 各テーマは、議論が盛り上がっても盛り上がらなくとも30分で切ると決めておいた。そうした理由の一つは、多数のテーマを取りあげることで、リビングサイエンスの広がりとそこにみられる共通点を体感してほしいことにある。また、ファシリテーションがうまくいかず、議論が盛り上がらないままであっても、30分で終了できるのは、運営上便利でもあると考えた。解題1にあげた表面的な理解をより深化させ、リビングサイエンスのテーマとして市民が取り組むべき課題や枠組みが存在していることを、取りあげた事例から共通点として示すことはできたと考えている。
 この30分で終わる運営に関してアンケートの回答には、「スムーズだった」「よかった」という意見だけでなく、「短かった」「テーマによってはもっと深めたかった」という趣旨の意見がいくつかみられた。「テーマは興味深いものでしたが、時間配分をもう少し長く設定し、(必要があれば、トピックの数を減らしても)もう少し深く、例えばグループディスカッションの時間を作ってもよいかもしれません」との具体的な提案もいただけた。この提案に関連する事例を今回のセミナーからひとつあげよう。4番目のテーマである「電磁波の健康影響」では、30分の持ち時間の半分以上を参加者全員から一言、電磁波イメージについて語ってもらうのに費やした。ここまでに時間を掛けたため、終盤は上田さんから説明を聞くだけで精一杯で、参加者とコメンテーターとのやりとりの時間は限られてしまった。しかし、全員が発言していく場面がはじめて生まれ会場の雰囲気が一変したこと、上田さんがたくさんの電磁波イメージを聞ける貴重な機会となったと語っていることや、市民科学研究室にたくさんのデータがあることなどを考え合わせると、30分で終わらせるのがとても惜しいという印象も残っている。
 いっぽう、解題3で述べた出発点づくりを成功させれば、30分というテレビでいえば特集番組1本分にあたる時間は(編集されつくした番組ほどではないにしろ)濃密に活用できることも確認しておきたい。■

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